第7話 5歳児の将来計画
魔力が増えたことによる変化について。
まず魔力量が増えた。
魔力の項目にはMPを含めるらしいことが判明。
だとするとHPは体力に含めるのか?
きっと最大HPだろう。
魔力量が増えたので初級の魔法をいくら使ってもMPが枯渇しない。
魔力量を増やすためには魔力を使い切ることが重要なため、対応を考えないといけない。
初級の魔法だと魔力の消費が少ない。
最大の魔力量で初級の魔法を使えば?
派手なことになりそう……
魔力を無駄に使用する、燃費の悪い魔法がないだろうか?
そして魔法の威力が上がった。
今までの効果の倍以上になっている。
日課の魔力消費のために使っている風を吹かせるだけの初級魔法(洗濯物を乾かしたり、暑い日に涼むのに便利)。
それを部屋の中で使った。
いつも通りの魔力量だ。
結果、強い風が嵐のように吹き荒れ、部屋の中の物が散乱した。
片づけるのが大変だった。
母さんに気づかれる前に、何とか片づけた。
危ない、危ない。
怒られるところだった。
これは手加減を覚えないといけない。
しかし初級魔法ってこんなに強くなるんだ。
うん、まだ大丈夫だ。
チートではない。
手加減を覚えて、バレなければ、問題なし!
静かに暮らしていけるはず。
季節は夏。
畑のトマトが赤々と色づいている。
パパに許可をもらい、一つもいで、水魔法で洗って食べる。
これはおいしい!
味が濃い。
甘みも、酸味も濃い。
そしてトマト特有の癖も強い。
これが本来のトマトの味なのかもしれない。
元の世界のトマトは食べやすいように品種改良されていると聞いたことがある。
この世界のトマトは癖が強いので、子供は嫌いかもしれない。
しかし子供たちよ、この癖がトマトのおいしさだと大人になると知るのだよ!
母さんがこのトマトで作るスープもおいしい。
パスタとかもきっといいんだろうけれど、残念ながらパスタの文化がここにはなかった。
街に行けばあるのだろうか?
小麦があるのだから、麺は無理だけど、耳型とかのパスタなら作れる?
あれ?
パンとパスタって同じ小麦粉だっけ?
小麦粉って種類があったよね、薄力とか……
わからん。
さて、この村の料理法はとてもシンプルだ。
うちの家だけかもしれないけれど。
素材を焼く、煮るくらいだ。
味付けは少量の塩とハーブ。
しかし、素材の味がよいからだろうか、とてもおいしい。
パンがあるが、固めな、健康に気をつけていそうな女性が食べているようなヤツだ。
だけど、やっぱり小麦の味が濃くておいしい。
ただ、顎が疲れる。
僕は前世では米派だった。
朝は卵かけご飯!
これしかない!
それに牛乳……
前世、若い子には気持ち悪がられるんだよね、ご飯と牛乳。
僕らの時代は給食には牛乳だったんだよ。
パンでもご飯でも!
だいぶ米が恋しいが、村では見たことはない。
探すためには村の外に出ないといけない。
でもね、僕はきっと村の外には出ないのだろう。
そうして生きていきたいと決めているから。
のんびりと村での暮らしをする。
街に行けば刺激的なことも、おいしい料理もあるだろうけど、村でそれがなくても幸せに暮らせるはずだ。
街はね……イベント発生しそうで怖いんだ。
勇者一直線の強制なメインイベントが発生したらどうする?
あれって逃げたら不幸になりそうだし、進むしかなくなりそうだ。
では料理の方法を増やすことはできないか?
前世の知識を使ってできそうな気はする。
まず油が欲しい。
植物油は採取量がとても少なく高価だ。
ちなみにラードは大量にある。
魔獣から脂身が大量にとれる。
ラードで揚げればいいんじゃね?
ジャガイモを揚げてポテトフライ。
冷えるとまずそうだが、温かいうちならラードもいけるんじゃないだろうか?
塩とハーブだけでも美味しいはず。
植物油も考える。
ひまわりとかから油が採れるのだっただろうか?
