第30話 12歳、錬金術、剣の強化

今回手に入った素材は、熊、鹿、猪、兎、鼠、それとそれぞれの魔石だ。

ゲームだと、例えば、鹿だと角が素材なのだけど、まあ、骨とか皮も普通に使えそう。

うん、まあまあの素材量がある。



で、錬金術の話になる。


以前から考えていたことなのだけど、金属と魔獣の素材を錬金術で合成できないか?

ゲームなんかでは錬金術と言えば、素材の合成!

より強力な素材を作り出し、その素材から強力な武器・防具を作成する。


前世の知識では金属に爪とか混ぜたって強化できそうにない。

だが、なにせここは異世界、魔法もある不思議世界。

たぶん合成できるのではなかろうか。



「…という訳なんだけど」


地下の錬金術研究室。

ホムンクルスのセントウレア、闇の精霊のアルベルタに聞いてみる。

ちなみにアルベルタは錬金術系に詳しい。

というか、大体のことに詳しい…

普通に考えるとかなり怖い精霊だ…


「ええ。できますよ」


レアがあっさりと肯定する。


「錬金術の基本技術の一つになります。前マスターはその方向の研究はそれほどされませんでした。しかし、この研究所でも簡単な合成でしたらできるかと思います」


そうだったか…

ここの前のマスターは生命の創造、ホムンクルスの研究がメインだった。

そのため、僕もこっち方面の資料は探ったことがなかったけど、合成が錬金術の基本ということなら、ある程度のことはできるはずか…

もうちょっと早く聞けばよかった…



さて、気を取り直して。

レアとアルベルタに聞きながら合成を試してみる。


どの素材でどの程度のものになるか分からない。

失敗するともったいないので、量がある素材を使うことにする。

まずは小さなナイフに鼠の歯を合成してみる。

合成には合成用の魔法陣と魔石も必要となる。

魔石は一番小さい鼠のものを使用する。


安定して効果を発揮するため、魔法陣は固定で書かれたものを使用する。

専用の台に魔法の粉、これは魔石と宝石を砕き混ぜたもの、で魔法陣は書かれている。

魔法陣はとても繊細なものだ。

今の僕の技術では再現は無理だな。


古いので、多少ほころびがある。

その修復程度なら僕でもできる。


魔法陣を修復し、ナイフ・歯・魔石を置く。

両手をかざし、魔力を通す。

このときに素材が分解され溶けあうようなイメージが必要らしい。

一つになり、一つのナイフになるイメージをする。


二つの素材は光を発し、ゆっくりと一つになっていく。

そして一本のナイフが出来上がった。


…成功か?

手に持ってみる。

普通…

変化が分からない。

魔力を通してみる。

薄く紫に光る。


これは武器にエンチャントした時と同じ現象だ。

僕の魔力が影響している?


うーん、たぶん合成前のナイフとは違う。

けど、結果が良く分からない…


「成功ね。初めてにしては良い方でしょう」


アルベルタはナイフにそっと手を添える。

彼女にはこの結果が分かっているようだ。


「どういう結果なんだろう? 僕には分からないんだけど…」


「そうね…まずは『鑑定』の魔法を習得することね」


「あるの『鑑定』?」


まさか『鑑定魔法』が存在していたとは!

これは嬉しい発見だ。


しかし、『鑑定』なんて便利な魔法が広まっていないのが不思議だ。

もしかしたら、神様が文明の急速な発展を望んでいないってヤツに引っかかっているかもしれない。


鑑定ができたら、商業、工業とか急激な発展に寄与するんじゃないかなって思う。

物の価値の判断、作業結果の確認、等々すごく楽になるだろう。



…この鑑定魔法を習得するのに2日かかった…

とりあえず便利魔法は闇魔法系列ということらしい。

それも習得者が少ない原因らしい。


では、早速、普通のナイフと数日前に作ったナイフを鑑定して比較してみよう。


まずは普通のナイフ。


 概要:ナイフ

 素材:鉄

 強度:50

 攻撃:10


ざっくりとした感じだ。

名前とかもないんだ…

まあ、名前なんて地域、人の違いによって変わってくるかもしれない。

攻撃っていうのもざっくりしている。

たとえば、槌のようなものと、剣では使い方、効果が違う。

叩き潰すのと斬るのと。

斬るだと切り傷になって出血多量で死んだりね。

単純に比較はできないだろう。

普遍的な評価はできないか…

ざっくりな鑑定魔法ということか。


ゲームみたいに万能的なものじゃないけど、これでもすごく便利だと思う。


次に、鼠の歯を入れたナイフを鑑定する。


 概要:ナイフ

 素材:鉄・鼠の歯

 強度:150

 攻撃:30


おお!

何か思っていたよりもずっと強化されている。

通常の3倍…か。


これで錬金術の合成というのが破格の性能を持っていることが判明した。



数日の間、合成の練習をする。

安めの物に、安めの素材を合成していく。

たまに失敗もあるが、安定して成功するくらいになった。


レアによると高度な素材を合成する場合は難易度が上がるらしい。


次は難易度を上げて、「鋼鉄の剣」と「トカゲの牙」を合成する。

トカゲの「剣」を使用しようとも思ったけれど、「剣」より「牙」の方が素材としての量が多い。

剣は牙を削り加工し、剣の形にしたものだから。


牙を粉にし、剣の上に乗せる。

トカゲの魔石を魔法陣の上に置く。

魔力を使い、合成を開始…

ナイフを合成した時よりも、魔力の量が必要だった。

が、僕の魔力量からすると微々たるもの。

全く問題ない。


二つは溶け合い、再度剣の形を作る。

前の剣よりも刀身が薄く、長くなったか。

ちょっと格好良くなった…?



通常の剣、トカゲの牙の剣、合成した剣を鑑定してみる。


合成前の剣が以下。


 概要:片手剣

 素材:鋼鉄

 強度:70

 攻撃:20


通常のトカゲの牙の剣が以下。


 概要:片手剣

 素材:トカゲの牙

 強度:120

 攻撃:50


剣とトカゲの牙を合成した剣が以下。


 概要:片手剣

 素材:鋼鉄・トカゲの牙

 強度:250

 攻撃:100



おお!

普通の剣の4、5倍、牙の剣の倍くらいの性能になっている…

これは大成功と言っていいんじゃないだろうか。


錬金術の恐るべし、だ!

こんなものが簡単に作れるなら、世界は全く変わってしまうのではないだろうか。

これが作れるのならいくらでもお金が稼げそうだ。

錬金術師って、人気職業になるのでは?

だけど、村では錬金術を聞いたことがない。

錬金術師は、なるのが難しいレア職業なのかな?


それならさらに稼ぎはいいか…

僕も街に出れば錬金術で一攫千金…

いや、やめよう。

お金があることと幸せになることはイコールではない。

お金はあったほうがいいとは思うが、今の暮らしを捨てて、街に出ることはない。

今はお金に困っていないし、この村ならたぶん老後も困らないと思う。



作成した剣に魔力を通してみる

やはり紫色に輝く…

鼠の歯を使ったナイフよりも輝きが強い。

紫が僕の魔力の色なのだろうか?

紫は若干怪しい感じの色だけど、確か冠位十二階では最上位?

それと神秘的とかの感じもある。

だとすると一般的に、魔力自体の色は紫なのだろうか?

他の錬金術がエンチャントしても紫の可能性はある。


確認のしようがないので、今は気にしない。


それより気になるのは普通のトカゲの牙の剣より、魔法を付与できるかどうかだ。

エンチャントの許容量が増えている可能性がある。


これは実験してみないと!

だけど、いきなりこの剣を使って実験して失敗したら、剣がもったいない。


これも鼠歯のナイフで試してみよう。


姉にプレゼントした剣よりも強力な剣が創れるかもしれない。

色々属性を付与した剣とか、特殊な効果がある剣とか。

ちょっと面白くなってきた!


姉が帰郷するまでに一本剣を作っておきたい。

なるべく一番いい剣を使ってほしいから。

その方が生存率が上がる。

姉には元気に冒険して欲しい。


ついでに、父さんの鍬と鎌を強化してみよう。

父さんに、強力な武器が必要なイメージはあまり無いのだけれど。

まあ、練習ついでだ。



参考までに。

魔法付与のトカゲの牙の剣だ。


 概要:片手剣

 素材:トカゲの牙

 強度:180

 攻撃:80

 付与効果:強度+、攻撃+


付与効果が高いと+が増えるのだろうか?

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