あの日の敗者達へ

@arata000

第1話

中学2年の夏休み、私が姉のバスケの県大会を観戦しに行った時のことだ。当時私は「どうせ最後なんだし見に行ってやるか」という軽い気持ちで試合会場に向かっていた。姉が所属しているバスケ部は県内屈指の強豪校で関東大会に出場したこともある実績を持っていた。その中で姉はスターティングメンバーでは無かったがバスケをプレーしている姿はとてもかっこよく見えた。

試合が始まる合図がした。姉はまだベンチにいる。相手チームとの攻防戦が繰り広げられていった。この日はチーム全体の調子が少し悪そうだったが序盤はかなり点差をつけ勝っていた。試合も中盤にさしかかり姉もスターティングメンバーと交代し攻防戦に加わった。特に目立ったプレーをしていなかったが鮮明に覚えていることがある。海老反りの様な体制になりシュートを決めている所だ。その瞬間を見ていた保護者達と私は思わず歓声を上げた。その後も順調に進み試合もあとワンセットとなった。だが最後になって相手チームに逆転されようとしていた。負けそうになっていたこともありプレーに焦りが出ていた。そのとき私の心臓はとても速く鼓動していたと思う。終わりの合図がし両チームの選手達がコートから去っていった。1点差で負けてしまった。誰もが信じられなかっただろう今まで苦戦することもなかった場所で初戦負けしてしまったのだ。

選手達が観戦席に戻ってきた。みんな悔しそうに泣いていた。そして姉はとても静かに泣いていた。普段は明るくて脳天気な奴なのに。私は戸惑ってしまった。慰めようと声をかけたが脇腹に1発かまされた。妹の私に泣いている姿を見られたく無かったのだろう。私は同じく試合に出ていた友人達の所へ慰めにいった。1人は自分を責めるようにずっと泣いていた。1人は私の胸に顔をうずめ子供のように泣いていた。そんな私も影響され泣きそうになったが、彼女達の日々の努力を見ていない私が泣く権利など無い。

姉がずっと努力してきた事がこんな呆気なく終わってしまった。今でもあのとき勝っていたらと思うことがある。でも勝っていたとしても負けを経験しないチームは1つしかない。勝者の後ろで悔しい思いをするチームなんて山程ある。

でも努力をしてきた2年半だけは無駄にならないでほしい。

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