第1話

私と海斗が出会ったのは、今から1か月前のこと



私は、昼休み屋上で絵を描くのが日課だった。


いつもは一人なんだけど、あの日は珍しく他の人もいた。


それが海斗だった。


私が先にいたにも関わらず、何故か隠れてしまった。今から告白するんだろうなって直ぐに分かったから。


「私、海斗くんのことずっと前から好きだったの。返事は分かってるから、これだけでも受け取ってくれない…?」


そう言って渡していたのは、手紙だった。

あれがいわゆるラブレターってやつか。


「君の気持ちには答えられないけど、これは受け取っとくね」

「うん、ありがとう」


やっぱりイケメンはイケメンだな。


告白を断ったのはタイプじゃないから?

それとも他に好きな人がいるから?


他に好きな人…。誰だろう。


別にどうでもいいけど。


学校の王子様的存在だから、そんな人がどんな人を好きになるのか興味はある。


相当美人なんだろうな。


女の子はどこかすっきりした顔で帰っていった。


失恋ってどんな感じなんだろう。

告白したことないから分からないや。


告白も終わった事だし、これでゆっくり絵が描ける。


そう思ったのに…


「こんにちは」


どうしてまだいるの。

というか、どうして話しかけてくるの。


「こ、こんにちは」

「名前は?」


言いたくないけど、ここで言わなかったら嫌な奴だって思われるかも。


こんな人に目をつけられていいことなんて一つもない。


「…雫です」

「雫ちゃんか…。雫ちゃんはさっき俺が告白されたところ見てたんだよね?」


「えっと…」

確かに見てたけど、元々、私が先に来てたんだし、とやかく言われる筋合いは無い


「はい、見てました」


「なら話は早いや。俺さ、毎日告白されて困ってるんだよね〜」


だったら何?


「あ、そうなんですね、」


自慢話か?

告白された数をステータスにしてる系イケメンか?


「だからさ、協力してくれない?」


協力…?


「…何をですか」


さっきから何を言いたいのかさっぱり…



「俺の彼女になってよ」


「…は?」

何言ってるのこの人…


私の聞き間違いだよね。うんうん。


「あれ?聞こえなかった?付き合おうって言ってるの」

「付き合う…?」


私と、このイケメンが?何で?


私たち初対面でしょ?

話したこともないし、目を合わせたことすらないのに、付き合う?


イケメンは変な人が多いって聞いたことあるけど、ほんとだったんだ…


「じゃなきゃみんなに言っちゃうよ?屋上で」


別に、一人で絵を描いてること言われるぐらいどうってことない。


「翔のことずっと見てるって」

「なっ、ち、違います」


どうして、何でバレた。


「じゃあこれは何?」

そう言って見せつけてきたのは、私のスケッチブックだった。


「っ、いつの間に、」


「わっ、翔のこと絵に描いてるんだ〜。このページはサッカーしてるとこ、次のページは友達と楽しそうに話してるところ」


一枚めくってはいちいち解説してくる


「返してっ、」

「これだけたくさん描けるってことはさ、それだけ翔のこと見てるってことだよね」


「それは…」

「こんなの知ったらどうなるかな?引かれちゃうかもね」


「駄目!見せないで、お願い」




「だったら、俺の彼女になってくれるよね?」

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