第5話
「…」
なんか、さっきからこの人すっごい機嫌悪くない?
私が言う事聞かないからか?
周りに怪しまれないように、お昼は毎日一緒に食べてるんだけど、さっきのせいでかずっと機嫌悪い。
「あっ、ちょっと。最後に食べようと思って残してたのに、」
私の大好物の卵焼きを勝手に食べるなんて
「知ってる。好きな物は最後に取っとくってタイプの顔だし」
どういう顔だよ。
とういうか、知ってて食べただと…?
悪魔だ…
「じゃあなんで、」
「食べたかったから」
そんなのが理由になるわけないだろ!
それだけじゃない。今日一日、嫌がらせをそれはそれは数え切れないほどされましたよ。
その上
「先に帰っていいから」
そう言って部活に行っちゃうし。
いつもなら怪しまれないようにっていやでも絶対一緒に帰らされて、毎日あんたが部活終わるまで待たされてると言うのに。
勝手すぎる。
そんなことを言っても仕方ない。
一人でとぼとぼ帰っていると、
「あ、雫ちゃーん!」
私の大好きな声が…
「翔先輩」
一日に二度もお会い出来るなんて。
はっ、まさかこれは運命…運命ですか!?
「あれ、一人?海斗は?」
「あー、なんか、いいみたいです」
先に帰らされて良かった…こうして先輩と二人で帰れてる。
「どういうこと?彼女を一人で帰らせるなんて…」
「ちょっと機嫌悪くて、」
「まさか俺のせい?さっき俺が雫ちゃんの事大切にしなさいって怒ったから!?もう大切にしてるのに、一々うるさいって事か?」
そんな事は絶対に思っていないはずなので安心してください。
「私もよく分かりません、」
「それともまさか、俺が雫ちゃんと楽しそうに話してたの見て嫉妬したのかな」
「それはありえないと思いますよ」
あの人、私の事好きじゃないし。
「だよね。海斗に限ってそれは無いよね。嫉妬なんてするキャラじゃないし。雫ちゃんはさ、海斗のどこが好きなの?表では王子様演じてるけど、特定の人にはなんと言うか…鬼じゃない?」
「確かに」
鬼というか悪魔…
「そんな海斗が雫ちゃんの事を好きになった理由も気になるけど、雫ちゃんが海斗を好きな理由も気になるな〜」
そんな事言われても困りますよ、好きじゃないのに。
「えっと…」
「ごめんごめん。急に聞かれても困るよね。じゃあ、次までに考えておいて?」
「え、」
次までっていつですか…
何時間、いや、何年考えても思いつかない自信あるんですけど。
「じゃ、俺用事があるから先に行くね!またね雫ちゃん!」
「ちょっ、翔先輩…!」
「それから、俺の事は翔先輩じゃなくて翔君って呼んで!気をつけて帰るんだよー!」
なんて自由人なんだ…
そんなところも素敵。
あいつが我儘なのはムカつくけど、こうやって翔先輩…じゃなくて、翔君と仲良くなれたのは不本意だけど海斗のお陰だし。
こうして君呼びまでさせてもらってるし。
多少のわがままなのは我慢してやるか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます