第50話 15歳、来訪者は定番のあの種族

『ルーカス! 森に人が入ってきたよ!』


風の精霊、エイリアナが窓から勢いよく入ってきた。


「命の危険はある?」


迷子とかで危険があるなら助けに行く必要があるかもしれない。


『大丈夫そう。だけど、村は初めてみたいだから時間かかるかも。ちょっと手伝って来てもいい?』


「まあ、それはいいけど…」


『じゃ、行ってくる!』


精霊は窓から勢いよく出て行った。


『まったく、騒がしい子ね』


水の精霊メーリーアが僕の肩の上で、迷惑そうにしている。


しかし、また、珍しい。

エイリアナが僕以外の人間に親切なんて…

今回の来客をずいぶん気にしているような。

エイリアナの性格なら、特に問題ないのなら関わらないのではないだろうか?

雪でも降るか…


初めて村に来る人か。

僕は、僕が連れてきたエレノアさん以外では知らない。

村に入れて大丈夫なのだろうか?

まあ、エレノアさんを入れてしまった僕が言うのもなんだけど。


分からなかったので、村長さんに聞いてみることにした。



村長さん宅に来るもの久しぶりだ。

リネットが大きくなると家で遊ぶとかしなくなったからね。

昔はここでおママゴトとかしたものだ。

いや、懐かしい…


「まだ娘はやらんからな!」


村長さん、開口一番これでした。

別にリネットをもらいに来たわけじゃないのに。

早とちりがひどい。

…「まだ」ということは未来の予定はある?

いや、考えないようにしよう…


「何言っているの父さん。私ももう大人よ。父さんの許可がなくてもお嫁に行けるんだから!」


いやいや、リネットも村長さんの勘違いに乗らないでほしい。

ややこしくなる。


僕が村長に話があると言ったら、嬉々として付いてきた。

話をややこしくするためですか?


「そんな、リネット…大人と言ってもまだ14じゃないか。まだ早いだろう」

「そんなこと言っていて行き遅れたらどうするの?」

「ずっと、ここにいればいいじゃないか」

「気持ち悪い! できるわけないじゃない! お兄ちゃんが村長継ぐんでしょ。私がここにいられるわけないじゃない!」

「ジェフリーが村長になるのはずっと先だし…」

「その前にお兄ちゃん結婚するでしょう!」


いやあ…親子喧嘩?が続いている。

一方的に村長がリネットに言われまくっているだけの気もするけど…


そういえば、ジェフリーは恋人ができたらしい。

商店のところの娘さんのケイティさん。

彼女は高身長の細身の美人さん。

活力が満ちてる感じで、ガンガン引っ張っていく感じの人だ。

姉さんとはだいぶ感じの違う人だ。

ジェフリーは昔、姉さんが好きだったんだよね…

結局、好きになった人がタイプの人ってことかもしれない。

遠くなく、結婚するのだろうね。

彼女はいい人だと思う。

人柄もよくて、パワーもある。

ちなみに戦闘力も高くて、身体強化の接近戦タイプで、片手斧を両手装備でぶん回す。

狂戦士系……

この村、狂戦士多いよね…


結婚するとなると、確かにリネットが可哀そうかも。

いつまでも小姑がいるもの家庭の火種になる可能性がある。

小姑の方も気を遣うだろう。


といって、リネットがすぐに結婚っていうのも…

まだの気がする。


リネットも焦っていて、近場の僕で済ませようとしているのかな……


もしかして、僕ちょっとモテている?

いやいや、僕はただの農家で、まだ一人前にもなっていない。

そんな男がモテるか?

いやモテないだろう。

危ない、勘違いするところだった。



村長の誤解を何とか解かないといけない。

話が進まない。


「村長、今日来たのは違う件です! 森に入って、村に向かっている人がいるようです!」


「ん? リネットとの結婚の許可ではないのかい?」


「違います! この村に向かっている人がいるんですが、このまま村に来ても大丈夫かを聞きに来たんです」


「ああ、そういうことか。よかった、よかった」


「クッ、今回はダメか、次回こそは!」


村長はホッとしていて、リネットは悔しがっている。

まあ、とりあえず冷静になってもらったので良しとする。


「この村に来る人があるってことだね。無事にここに着きそうなのかい?」


「はい。問題ないようです」


「なら、大丈夫だよ。この村は基本的に来るもの拒まずだから。相当ダメな人なら村総出で追い出すけれどね」


ダメな人ってどのように判断されるのだろうか?

殺人狂とか暴君的な人とか?

闇落ちした勇者が来たら村人で対処できるのだろうか?


今回はエイリアナが友好的だから大丈夫だと思うけれど……

ちょっと心配だ。



「メーリーア、どう思う?」


『心配? なら、アルベルタに見てきてもらえばいいんじゃない』


闇の精霊ね。

彼女、精神系とか得意で、瞬間移動のようなものを使えて、高スペックなんだよね。

頼りにはなる…


「アルベルタ、お願いできるかな?」

『そうね…見てきてあげるわ』


アルベルタの気配が一瞬して、すぐに消えた。

やっぱり聞いていたか…



「君は独自の情報網があるようだね。エレノアさんのときも君が最初に気づいて助けたしね」


村長はニコニコと優しそうな顔?

だが…どこか怖い…


「…はい。まあ、優秀な友達がいまして…」


「うん。友達か、いいね。ルーカス君のその友達にはとても助けてもらっているから、私も感謝していると伝えてほしい。いつまでも仲良くいい関係でいてくれると嬉しいな」


ふう…

能力についての追及をしてくるのではなくてよかった。

別に精霊と契約を公表してもよいような気もするけれど、この村に他にそのような人がいないのがね。

もしかしたらレア能力かもしれないし…


「それとね。娘とは、『今までのどおり』、仲良くしてくれると嬉しいな!」


…これ以上の関係の進展は許さないぞ、ってことだろうか?


「大丈夫よ、父さん。私とルーカスはこれからもずうっと、ずうっと、一生仲良く連れ添うから!」

「一生連れ添うのはだめ!」


まったく、この二人は…

村長も娘が関わらないといい人で、できる人なんだけれどなあ。

子離れできないと、余計に娘に嫌われるんじゃないだろうか?



まあ、聞きたいことは聞けたので、二人をそのまま残して、帰宅した。

ちょうどアルベルタは帰ってきて、僕の右肩に座る。

たぶん、だいぶ前に調査は終わっていて、タイミングを計っていただけだな。


「おかえり。どうだった」


『ええ。彼女なら大丈夫よ。悪い人じゃないわ』


彼女ね、女性か…


『彼女にとってもこの村に来ることはいいことになるでしょうね。ルーカスにとっても楽しいことになるはずよ』


楽しいことって…

なんか嫌な予感がする。

そして僕が関わることは確定か…


とにかく人柄は問題なさそうで安心した。



2日後、彼女は村に無事に着いた。



それはエルフの女性だった。


身長は僕より高く、180を超えているだろう。

痩身。

長い耳と白い肌。

長い金色の髪と通った鼻筋、切れ長の目、碧い瞳。

文句のつけようがない絶世の美人。


何故か腰に立派な剣…

たぶん剣士…


エルフって弓じゃなかったっけ?

この世界のエルフは剣士もいるってことなのかな?


なるほど、森の種族ね。

精霊に人気の訳だ。



さて、エイリアナに彼女の世話をするように頼まれていたので、挨拶に行こう。

どんな用事でこんな辺鄙な村に来たのだろうか?

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