個人的にはごま油も欲しいところだ。
あれを最後にちょっとかけるだけで料理の味がガラっと変わる。
ラー油とかも作れないだろうか。
そしたら餃子か。
小麦と野菜とお肉、できそうな気がする。
……いや、待て!
五歳児が村の食を改善って、おかしいだろう。
これも転生者チートコースだ。
今は諦めよう。
うん、もう少し大きくなってからだ。
しかし、チートコースを回避するために、あれもできない、これもできないで、起伏のない人生になりそうだ。
まあ、それも僕らしくて良い。
人生平穏が一番だ。
本日、姉は学校に行っている。
午前で終わってそろそろ帰ってくるはず。
僕も早く家に帰って、お昼を食べ、剣の師匠のところに行かなければ。
なるべく姉を回避したい。
決して姉を嫌っているわけではなくて、ただ苦手なだけだ。
子供時代の年齢で、三歳差は大きい。
まして相手は女性だ。
成長の速度に違いがある。
体力の差がありすぎる。
同じ遊びをするのは難しい。
ママゴト遊びとか静かなものなら大丈夫だが。
いや、僕がしたいのかは置いておいて。
彼女はそんな性格ではない。
そして、三つ子の魂百まで?
ちょっと違うか、ね。
姉が苦手という意識はなかなか消えない。
僕の性格のせいかもしれない。
一旦苦手意識を持つと、その後、尾を引く。
なかなかそのイメージが払拭されず、人間関係に支障をきたす……
前世からの性格。
ダメだと思うんだけど、なかなかね、そういうのって自分自身嫌だって思っても、修正できないモノでしょ?
ま、ね、そのうちどうにかなるさ。
ということで、剣の修行という道に逃げる。
師匠のもとへ向かおう。
ん?
畑の側道を男の子二人とその後を女の子一人が歩いてくる。
男の子は僕より年上だろう。
女の子はたぶん年下だ。
ずいぶん小さい。
ちょっと見、可愛い子だね。
「お兄ちゃん、待ってよ!」
女の子は泣きべそをかきながら、男の子たちを追いかける。
前を歩く片方がたぶん彼女の兄なのだろう。
どことなく女の子と似ている。
……あれは、たぶん村長のところの孫かな。
「リネット、ついてくるなよ!」
「だって、今日はスージーと遊べないの。お兄ちゃん、遊んでくれるって言ってた」
「俺はビリーと約束があるんだ。お前、帰れよ」
「ヤだー! お兄ちゃん、リネットと遊ぶって言ってた!」
妹がギャン泣きだ。
うん、あれだな。
親から妹の世話を言われたけど、友達が遊びに来たので、そちらを優先した。
気持ちはわかる。
妹と遊ぶよりも、友達と遊ぶほうが楽しい。
それは確か。
だけど、妹は幼いから放っておくと危ないんじゃないかな。
こんな村の端まで来て。
それと、妹の世話をしなかったって、後で親に怒られるぞ!
きっとバレる。
すぐバレる。
どうして、それがわからないんだろうね、子供は。
さて、どうする?
前世の僕なら、放っておくところだ。
関係のない他の家のことだし。
でも今は、ちょっと声をかけてもいいのかなと思っている。
小さな村だし、田舎って、いらん世話焼きが多い。
その一人が僕だっていいはずだ。
うん、前世の記憶があるから、ちょっと子供相手に強気に出れるところもあるよね。
それと、ちょっと将来的な打算もあったりする。
恥ずかしい話、前世ではまともに女性と付き合ったことがない……
うん、きっと今の時代、そういう男性は多いはず!
僕だけではない!
もちろん好きになった女の子はいる。
だけど、恥ずかしくって、というか勇気がなくて話しかけることすらできなかった……
遠くで眺めているだけだ。
でも、それだけで幸せだったんだから不思議なものだね。
そして、別の高校になって、何もなく、ぷっつりと消えるんだ。
僕は引きずるタイプだから、それでも数年想っていたけど。
ちょっと重い性格かなあ……
次に好きになる人が現れないと、そんな感じだと思う。
本題に戻そう。
そう、その人生をまた繰り返すのか?
