第8話

「海斗…と、あれ?女の子?」


呼び捨て…?

保健室の先生と親しいのかな。


確かに、授業サボって保健室いそうな感じするもんな。


「雫が怪我したから連れて来た」


「女の子に怪我なんかさせて、もしかして殴っ『女に手なんて出すわけないだろ』冗談よ」


冗談まで言い合うぐらい仲良しみたい。


「はい、できたよ」

「ありがとうございます」


殴られたのは初めてだから、ちょっとヒリヒリする。


「暫く痛いと思うから、よく冷やすこと」


「はい」


「…傷は」


「残らないよ。心配しなくて大丈夫」


「別に、心配はしてない。俺のせいで顔に傷できたら一生文句言われると思っただけ」


「はぁ?」


なんだよそれ。

こっちはこんな痛い思いしてるって言うのに、こいつはほんと可愛げってもんがない。


「素直じゃないんだから。雫ちゃん、海斗と付き合ってるんだよね」

「どうしてそれを…」


「みんな知ってるよ。この学校は情報が広まるのが一瞬だからね」


さすが、人気者はすごい。


「そうなんですね、」


「それに、今の二人見てたらすぐに付き合ってるって分かったよ」


今のどこに付き合ってる要素が?


「そうですか?」


「うん。すごくお似合いだね」

「お似合い…?」


私と、…こいつが?

それは、最悪の悪口ですよ。


「でも、雫ちゃんも大変だね。海斗ってちょっと自分勝手でしょ?」


「まぁ、」

否定はしない。

いや、むしろちょっとどころじゃない。


「否定しろよ」


するわけないでしょ


「こら、女の子にそんな言い方しない!」


「チッ」


「舌打ちしない!はぁ、海斗はいつになっても子供のままなんだから」


「…子供扱いすんな」


話してるのを聞く限り、相当仲良いんだ。

でも、ただの生徒と先生って関係でもなさそうだし、どういう関係なんだろう…


「大好きな大好きな颯馬が取られるのが嫌で機嫌悪いんだね」


颯馬…?誰だろう。初めて聞く名前だ。


「別に。俺は兄貴が幸せならそれでいい」


こいつのお兄ちゃん?


「お兄ちゃん思いの良い弟じゃない」


「うるさい。別にそんなんじゃないから。手当終わったんだから、さっさと行くぞ」


「あ、ちょっと待ってよ!」

またすぐ勝手にどっか行こうとするんだから。


「またね雫ちゃん」


また…があるんだろうな。きっと。

なんかそんな感じする。


「失礼します、」


先生と海斗の関係ってなんだろう。

あと颯馬さんも何者なんだ?

先生と何か関わりがあるように思えたけど、


海斗に聞いてもきっと教えてくれないだろうし。

気にはなるけど、私に必要のないことなら知る必要もない。

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