第12話 【ウィリアム(ルーカス父)視点】…酒と話

【ウィリアム・ブラウン(ルーカスの父)視点】


おお、遅かったじゃないか。

こっちはもう始めいるけど、いいよね!

君のおごりってことでいいんだよね!


なに、ちょっと何杯かワインを飲んだだけだって。

そんなに心配するなよ。

僕は心配ないさ、だって君の奢りなんだから!


なに?

酔いすぎ?

そんなことはない。

酒を飲んで、楽しくなるのは普通だって!

ちゃんと話せるさ!


この村じゃ酒なんて高価でなかなか飲めないからね。

大いに飲ませてもらうさ。

だけど、妻に酒を禁止されているから、内緒だよ。



ああ、そうだね。

うん。

まずは家族のことを話そうか。

そこから話すのが良いだろうと思うよ。

だって、僕にはそれくらいしかないからね!


関係ない?

いや、あるね、ガッツリあるね!

だから聞いてくれよ。



僕にはもちろん家族がいるんだけど、妻と娘と息子な。

これが、僕の愛する家族さ。

愛情に優劣はつけられない。

妻と子供達は同じくらいに愛している、と建前上はなっているが、正直に言うと妻が一番だったり。

これはしょうがないよね。

僕と妻が愛し合って、そして娘と息子が生まれたんだ。

最初に来るのは妻になるはずだ。

まあ、これも友人に言わせれば、父親としての自覚が足りないということなのだけど。

それでも妻が一番!

彼女がいないと僕は何もできないしね!


君は結婚している?

何?

まだ?

結婚いいぞ、いいぞ、早く結婚しろって!

んで、子供を作って、立派な父親目指そうぜ!


とうことで、妻のことを話そうか

ん?

それほど興味がない?

そんなはずはないだろう!!

僕の妻だよ。

マイラは世界一の女性だ!

興味がないってことはないだろう。

だけど、僕の妻だからな。

君のモノにはならないぜ!



[彼の妻語りは、長くなったため省略する]



で…上の子供、娘のイザベルについては何も言うことはないんだ。

元気いっぱいに外で遊んで、近所のガキ大将になっているらしいんだ。

とても頼もしいよな!

そうそう、身体強化も得意でさ、僕の血を濃く受け継いでいるっぽいよ。

顔も僕似さ!

きっと美人になるよ。

え?

彼氏?

うーん、別にイザベルが選んだ人ならいいんだけど…なるべくなら僕より強い人がいいね!


ちなみに、僕は身体強化が得意なんだ。

村でも上位に入ると思うよ。

ちょっとした自慢さ!


後で、手合わせしようか?

びっくりするぜ、農家ってののやるなって思うはずさ!


んでさ…下の子供、息子のルーカス…ちょっと難しいんだ。

正直、心配している…

子供らしさが少ないっていうか、言葉遣いは子供っぽいんだけど、目が冷静というかなんというか…

つまり、子供らしくないんだ。

小さいときは、体も弱くて身体強化もできなかった。

妻の方の血が強いのかもしれないけど、そうすると魔法の使う才能があるのかもしれないけど、体なんて強いに越したことはないよな。

ちょっと心配なんだ…


でもね、この子は可愛らしくて、僕の仕事、農業なんだけど、それに興味があるようなんだ。

毎日僕の手伝いをして、どうも農業を学んでいるみたい。

分からないことを積極的に質問してくるし。

うん、ちょっと困ったりもする。

僕が知らない質問が多いから…

ついでに畑仕事で体力がついてくれたらいいななんて思うよ。



ある日、息子から剣術をおじいさんに教わりたいとい言う話が出たんだ。

うん、剣術に興味が出てことは良いことだよね。

心配していたし。


いつもイザベルから剣の手ほどきを教えられていたから、それで興味がわいたのだと思うよ。

だけど、息子はまだ5歳。

本格的な剣術はまだいいと思うんだけど。

今は遊んで体力をつけて、社会性を学んでもらえばいいよね。


そこで疑問。

はて、おじいさんとは誰だ?

よく聞いてみると、元剣聖のモンタギュー爺さんだったんだ!

よく彼に気に入られたよね。

さすが僕の息子だと思わない?


ルーカスに剣の才能がそれほどあったっけ?

そう僕が妻に言うと、「あなたの目が節穴なだけよ」と怒られた。

確かにその通り。

僕が愚かだったんだ。

外からの方が冷静にみれるってことだよね。


モンタギューさんなら安心して息子を預けられるよ。

だって、元剣聖だよ!

この国一番の剣士だった人だよ!

この村で彼の教えを受けたのは数人しかいないんだ。

ちなみにその一人が僕さ。

これは自慢さ。

モンタギューさんはちょっとだけ女性好きだけど、それは男として大切なことさ。

息子は女性に対してガツガツしたところがないから。

まあ、子供なのでしょうがないけど、モンタギューさんに影響されて女性に積極的になってくれると良いなとも思っている。

ちなみに僕もモンタギューさんのようになりたいと思ったのだけど、口下手で無理だった…

女性は好きなのに、いや、好きだからこそ、うまく話せないんだよね…

いや、情けない。


え、そんな男が、妻とはどうして結婚できたのだと?

まあ、長い話があるのですよ。

いや、そこまで聞きたくない?

遠慮するな、友よ!

ほら、グラスが空いているじゃないか!

飲め、飲め!

そして僕の妻への愛の道を聞くんだ!



[省略……]



妻に息子のことを詳しく聞いてみたんだ。

やはり、魔法の才能もあるらしい。

それも妻よりもだよ!

大人になれば、村一番の魔法使いになるのではないかと言うのが妻の見立てだよ。


僕は魔法については素人も素人。

生活に必要な魔法がやっとのこと使える程度なんだ。

魔法については妻の意見が全て。

うん、魔法以外も、ほとんどが妻の意見のほうが正しいよね。

そう思っていた方が夫婦生活はうまくいくってもんだよな?

これは父親から「一番大事なこと」と教えてもらったんだ。

全面的に正しいと思っている。

父が残した数少ない役になった言葉だよ。



でさ、剣の師匠がモンタギュー爺さんで、魔法の才能がある。

これは魔法剣士になるのではと思うね。

村最強の狩人になるかもしれない。

んー、でも、息子の性格が優しいんだ。

息子は狩人になりたくないと言っているんだ。

農家になりたいと言う。

父としては同じ職業を目指してくれるのはうれしいのだけど、未来の可能性は大きく持ってもらいたい。

しかしさ、「農業はすごい仕事で、それぞれの仕事に偉い・偉くないはない」と、息子に諭されたんだ。

なんか、息子のほうが人生経験が豊富なような気がしてちょっと凹んだよ。

きっと、将来、息子は最強の農家になるでしょうよ。


ちなみに魔法の方なんだけどね。

こちらは妻の魔法の師匠に師事することになったんだ。

エリカさんは元々学校で魔法を教えていたんだ。

年齢で引退したけどね。

僕も教わったよ。

だけど、僕は落ちこぼれで、ほとんど魔法を使えないからね。

ま、ダメな生徒さ。

で、息子は優秀な生徒らしいよ。

それと楽しそうに勉強に行くんだ。

楽しむのが一番さ!

楽しいから上手くなるんだよな。

うん。

それが一番!


それで、妻はエリカさんに息子の才能を認めてもらえて、嬉しそうだったよ。

息子はやっぱり妻の血を濃く引いているんだ。

顔も妻に似てかわいい顔をしているよ。

僕に似てほしかったけどね。

はは、娘が僕に似ているのでいいのさ!



ん?

そろそろ本題に入れ?

ああ、村長の息子のジェフリーと、樵の息子のビリーの件だっけか?

まったく、せっかちだな…



あれね。

冬の雪の日だったかな?

この辺は雪が深くてさ、毎日雪かきで大変なんだよ。

毎日、毎日。

まあ、この村の人たちは身体強化が得意な人が多いから、全然大丈夫なんだけどね。


ある夜に樵のデイヴが来たんだ。

焦った表情だったんで、ただ事じゃないってすぐに分かったよ。

息子が帰ってこない、知らないか?

村長の息子と一緒だったはずだって。


僕は知らなかったんだけど、子供が昼間に会ったらしい。

息子は村長宅前で2人して出かけていくところを見て、娘はその少しあと森に行くと言っていたのを聞いたって。


デイヴは怒ったね。

子供だけで森に入るなとあれだけ言っていたのにって。

家を飛び出していったよ。

僕も追いかけたさ。

そのまま森へ一人で入らないか心配だったけど、そこまで頭に血が上っているわけじゃなく、村長の家へ行ったから、よかったよ。


デイヴは村長に平謝りさ。

うちの息子が森へ連れて行ったってな。

村長は頭のいい人だから、冷静さ。

内面じゃ、息子への心配でいっぱいだったんだろうけど。

たぶん、うちの息子のほうが誘ったんだろう。

こちらの方こそすみませんって。

今はどちらが悪いかを争っている場合じゃなくて、子供たちを探すのが優先だってさ。

さすが、村長、人格者だね。


捜索隊を出すことになった。

村で戦える大人を集めて、グループを組んで森へ入った。

もちろん僕も行ったよ。

この辺の話は知っているよね?


冬でも森には魔獣がうろついている。

この村の人間でもすべての人が森に入れるわけじゃないんだ。

ましてや子供。

子供の年齢でも入ることはできるけど、戦えると判断された子供だけが森に入れることになっているんだ。

それだけ森は危険なんだ。

そこ辺のことはわかってるって?

ここに来るまでに苦労したって。

そりゃあそうか。

この森に入れる下界人は少ないからね。

無茶するなよ!


僕は、狩人のグレッグ、鍛冶屋のブレットとグループで森に入った。

右手に鍬、左手に鎌を持ってね。

なんで剣とか槍じゃないかって?

そりゃ、僕は農家だからね。

いつも使っている道具のほうがいいでしょ。

農具じゃ魔獣と戦えないって?

そんなことはないだろう。

鍬だって、鎌だって、剣と槍と同じで金属でできてんだ。

同じことができるだろう。

極論だって?

そんなことはないさ。

だって、僕はこれで魔獣を狩ってるんだ。


実際にあの時も、猪やら鹿やらが出てきて狩っていたよ。

冗談じゃなくて。

あ、熊はもう少し後か。


で、森に入って、どれくらいかな、一時間程度たったときか。

まだ子供たちは見つかってなくて、焦りだしたときだったよ。

空に花火みたいな魔法が打ちあがったんだ。

それは妻の魔法で、集合の合図さ。

すわ、子供が見つかったのかって思ったよ。

実際は、ただの集合の合図だったわけだけど。


村長宅に集合して、話を聞いた。

どうも子供のいる位置が分かったって。

そこを探してくれって。

どうも情報源は妻だったようで、ちょっと話を聞いた。

まあ、他の人から聞いた情報だったようだよ。

それが誰かって?

そこは個人情報保護法ってヤツだよ。

守秘義務?

僕がそんな言葉知っているのはおかしい?

奥さんからの受け売りだって?

ま、そうだけど。

話したら怒られるからね。

話さないよ。

ん、俺は他に話さないから大丈夫だから、教えてくれって?

ダメ、ダメ。

秘密なんて少数にでも話したら、それは公言するのと同じだよ。

それくらい僕だって知っているさ。

でも、その情報源は信頼できる人だったよ。

だから、その場所に向かったんだ。


途中、そう、前出の熊さ!

あれが出た。

この時期にでる熊は冬眠できていないヤツだ。

空腹で気が立っているんだ。

狂暴だぜ!

逆に、僕がいるときに出会ったのは幸運だったよね。

他の人が出会っていたら、まあ、倒せたと思うけれど、怪我人が出たかもしれない。

子供たちが出会っていたらと思うとゾッとするね。


熊が引っ搔いてきたんで、それをかいくぐって、わき腹にクワを叩きつけてやって、弱って動きが遅くなったところで、鎌で首を刈ったのさ。

知ってるかい。

熊肉おいしいんだぜ。

村で全部食っちまって、残ってないんだけどさ。

今度、狩ったら食べに来いよ。


ん?

子供達ね。

そうだよ。

妻の言っていたあたりにいたよ。

巨木の洞の中だよ。

子供達は初級の火魔法が使えたのがよかったね。

暖をとれた。

あとは魔物に襲われなかったのが幸運だね。


子供が森に入った理由?

どうもさ、女の子にカッコつけたかったらしいぞ。

森の中に入って、魔獣を狩ってさ。

ま、子供のことろに思う、定番のヤンチャだね。

それで、数年に何人かの人死にが出るんだから、軽いもんじゃないけどね。

そりゃこってり怒られたさ、子供どもは。

これでちょっとは賢くなっただろう。

そうやって大人になるんだよな。



で、この事件の報告をするのかい?

そんな大層な事件じゃないだろう、どこにでもあることさ。

誰も死んでいないしな。


ふーん…

この村はアンタチャブルだから、逆に小さな事件でも国に報告する義務があるとね。

報告はするけど何も反応はない。

ここの生活は何も変わらない、か。


そんなにこの村を警戒する必要はないと思うけどね。

ただの村で、住んでいるのは善良な村人だよ。

国に何かをしようなんて考えるやつはいないさ。

日々をただ懸命に生きているだけだよ。


力ない自分たちは、力のある存在が怖い?


そんなに大した差はないと思うけどね。

ちょっとだけ、魔力が高かったり、身体強化ができたりするだけさ。


そうだね、何も変わらないならいいよ。

こっちもいつも通り暮らすだけさ。


これで聞きたいことは終わりかい?

なら、僕の妻の素晴らしい点について話し合おうじゃないか!



[以降、省略………]


[彼の飲酒はあたりまえにバレ、妻に怒られる]

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