第45話 15歳、ぼつぼつ、がんばりましょう
月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人也。
奥の細道だっただろうか。
残念ながら、この一文しか覚えていない。
意味は何だったっけ…
月日も年も過ぎ去って同じところに留まらない旅人のようなもので…
私も旅に出たくてしょうがなくなっちゃったよ、的なことだったっけ。
畑を眺めると夏の野菜が元気に育っていた。
それそろ食べごろだ。
毎年同じように季節は巡ってくるけれど、僕たちも、この村も、畑も、まったく同じではない。
みんな違って、一回きりの月日が巡ってくる。
僕ももう15歳になったし、畑も大きくなってきた。
僕も独り立ちということで、村長に開拓の許可をもらって、村の壁の外の土地を畑にしている。
もちろん畑の外に新しい壁を作っているので、真田丸、出城みたいなものか。
最終的には立派な壁を作る予定だが、今は仮の壁を立てている。
結界をちゃんと張っているので、仮設の壁でも大丈夫だと思う。
開墾も途中で僕の畑はまだまだなので、実家の方の畑を手伝って、日々の糧をえている感じ。
まあ、森で狩りをすれば食料はだいたい賄えるので問題ないけれど。
それでも今年はだいぶ畑も大きくなってきて、トマト、キュウリ、ナスが良く育っている。
カボチャも育ててみたけど、いい感じだ。
もちろん土の精霊にも手伝ってもらっているから、それなりの品質のものができている。
だけど精霊はまだ実家の畑にいる。
こちらの畑が本格的にならないとこっちに引っ越してこないらしい。
こっちは土がまだまだということだと思う。
結局実家には戻らずに絵里香さんの家を引き継いだ。
エレノアさん一人だと寂しいだろうし、庭の手入れとか大変そうだったから。
本当は、絵里香さんの思い出に浸りたいのと、自由に魔法書を読めるからだったりする。
結局自分のため、現金なものさ。
エリカさんの部屋はそのままになっていて、未練たらしい感じになっているけど…
いいさ、部屋は足りているんだから。
エレノアさんはだいぶ健康になってきて、ちょっとしっかりしすぎな感じだ。
お母さん感が出てきている。
まだ20歳だろうに…
僕の世話をしているせいだったらごめんなさい。
ちなみにこの世界だと結婚適齢期は16歳から20歳とのこと。
24歳くらいになると「まだ結婚していないの」と言われ、何か本人に問題があるんじゃないかと疑われさえするとのこと。
前の世界では30過ぎで結婚していない人が多かったので、ずいぶん違うものだと思う。
そうだね。
結婚だけが幸せになる条件じゃないと思っている。
けれど、僕は結婚がしたい!
前世ではできなかったから、憧れはある。
ダメだったら離婚すればよいだけ……とはならなそうだよね、この世界だと。
「うちの娘の貴重な時間を」とか「この歳になったら次の嫁ぎ先なんて限られるだろう!」とかなりそうに思う。
ちょっと責任が重い。
エレノアさんはまだ結婚の気配はない。
申し訳ないが、もう少し僕と一緒にいてほしい。
一人ではこの家は寂しすぎるから。
さて、ステータスなのだが、身長が伸びたせいか、だいぶ体力・力が上がった。
こんな感じ。
体力: 2500
力: 1400
素早さ:1500
魔力: 12000
これがどれほどのものかが分からないのが残念だ。
まだ、他の人のステータスを確認することはできない。
そして、他の人にステータスを聞くことはマナー違反らしいので、難しい。
その人が自主的に話してくれれば良いのだけど
ステータスでその人の全てが分かるとは思っていない。
それだけで強さは測れないだろう。
そこに経験・熟練度、体調・精神状態とかいろいろなパラメタが関わってその人の強さがある。
剣の師匠なんて、もう年齢で基礎体力が低そうだけど、まだ勝てそうにない…
魔法ありならいい勝負になるか?
いやあ、まだまだだか…
さらに、ステータスの魔法の熟練度が上がったために判明した情報が一つある。
「称号」というのが見える…
僕の称号が以下。
転生者、未来の可能性、英雄の系譜、ゲテモノ食い、ベテラン農家、精霊との契約者(全属性)、超級魔法使い(全属性)、中堅錬金術師、剣豪、未開の開拓者
これが何を意味しているのか、どの程度の効果があるのか・ないのかは不明…
「転生者」はまあ分かる。
しかし、効果があるのか?
ステータスに何かしらの影響があるのか?
絵里香さんには「召喚者」とかあったのだろうか?
「未来の可能性」というのが神様からもらった、ちょっとした才能だと思う。
普通の人よりは色々できるようになると思いたい。
「英雄の系譜」というのは分からない。
うちの先祖に英雄がいたのかもしれない。
けど、聞いたことはないし、父さんに聞いても知らないとのこと。
農業は「ベテラン」との評価で、努力の成果が出ていて嬉しく思う。
錬金術は中堅でまだまだの実力。
前錬金術マスターの足元にも及ばないだろう。
「未開の開拓者」は開墾でついた称号だと思うけど、効果は何だろう?
これで開拓が楽になっていると良い。
「ゲテモノ食い」って、ゲテモノを食べたことがあっただろうか?
順番からしてかなり早い時期に獲得したと思われるが…
魔獣?
いや、あれは美味しいものだ。
いつか毒キノコでも食べただろうか…
これを見ると結構なチートになりつつある…
しかし、この世界、魔獣が強力なのでここの程度は足りないと思っている。
普通の世界なら最強を目指せるようにも思えるが、この世界はハード・モードだ。
気が抜けない。
去冬には、6メートル級の毛の生えた象、マンモスと呼称する、が現れた。
6メートルと言えば、二階家の大きさと同じくらいか。
動きはそれほど速くなかったため、大量の魔法を撃ちこんで仕留めることはできたが、だいぶ硬かった。
そのお肉は大変美味しかった…
村人全員で味わって、すぐに終わってしまったけど…
また、出てこないだろうか。
そのような未知の大物がまだまだいるようだ。
用心に越したことはない。
今の目標も前からあまり変わっていない。
・食べた人を笑顔にできる美味しい野菜を安定的に作れるようになること
・死ぬまで生き残れる強さを持つこと
・なるべくなら恋人が欲しい…
最後のが付けたされた。
僕ももう15歳だから、そろそろ恋人が欲しいなって…
前の世界では片思い止まりだったからね……
女性には優しくしているつもりだけど、それだけじゃなかなかね…
難しいものだ。
まあ、それはそれとして、絵里香さんに笑われないように頑張っていきますか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます