第7話


反射的に目を瞑ったけど、これ絶対痛いやつだ。


そんな高くから振り上げたら痛いに決まってるじゃん。加減とかできないのかな。


…あれ、終わった?案外痛くないもんなんだな。

2回目だから、感覚麻痺してるのか?


目を開けると、そこには海斗の姿が。


「何してんの」


海斗が先輩の腕を掴んでいた。


「海斗…」


ナイスタイミング!

まぁ、一発当たったんですけどね。


…とか呑気なこと言ってる場合じゃないかも。


海斗のオーラが…


「これはっ、」


「まさか、俺の彼女だって分かっててこんな事してる?」


「…」

「聞いてんの?」


形勢逆転…


「聞いてる…けど、こ、この女が悪いのよ。彼氏がいるのに翔と仲良くして、狙ってるようにしか見えないんだから。あ、あんたも彼女取られないように見張ってなさいよ」


開き直った…というか、言い訳が無茶苦茶…


「じゃあ何?翔が弟の彼女取るような奴だと思ってる訳?」


「…へ、弟…?」


嘘だろ…?

ま、まさか、兄弟だって知らなかったなんて言わないよね。


大体の人はみんな知ってるって言ってたけど…


いや、その程度の仲なのによく人の顔にビンタなんてできたな。


「何、知らなかったの?」


「…」

図星か、


「なんだ、あんた大して翔と仲良くないんじゃん」


もしかして、私…殴られ損だったりするのかな?


「お、お願いこの事は『翔には言うなって?はっ…バカにするのもいい加減にしろよ』…っ、」


翔君に言わなくたって、きっとあなたに彼女の役割は果たせない。


「まだいるつもり?お前の顔なんて見たくないんだけど?次、雫に手出したら許さないからな」


「…っ、」

怖気付いたのか、そのまま行ってしまった。


「助けてくれてありがとう」


「お前な…言い返したりなんかしたら怒るって分からな…は?お前その顔どうした」


え、なに。急にディスらないでよ。見ない間にさらにブサイクになったって?


人がせっかく感謝してるっていうのに…


「元々こんな顔だけど」


「いや、そうじゃなくて、赤くなってる」

「え、嘘…痛っ。さっきの人に叩かれたからかな…」


「…」


「ちょっ、どこ行くの」

無言で立ち去ろうとしないで。


「一発なぐ『私なら大丈夫だから!』いや、でも」


殴ったりなんかしたらあんたの評判落ちるわ。

それに、あんな奴、殴る価値もない。


「ほんとに大丈夫だから」


「…行くぞ」


「え、どこに?」


「保健室に決まってるだろ。お前も一応女なんだし…顔に傷が残ったりしたら大変だろ」


そんなあんたは一応女と付き合ってるんだね。


「これぐらいで大袈裟だよ」

「いいから」


「このぐらい大丈夫のに…」



どうしてそこまでして、私を保健室に連れて行きたがったのか、後に分かることとなる。

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