第8話

 俺の背後から音もなく静かに飛んできたウィンドランスを最低限のステップで回避する。

「兄さん、いくら制限がないからってそれはズルいと思うな。」

「まぁまぁそう怒らずに、やられてよっ!」

 姉さんが俺の頭めがけて剣を力いっぱい振り下ろす。俺は右に避けようとしたが、左右にウィンドランスが放たれていて避けれないので前に一歩踏み出して姉さんの剣を受け止める。が受け止めきれずに体勢を崩してしまった。そこに姉さんが剣を振り下ろして

「まいった。降参だよ。あー、悔しい今日は勝てると思ったのにな。次の勝負は1ヶ月後かぁ。」


 俺は5歳になった。兄さんと姉さんは8歳だ。つまり兄さんと姉さんは披露会のために王国首都のリビルラーグにいくのだ。往復1ヶ月の超長旅だ。辺境をねがってごめんね。

 そしてその間はメイドのリーシャと二人暮らしだ。


 俺は光魔法と闇魔法を新たに習得した。異世界系にはだいたいあるものだと思っていたので簡単に覚えることができた。そして、光魔法と闇魔法といえばバフとデバフだ。光魔法を纏うとバフ、闇魔法を纏うとデバフになる。

闇魔法は使っているとデバフの効果で5倍くらいの早さで魔力が減っていく。

 さらに光魔法は回復もリジェネであるらしく光魔法は使っていても魔力が減っては回復するというという奇妙な感じになっていた。なので稽古をしているときはバフを切ったリジェネ回復だけの光魔法を纏っている。

 姉さんたちとの稽古は多分勝とうとしたら勝てる、が勝つためにはまず姉さんに近距離で魔法を撃たなければならない。しかし戦闘中に威力の調節ができるかがまだ不安だ。

 逆に兄さんには当たらない気がする。だって兄さんいつの間にか背後を取ってるんだもん。

 せめて、体格差がなくなればなぁ、姉さんとまともに打ち合えるようになる頃には魔法の威力調節もできるようになってるだろう。つまりは飯を食って寝て待つしか攻略法はないってことだ。

「いや、今のままでも勝てるぞ。闘気があればな」

 父さんよ、ナチュラルに心を読むのはやめていただきたい。びっくりする。

「そんな驚くなよ。俺は親だぜ、子供の気持ちぐらいわかる。それに体格差がある相手2人と戦えてる時点でたいしたもんだ。」

 そんなもんだろうか。異世界系はもっとこう、兄妹ぐらい楽に勝てるもんだと思ってた。

「闘気は生き物全てが使える、魔法に似て非なるものだ。闘気が使えるようになったら身体能力が格段に上がるし、バリアみたいなものも使えるから魔法士に一方的に負けることはなくなる。」

 そうか!バリアだ。まともに打ち合えないなら無理に打ち合う必要はないし、バリアなら怪我を心配しなくてもいい。これはいいこときいたぞ。1ヶ月後が楽しみだ。


 ということで、闘気の練習だ。といっても本当に魔力と似ているので操作は簡単にできる。難しいのはバリア、闘気のシールドだ。闘気は魔力と違って体から離すと維持ができなくなる。なのでバリアといっても自分を守る程度の範囲しかバリアを広げられない。あくまで自衛のためのバリアか。それでも姉さんの攻撃を防げるなら十分だ。






 1ヶ月後、姉さんたちが帰ってきた。道中はなんの問題もなかったが姉さんが慰労会で偉そうにしていた、いじめっ子を剣で倒したらしい。いかにも姉さんらしい解決の仕方だ。


 そして、姉さんたちはこれから学園に入るまで家の裏にある森でモンスターを狩るらしい。稽古や座学も大事だがこの世界ではモンスターを倒すことは生きることに直結する。へぇ~いいな〜。チラッチラッ

「ソウも一人は寂しいだろうから父さんから離れないって約束できるなら一緒にきてもいいぞ。」

 よし。次にやることがきまったな。森に行ってモンスターのテイムだ。


 森に来た。もう姉さんたちはモンスターを狩っている。そして、俺も父さんの付き添いがあるがモンスターを狩っていいことになった。でもごめんな、父さん。俺がしたいのはテイムであってモンスター狩りではないのだよ。


 俺の生まれて初めてみるモンスターはスライムだった。しかも白、いや透明な色をしたスライムだった。水色じゃないのか、スライムって。なんかがっかりだ。まぁ最初のスライムはテイムすると決めていたのでテイムできるように頑張るか。


 まずは肉をあげる。お、やっぱり食べた。次に野菜だ。スライムはいると思って食べ物は持ってきてたが用意していて良かったな。野菜も食べた。

 野菜を食べ終わるとこっちによってきた。

「お、ソウはテイマーになりたいのか?っていうか透明なスライムなんてみたことないぞ、変異種か?これは運がいいな。」

 そこで俺は自分の魔力をスライムにやる。おぉ魔力も取り込んだ。

「ソウ、いくらスライムでも魔力は食べないぞ。お、魔力も食べるのか。こりゃ、ホントに変異種だな。」

 次は闘気だ。すぐに食べないとなくなるぞ。闘気も取り込んだぞ。ホントにスライムってなんでも食べるんだな。

「えー、闘気も食べるのか。これはホントに珍しいスライムだな。」

 お、懐いたぞ。こっちによってきた。しかし、改めてみると目、鼻、口、耳がないのによく俺がいる方がわかるな。それに核だけがみえるのもやっぱり違和感があるな。

「ソウ、名前つけてやったらどうだ?」

 あー名前か、確かにペットには名前をつけるよな。でも名前か、なんかいいのないかな。

「イート。お前の名前はイートだ。」

 転生者に聞かれたら恥ずかしいな。ネーミングセンスがないことがバレてしまう。まぁ厨二病と笑われるよりはいいか。






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