第40話 12歳、蜂蜜プリン

突然だが、甘いものが食べたい!

せっかく絵里香さんの家にいるのだから、前世の甘味を作ってもよいのではないだろうか?


僕は甘いものが好きだ。


前世では、週末、洋菓子店を開拓したものだった。

ご褒美として、週一つのケーキ。

仕事のストレスが大変なんだから、ケーキの一つも食べたくなるだろう?

イチゴのショートから、チーズケーキはベイクド、レア、スフレ…

チョコレートにガトーショコラ、オペラ…

モンブランはイモのやつに、和栗のやつ…

季節のフルーツのタルト、カボチャのプリン…

ロールケーキ、シュークリームにエクレア…

ああ、懐かしい…


結局、体重が5キロ増加し、頻度は低くなって、その趣味は消滅したけど…

さすがに週一でケーキはカロリーオーバーだったか…



ということでプリンを作るのことにする。

転生物の定番。


作る甘味は、今の村で材料が手に入ることが前提条件。

卵、牛乳、砂糖は量が無く、高価なため蜂蜜で代用する。

蜂蜜でもできるはずだよね…


砂糖。

確かサトウキビ、もしくは甜菜から作れるんだったっけ?

サトウキビは沖縄、甜菜は北海道?

だとすると、甜菜なら村でも作れるかもしれない。

しかし種が無いからね……


蜂蜜。

村の農家の一部が養蜂をしている。

村の中の花の蜜も入っていると思うが、蜂は主に森で蜜を採取しているようだ。

どんな花かは不明。

だが、味、香りはよい。

むしろ前世のより美味しいと思う。



「ぷりん、とはどのような食べ物なんですか」


お手伝いのエレノアさん。


「柔らかくて、甘くて、美味しいのよ」


こちらは絵里香さん。

見てるだけ…

絵里香さんは、料理はできるが、お菓子作りは苦手らしい。

どちらも変わらないと思うのだけれど。

ちょっと繊細な感じがするから苦手、とのこと。

料理は基本が分かっていれば、適当に作っても、それなりになるんだって。

お菓子も同じだと思うけどね。



さて。

プリンはそれほど難しくなかったはず。

確か材料を混ぜ合わせて、湯煎だったか。

卵が入っているんだから、熱を加えれば固まるはず。

プリン液を丁寧に漉すと滑らかな舌触りになる、だったか…


まあ、試しだ。

失敗したら、また試せばよい。

この材料なら、食べられないものを作る方が難しい。


卵と蜂蜜を混ぜる。

ここは丁寧に、しっかりと。

だけで泡立たないように。

牛乳を加え、混ぜる。

ザルで漉して、容器に入れる。

鍋にお湯を作り、プリン液の入った器を並べる。

加熱時間は不明のため、様子を見ながらやってみる。


ちょっと蓋を開けて、プリンをつついてみる。

固まっている。

うん。

まあまあかな…



「これでプリンの出来上がりですか?」

「うーん。あとはカラメルソースが欲しいわね」


ということで、カラメルソースを作ってみる。


確か砂糖を焦がして、水を入れてソースにするんだっけ?


これも砂糖の代わりに蜂蜜を使ってみる。


「なんかプクプクしてきました」

「フライパンだと黒いから、焦げたかどうか分かりにくいわね」

「うーん…こんなところでしょうか?」


水を入れるとジューと音がする。

手早く混ぜる。

…多分、出来上がり。


プリンにかけて完了だ。

初めてにしては良くできた方だと思う!



実食!


スプーンを入れる…カラメルがちょっと硬いか…

飴のようになっている。

それを割って、プリンの本体へ。

プルリという感触。

少し硬めの昔ながらのプリンという感じ。

口に入れると、カラメルは苦みが足りないか…

プリンはまあまあ。

カラメルが甘い分、全体としてもう少し甘み抑え目の方がよかったかもね。


「うんうん! 懐かしい」

「甘くておいしいです! これがプリンですか!」

「うわ、美味しー。何これ!」


絵里香さん。

エレノアさん。

リネット?


「…どうしてリネットがいるの?」


「いらっしゃい。リネットちゃんて村長さんとこの娘さんだったわよね」

「お邪魔しています、エリカさん」


リネットがスカートの裾をつまんでちょこんと挨拶する。

まあ、11歳の少女なので可愛いのだけれど、大人であれをしたら、あざといとか言われそうである。


「初めまして。私、エレノアと申します。エリカさんにお世話になっております」

「リネットです。よろしくお願いします」


リネットとエレノアさんが見つめ合っている。

…仲良くなっている、という認識で良いんだよね?


「ちょくちょく『ルーカス君』に会いに来ると思います」


少し「ちょくちょく」が強調されている気がする…

まさか、僕目当て…


「こんなに美味しいものを作っているなんて、私をのけ者にしたら許しませんわ」


なるほど…

美味しいもの、甘いものが食べたいだけか。

ちょっと僕に関心があるのかと勘違いしていました。

危ない、危ない。

自惚れ屋になってしまうところだった…

気を付けないといけないな。

転生者が無条件でモテるなんてことはないよね。

女性に優しく!

これが基本。



さて、プリンの他に作れそうな甘味と言えば…

アイスクリーム、スイートポテト、ドーナツ。

生クリームは…いけるか?

それならケーキが作れる?


あんこは、豆を甘くすれば?

小豆が無いけれど、枝豆があるからそれで…「ずんだ」か。



やっぱり村から出ないととレパートリーはそれほど増えなそうだ。


外の世界ね……

イベントが発生するよね。


うーん…もう少し様子見かな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る