彼女のいない人生を!
そのまま独り身で死ぬのか?
子供は欲しくないのか?
結婚して、子供を育てることが幸せのすべてじゃないことはわかっているが、一つの目標とするのもよいのではないだろうか。
もしかして、子供ができないかもしれない。
しかし、それはそれだ。
とりあえず結婚したい。
結婚はゴールではなく、通過点だと人は言う。
しかしだ。
僕はそもそも結婚できていないのだから、それに憧れを持ってもいいんじゃないか。
きっと、よい!
パートナーを見つけるには小さいときから仲の良い女友達を作る必要があるんじゃないかと思う。
前世、結婚年齢は二極化していて、早い人は早いし、遅い人は遅い。
できない人はできない……僕だ。
結婚が早いのは、学生時代に付き合っていてそのままゴールインの場合が多い。
ちょっとそれを狙っても良いのでは?
もしかしたら、リネットがパートナーになるかもしれないし、彼女の友達を紹介してもらえるかもしれない。
まあ、そうならないとしても、女性には慣れておく必要がある。
それにね。
女性が泣いているのはイヤなものだ……
心がチクチクする。
「どうしたの? 何か問題があるの?」
とりあえず声をかけてみる。
男の子たちが振り向く。
「ん? お前、誰だ。関係ないだろう」
村長の孫、リネットの兄、確か名前は「ジェフリー」だったっけ。
「僕はルーカス・ブラウン」
「ブラウン……ああ、農家の息子か」
ちょっと農家を下に見ているのかな。
そんな顔をしている。
うちらがいなければ野菜が食べられないぞ。
野菜が食べられないと……きっと脚気になる。
大航海時代、脚気で死んだ人がたくさんいたって話だ。
怖いんだぞ!
「でも、妹が泣いているよ」
「コイツがしつこいのが悪いんだ。僕たちの後をついてくるって」
「一緒に連れて行けばいいのに」
「コイツ、足が遅いし、おママゴトしたいって言うし。一緒に遊べないだろ」
兄が吐き捨てるように言う。
そして妹が大泣きする。
まあ、分からないでもないけどさ。
でも妹が可哀想だよ。
そんなに言ったら。
自分の都合だけで世界ができているわけじゃないよね。
一人で生きているわけじゃないし。
自分だけ優先するんじゃなくて、ときに他の人にも優しくしたほうがいいと思うけど。
子供だからしょうがないけどね。
だけど後で後悔するんだよな。
小学校のときに、なんで女子と距離をとったんだろう。
仲よくすればよかったのに。
仲よくしないことで何かいいことがあったのだろうか?
「いいじゃない。一日くらい一緒に遊べば」
そういえば僕も姉から逃げ回っているね。
どの口が言うのだろう。
ま、他人のことは良く分かるってことで。
「おい、ジェフリー。もう行こうぜ!」
もう一人の男の子が、ジェフリーを促す。
「待てってビリー。そんなに言うんだったら、ルーカス、お前が遊んでやれよ。じゃあな」
兄たちは行ってしまった。
そこに泣いている妹を残して……
ま、ここらへんが普通の兄と妹の関係かな。
物語のようにベタベタはありえないか。
しかし困った。
泣いている女性なんてどうすればいいのだろうか?
