第11話

「どのお店も美味しそうなメニューばっかだなぁ」


洋食も和食も…あ、中華でもいいな

どうしよう。選べない。


「気が変わる前に早く選べ」


そんな急かされても…

どうしよう、あ、


「ええっと…じゃあ、ここにする!」


選んだのはパスタ屋さん。


「パスタ好きなの」

「週に一回ぐらいは食べるかな」


「すげぇな」

「へへ、」


クリームかタラコか…クリーム…いややっぱりタラコ…でも…


「タラコパスタにするからクリームにしたら」

「え…?」

「迷ってるんだろ」


口に出してないのに、


「どうして…」


「分かりやすいんだよ」

「え、そうかな…。じゃあお願いしてもいい?」


なんで、今日はこんなに優しいんだ?


「すみません」

「はい。お伺いします」


「タラコパスタ1つとクリームパスタ1つ。飲み物は何にする」

「あ、じゃあオレンジジュースで」

「オレンジジュースとコーラでお願いします」


「かしこまりました」

こんなに気が利くなんて


「…なんだよ」

不思議すぎて、凝視しちゃった。


「ごめんごめん。つい」


「…変なやつ」


失礼な奴。


変?私の一体どこが…まぁ、隠れてコソコソ絵を描いてるような奴は確かに変なやつか、


「お待たせ致しました」

「ありがとうございます」


営業スマイルなんかしちゃって。私にもその態度で接してくれればどれだけありがたいか。


「…んっ、おいひぃ」

「…プハッ」


「ちょっと、なんで笑うのよ!」

「詰め込みすぎだろ。リスかよ」


確かに頬張りすぎたけど、笑うことないじゃん


「人の顔見て笑うなんて」

「悪かったって…」


そう言って私の口元を指先で触れ


「…っ、」

「付いてた」


そして、拭き取ったソースをそのまま口に。

漫画かよ。


「ん、確かに美味いな…」


ある意味、私のこと何とも思ってないからできることなんだろうけど…ん?


ちょっとガッカリしてる?わけないか。



「パフェまでご馳走になっちゃって、ごめんね」


ちゃっかり食後のデザートまで頂いちゃった。


「あんな食べたそうな顔されたら断れねぇだろ」

「ご馳走様でした」


「…はい」

謎の紙袋を渡された。


「え?」

「今日のお詫び」


お詫び…?お礼ってこと?


「え、それはさっきご飯奢ってくれたから…」

「そうじゃなくて…はぁ。それとこれとは別。とにかく、はい」


なんか、今日は優しい。

優しいというか、私に貢いでくれてる。


「は、破産しない…?大丈夫?」


「何訳分からねぇ事言ってんの」

「ご、ごめん。びっくりして」


こんな優しい海斗、一度も見た事ない。


「いいから受け取れって、じゃあな」

「う、うん」


毎日こんなに優しかったら…




いやいや、何考えてんだ。

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