エリザ・フォークロリカ

【エリザ】第1章:儀式の万華鏡

 ある日、エリザの耳に奇妙な音が届いた。

 それは、既知の言語のどれにも属さない音素の連なりだった。


「ザシュ! ルクァイン?」


 その瞬間、目の前に一人の少年が現れた。

 中性的な美しさを持つその少年は、不思議な笑みを浮かべながら、自らをダンと名乗った。


「君の民俗学認知マトリックスに、新たな次元を加える時が来たようだね」


 ダンはそう言って、エリザに手を差し伸べた。


 刹那、目前で何かが弾けた。


 エリザは、眼前に突然広がった儀式の万華鏡に圧倒された。

 世界中の儀式が、複雑に絡み合い、新たな意味を生み出す様子は、まるで生命体のようだった。


「これは、本当に驚くべき光景だわ」


 エリザは息を呑んだ。


「そうだろう?」


 ダンが微笑む。


「人々の行動の最小単位が、どのように社会的意味を構築しているかがよくわかる」


 しかし、エリザの脳裏には警戒心があった。

 ダンの知識と洞察力は素晴らしいが、あまりにも異質で、彼の正体が掴めない。


「あなた、一体何者なの?」


 エリザが問う。


「普通の少年には見えないわ」


 ダンは神秘的な笑みを浮かべるだけで、答えない。その態度に、エリザは苛立ちを覚えた。


「次は神話の迷宮へ案内しよう」


 ダンが言う。


「そこでは、また新たな発見があるはずだ」


 半信半疑ながらも、エリザはダンについていくことにした。

 科学者ならではの未知への探究心が、警戒心を上回ったのだ。

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