人生二回目だっていうのに、経験もなく。
ほんと情けない。
「ねえ、君、リネットちゃんっていうの? 僕はルーカス」
答えはない。
彼女はただ泣き続ける……
僕は途方に暮れて立ちんぼだ。
彼女の頭を撫でてみる。
一説によると、頭を撫でられるのが嫌いな女性も多いそうだ。
たぶん、撫でる人との関係だと思う。
たとえば想い人なら好きだろうし、どうでもいい人なら嫌い。
結局そういうことだろう。
で、今回の場合と言えば、僕は初対面で、なら、ダメな方だ……
彼女は泣いている。
僕も泣きたくなってくる。
子供の涙腺は緩い。
でも、ぐっと我慢。
僕が泣いたって何も解決しないだろう。
なあ、そうだろ……
どのくらいの時間だったろう。
ようやく彼女が泣き止んだ。
永遠に感じられたが、たぶん十分かそこら。
彼女の泣き腫らした目が初めて僕を見る。
「……あなたは?」
「僕はルーカス。ただの農家の息子だよ」
「農家?」
「そう、野菜を育てるんだ。今は真っ赤な大きなトマトがおいしいよ」
「……あたし、トマト嫌い」
うん、トマト嫌いの子供は多いよね。
でも栄養満点でいい野菜だ。
出汁もとれる。
スープになる。
煮詰めればソースにもなる。
凄いんだぞ!
「わたし、トウモロコシとサツマイモが好き」
「トウモロコシは、もう少し後かな。サツマイモはもっと後だよ。秋かな。そうだ、トウモロコシができたら一緒に食べようよ。穫れたてのを茹でてさ」
「……うん。トウモロコシ食べたい」
うちのトウモロコシはうまいぞ!
焼いても、茹でても、スープにしても良い。
なんかうちの料理、スープ系が多いな。
何でもスープにしたら、美味しくいただけるともいう……
ということで、僕たちは友達になった。
この後、彼女の家、村長の家に行って、おままごとをした。
村長さんと奥さんがいて、たまに村のイベント事では見ることがあるけど、プライベートで会うのは初めて。
この村の最高権力者?
緊張したけど、結構いい人そう。
お茶とお菓子を出してくれた。
そのレベルは僕の家と変わらない。
村長宅だからっていいものを食べているわけじゃないんだね。
暮らしぶりはそれほど変わらないのかも。
しかし、この歳(前世も入れて)でおママゴトね……
僕が夫で、リネットが妻。
オーソドックスな夫婦関係。
この旦那、仕事が遅くて、帰宅時間が遅い。
妻はそれでイライラして、旦那の浮気を疑う。
旦那は浮気なんてしていないというが……
果たして……
オーソドックス(?)な昼ドラ。
いや、僕はそういう関連のを前世で見なかったからわからないけれど。
そうだね……実は旦那は殺人鬼で夜な夜な人殺しをしていた、ってなら見るかも。
その場合、妻にはもっと優しくするかもしれない。
どちらにせよ登場人物が足りない。
浮気なら浮気相手、それに妻の親友(?)が必要。
殺人鬼ならそれを追い詰める刑事役が必要。
刑事はおじさんで、過去の事件を引きずっている感じがいいな。
ふむ。
こういう、おママゴトに付き合えるようにならないと、たぶん幸せな家庭なんて築けないだろう。
男性と女性は遊びが違うし、大人になっても考え方が違うと思う。
男性と女性の違いと決めつけるのも良くないか……
この場合は個人のってことかな。
僕が本当の子供だったら楽しめたのだろうか?
いや、今だから何とかなっているんだと思う。
本当の子供の僕だったら、女の子とおママゴトで遊べないだろう。
自分の好きなことの方がいい。
鬼ごっこ、かくれんぼ?
二人じゃ面白くない……
意外におママゴトが正解?
しかし、僕も成長したものだ。
少し褒めてほしい。
後日、リネットの友達、スージーとも友達になった。
うん。
女の子の友達、いいね!
前世とは違う人間関係で育っていけそう。
これが吉と出るか、凶と出るか……
前世なら子供の頃の人間関係なんて、大人になればほぼないに等しい。
高校、大学で徐々に会う人間は減っていって、大人になれば、会うのは一人二人いればいい方だと思う。
しかし、この村だとコミュニティーが狭い。
大人になってもずっと子供の頃の人間関係が続くのだろう。
うーん……
最悪、ダメなら逃げよう。
別のところに行くのはものすごくストレスと労力がかかるけど、どこでだって農業はできるさ。
そして、できるなら。
ハーレムなんていらないから、たった一人だけ愛し合える人ができるといいな、と思う。
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