学年一のイケメンに脅されて付き合うことになりました！

第22話

最終兵器

とにかく距離を保つ

「雫、昼ごは『ごめん！先生に呼ばれてるんだった！』あ、おい！」

最近、彼と顔を合わせるたびに胸がドキドキしてしまう。

だから、避けるしかなかった。

避けて避けて避けまくって試合の前日になってしまった。

さすがに、明日頑張ってねって言った方がいいよね

「今日という今日は逃がさねぇぞ」

あ、ちょうどいいところに

私は心の中で覚悟を決めた。

「私も話がある！」

「…何だよ」

「明日試合頑張ってね」

「ありがと、」

「じゃあ、そういう事で！」

早速と逃げようとしたのに、

「ちょっと待てって」

そう言って腕を掴まれてしまった。

心臓が一瞬止まったように感じた。

海斗の手の温もりが伝わってきて、顔が赤くなるのを感じた。

「…何、」

「お前、なんで最近避けてんだよ」

私は視線を逸らし、どう答えればいいのか分からなかった。

胸の中で渦巻く感情を抑えようと必死だった。

「えぇ？なんの事だかさっぱり…」

彼の目を見ないようにしながら、言葉を絞り出した。

だけど、海斗の視線が私を捕え、逃げ出したい気持ちが強くなった。

「今も逃げたくてうずうずしてるじゃねぇか」

その言葉に、一瞬動きを止めた。

海斗の前に立つといつも逃げたくなる。

心臓が早鐘のように打ち、冷や汗が背中を伝う。

「気のせいじゃ…？」

弱々しく答えたが、彼の視線は鋭いままだった。彼の目が真剣で、ますます動揺した。

「いや、なんかおかしいぞお前…」

どうしてこんなに彼の前で緊張するのだろう。

翔くんでさえ、こんなに緊張しなかったのに、

なんなら逃げるどころか付きまといたかった。

「えぇ？そう？いつも通りですけど？」

私無理に笑顔を作り、彼の視線から逃れようとした。

だけど、海斗の目は相変わらず鋭く、私の心の中を見透かしているようだった。

「まぁいいや。お前に言わないといけないことがあって…」

彼が何かを言おうとした瞬間、私はとっさにここから逃げる方法を思いついた。

「あ！」

そう言って指さすと、海斗も一瞬だけ私から視線を逸らした。

その隙をついて走り出した。

海斗の驚いた顔が一瞬見えたが、すぐに背を向けて全力で走った。

心臓がバクバクと音を立て、足がもつれそうになるのを必死でこらえながら、ただひたすらに逃げた。

「待てよ！」

彼の声が背後から聞こえたが、振り返る余裕なんてなかった。

校舎の角を曲がり、階段を駆け下り、そのまま正門まで走った。

風が吹き抜け、髪が乱れる。

「ふぅ…」

一息ついたところで、ようやく落ち着きを取り戻した。

明日の試合、海斗はきっと頑張るだろう。

そう信じて、心の中でエールを送った。