第67話 予想通りオーガはダメでした

ギルドの庭を借りて、バーベキューといこう。


僕たちは「ゲテモノ食い」の称号を持っているので、たぶん大概のものは食べられるはず。

ヴェラちゃんは難しいかな?

うちのジャガイモ、トウモロコシを出して焼いておこう。


さっそく、あのオーガの太ももを取り出す。

剣で斬ろうとするが、皮膚に刃が通らない。

身体強化のかかっていな状態でもかなり防御力がある。

オーガの皮は何かに使えそうだ。

武器強化をして作業をするめる。

なるべく綺麗に皮を外し、マジックバッグに戻す。

モモ肉を薄めにスライスし、焼く。


「村の人たちって本当に息をするように武器強化しますよね」


マリーさんに感心されるが、普通のことではないだろか。

これにタメが必要だったら実戦で使えない。


肉が程よく焼けたので食べてみる。


…うーん、これは…


「ちょっと匂いが強いかなぁ。魔獣って強くなればなるほど美味しくなると思っていたけど、そうでもないのかなぁ」

「まあ、うま味は強いから、香草を大量に入れれば何とかなりそうだ。猿もそれほどうまくないし、人型はイマイチかもな」


クリフ君とブライアンさんがモグモグやる。

少なくも美味しそうな顔はしていない。


「そうだね。すごく栄養はありそうだから、煮込み料理とかで何とか何とかならないかな」


基本、強い魔獣ほど栄養? 魔力なのだろうか、が強くて健康に良い。

だけど、美味しいものを食べ慣れると、栄養があるけど、味はちょっとって物を食べたくなくなるよね。

贅沢になったものだ。


「おう。強い酒とあいそうなやつだな。少し置いてけや」


マスターは大丈夫そう。

マリーさんたちギルド職員も試してみるが無理みたいだ。

…あんなに嫌がっていたに試すのだから、ギルド職員さんたちも真面目だよね。



「…う、う、お肉…」


ヴェラもしかめっ面で無理に食べている。

村で生活するのにこの肉を食べないといけないと思っていたりしないだろうか。

いつもはもっと美味しいお肉を食べてるからね。


ジャガイモが焼けたのでクリフ君に渡す。

クリフ君はチーズを取り出し、ちょっとあぶってジャガイモに乗せる。

とろけて美味しそうじゃないか。


「はい、ヴェラ。暑いから気を付けて」


彼女は真剣にフーフーして口に入れる。


「あつっ。…おいひい…」


「美味しいよね。じゃがいもバターもいいけど、チーズもいいよね」


クリフ君が優し気に彼女を見守っている。

うん、うん、仲良しだ。

きっと彼女はクリフ君ルートに入ったのだ。


…で、マスターは何ですかねその手?


「俺には?」


「あなたは肉でしょ。野菜を食べるイメージがない」


「んなこたねえだろが!」


「あなたにあげるくらいなら、マリーさんに渡します!」


クリフ君にチーズをもらい、ジャガイモに乗せて、マリーさんへ。

マリーさんは一瞬迷ったが、食欲にはあがらえなかったのだろう、口へ運んだ。


「んー、美味しい。あれ、これってルーカスさんたちの村のジャガイモです?」


「そう。僕の畑のお芋だよ」


「えー、ルーカスさん、本当に農家なんですね…」


マリーさんはじっとジャガイモを見つめてから、ゆっくりと味わって食べる。


「村の野菜って高級品なんですよね。ほんと、美味しい…」


うちの村の野菜って人気だったんだ、知らなかった。

評価されていて少し嬉しい。

よし、これからも頑張って野菜を作ろう。

畑をもう少し増やしたい。

せっかく街に来たのだから、育てていない野菜の種を買って帰ろう。



「おい、お前ら、もっと旨い肉はねえんか? 場所貸してやってるんだから、少し出せや」


ブライアンさんたちと顔を見合わせる。

肉は無くはないが…ちょっともったいない。

ただでマスターに食べさせるのは癪に障る。


「なあ、ギルドマスター。ただで肉をもらえると思ってないだろうな。場所を借りただけだとそれほどの量は出せないぜ」


「おう、先輩にずいぶんな口をきくな、ブライアン」


マスターがブライアさんを小突く。


「イテ、なにすんだよ」


ブライアンさんにダメージを与えられるとは、さすが元Aランク冒険者か。

引退したといえ、たぶん、この街で最強の戦士だろう。

だけど、師匠に比べるとねえ…


「お前らをBランクに昇格させてやる!」


「おお、ほんとか? 一気にBか!」


「オーガの群れを殲滅できる実力があるので、能力的にはAランクだと思いますよ。ですが、ここのマスター権限ではBランクが上限ですよ」


「おい! マリー、言うんじゃねえ!」


「おっさん、情けねえな…」


まあ、うちらは一回の依頼しかこなしてない。

それでBランクなのだから有難いことだ。


が、たぶん、ここのギルドもランクの高い冒険者が欲しいところだろう。

今回のような事態があった場合に依頼できる冒険者が欲しいだろう。

僕たちは村に帰るので、連絡には時間がかかるだろうが…


そうだな…

少しはこの辺りの平和に協力してもよいか…

今回の村の全滅も気分が悪い。


何かしら連絡ができる手段があればいいのだけれど。

しかし、情報技術の発達は神様の文明進化禁止項目に触れる可能性が高いんだよね。

情報の伝達速度の向上は戦争を大きく変える。

その規模も大きくなり、下手をすれば複数の国家が絡んだ世界大戦みたいなことになりかねない。

それは神様の望むところじゃないと思う。


神様のいる世界。

その意思により大まかな世界のあり方が決まっている。

前の世界に生きていた自分からすると少し引っ掛かりがあるが、まあ、これもこれで良いのだろう。

文明が発達くすることが必ずしも人々の幸せにつながらないかもしれない。

便利であることと幸せであることはイコールではない。

どんな世界でも幸せを見つけることができる人がいる。

そういう人になれたらいいんだけどね。


まあ、こういう世界でも良いのかもしれない。

最近そう思ったりもする。



「じゃあ、少しだけですよ」


ギルドマスターに肉を分けてあげよう。


「少しと言わず、じゃんじゃん出せよ!」


まったく、図々しい人だ。


兎肉、猪肉を出す。

味の劣る鼠肉は大量に出しておこう。

ちょっと残り気味だったんだ。


「いいじゃねえか、懐かしいねぇ! お前らもどんどん食え!」


マスターは肉を食べ、酒を飲み、楽しそうだ。

ギルド職員と近場にいた冒険者たちも参加して食べている。

好評だ。


うん、鼠肉も大丈夫そうだ。

みんな美味しそうに食べている。


「村だとあまり喜ばれないんだけどな…」


ブライアンさんがしみじみと鼠肉を見ながら齧る。

彼は狩人だからね。

思うところもあるのだろう。

鼠だって油断をすれば危ない魔獣だ。

命を懸けて狩っている。

だけど、余り気味なんだよね…


「ヴェラ。美味しいよね。お肉」

「美味しいね。クリフ」


二人は仲良しだ。

ヴェラの悲しみが少しでもまぎれるとよい。


しかし、スージーがね…

本当に大丈夫だろうか?

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