第2話「第二の勇者」
私の名前はミーシャ、勇者をやってました。
ユーリさんが亡くなってから長らく人とは喋っていません。
この世界は、魔王の魔法によって大半の人間と生物が死滅してしまい、人間に至っては先代勇者のユーリさんと私しか生き残ることができませんでした。
そんなユーリさんも亡くなり、この世界にはもはや私しかいなくなってしまいました。
まだ人がいるかもしれないと希望を持ちたいのですが、残念なことに勇者とはいろんなことがわかってしまいます。
相手の嘘がわかったり、嫌な予感が全部的中したり、勘が冴えているのです。
この枯れた大地と星には、誰もいないし何もないことが全部わかっているからこそ、毎日ここから枯れた海から登る綺麗な朝日をゆっくり眺められるんですけどね。
こうでもしなていないと時々狂ってしまいそうになります。
発狂して何度か自殺をしようとしたこともありました。
正直いうと今でも死ねるなら死にたいです。
でも勇者とは悲しいもので、何度首をかき切っても翌朝にはこの身体は息を吹き返すのです。
私はこの地獄からいつ解放されるのでしょう…
そんな時一人の少女が目の前に突然現れました。
「勇者さ〜ん?生きてる〜?」
「誰ですか?どうせまた幻覚でしょう?」
その日もまた、死の淵から蘇ったばかりでひどい頭痛に見舞われていました。
「幻覚だなんてひどいな〜、リリス傷ついちゃった〜」
「幻覚なんて見たくもありません!!早く消えてください!!」
最初は幻覚だと思ってました、でもその少女は確かに本物だったのです。
「え〜、せっかく別の世界に連れて行ってあげようと思ってたのにざんね〜ん、じゃあ次のとこ行くか〜」
「待ってください。」
「ふふっ、興味でた?」
「…はい。」
別の世界
その言葉はユーリさんから聞いたことがありました。
この世にはさまざまな並行した世界がいくつもあり、そのそれぞれで同じような人々が全く違った環境で暮らしを営んでいるとユーリさんはいっていました。
言い換えると「パラレルワールド」
この娘は私をそこへ連れていけるとさっき言いました…
「よろしいっ!じゃあ説明するね〜、今からあなたを別世界に連れて行くからそこで9人の別世界の勇者を全員殺して真の勇者の座を奪い取るか、全員と和解できればクリア!!この世界に戻って来るなり、その世界に止まるなり好きにしていいよっ」
「達成できなかった時のペナルティーは?」
「私が全員殺して真の勇者になる。いい?わかった〜?」
「本当なんですね?」
「うん、ほんとだよ〜、リリスは嘘つかないよ〜」
その自身に満ちた言葉ですぐに分かりました、 彼女にはそれを可能にするだけの何かがあることが。
「やります…」
「そりゃよかったよ〜 じゃあ…」
そう言うとその少女はどこからか大きな星形の爆弾を取り出して、わずか数センチしかない導火線に火をつけたんです。
「ちょちょ、ちょっとま…」
「私急いでるから待ちませ〜んっ!いってらっしゃ〜い⭐︎」
爆弾が爆発したと同時に私は意識を失いました。
それからしばらく経って目を覚ますと暖かな日差しの下で目を覚ますと、目の前にはヒラヒラと蝶が飛んでいて、膝ぐらいの高さの草が当たり一面に豊かな大地、遠くには大きな街まで見えます。
「これは…」
状況が飲み込めず、唖然としていると目尻が熱くなるのを感じました。
私は泣いていたんです。
生き物に出会え、地獄からようやく解放された喜びと、ユーリさんが命を賭して守り抜いた星を見捨ててしまった不甲斐なさ。
でももう後には戻れません…
ここで生きて行くしかないんです。
「ユーリさん…私、ここで生きても良いんでしょうか…」
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