第4話 消失

 「イライザさん、あれ!」 

 ラルクは前方を指さした。前方からかすかに光の筋が見えてきたのだ。

 

 「見えてきたね」


 ついに2人は森の出口が見えるところまでたどり着いたのだ。


――ここまで来ればもう大丈夫だ、帰れるんだ!


 「助かった……」

 ラルクは危険から脱したことを確信していた

 「ちょっと、まだ油断してはだめよ」

 「わ、わかってますよ……」


 「イライザさん、本当にありがとうございます」

 ラルクは改めて礼を言った。

 「あなたのおかげで生きて帰ることができそうです。何とお礼をいったらいいか……」

 

 「だから気にしなくていいってば、貴方さっきからそればかりね」

 イライザは少し苦笑いしながら答えた。



 「あ、あの……イライザさん……」

 ラルクは立ち止まった。


 「どうしたの?」

 「その……もし、良かったらなんですけど……ま、また僕と一緒にこの森に来てもらえませんか?」


 「え?」

 イライザはきょとんとした表情だった。


 「い、いえ、その……」

 ラルクはしどろもどろになりながら話した。


 「またこの森に来て、薬草を採ったりしないといけないんですけど、1人じゃ不安というか、実際今日も死にかけてて、今日は貴方のおかげでなんとか助かったけどまた危ない目にうだろうし、貴方がいてくれればすごく安心というか、だから……」

 

 「うーん……」

 イライザは顎に手を当てて少し考え込んでから再び口を開いた。

 



 「ごめんね。それはちょっとできないかな……」

 イライザは申し訳なさそうに苦笑いして答えた。

 「そ、そうですか……」


 ラルクは少しだけがっかりした。と言っても、この答えは何となく予想していた。

 自分とイライザでは格が違いすぎることは彼なりに理解していた。


 

 

 ただ、イライザが次に言う言葉は全く予想していないものだった。



 「私はもうすぐ消えてしまうから」



 「えっ……?」


 「消えるって……」

 ラルクは意味がわからず、混乱していた。

 「それって、どこか遠くに行くってことですか?」

 

 「ううん」

 イライザは首を振った。その顔は気のせいか、どこか悲しそうにも見えた。

 

 「文字通りの意味だよ。私は消えるの」

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