学びの見守り手
九戸政景
本文
「おはようございまーす」
「おう、おはよう!」
今日も朝から校門の前に生徒指導の先生が立ち、登校してくる生徒の挨拶に対して挨拶を返している。一年中色違いのジャージで挨拶をしているけれど、夏場は暑そうで少し心配になる。
ん、そんなお前はだれなのか、と? 私は中学校が付喪神と成った存在。付喪神とは簡単に言えば、道具などが年月を経て魂を持った存在。私も長いこと中学校として多くの生徒を迎えたり旅立たせたりしてきたが、本当に色々な生徒がいて毎日が飽きない。
そうして朝の登校時間も過ぎ、午前の授業も一つまた一つ終わると、生徒達のおまちかねの給食の時間だ。各教室でいただきますの声が響くと、生徒や教師達が給食を食べ始める。
「うぅ……」
「あ、美味そうなもんみっけ!」
「え?」
「なあ、それもらって良いか? 代わりにこっちやるからさ!」
「う、うん。あ、あの……ありがと」
「……どういたしまして」
小さな声で男の子と女の子が話している。どうやら男の子が気を利かせて女の子の苦手なものを他のものと交換してあげてるようだ。ふふ、青春だな。こういうのもたまにはいいものだな。
そうして昼休みも過ぎ、午後の授業もゆっくりと過ぎ、訪れたのは部活動の時間だ。運動部や文化部、中には帰宅部なんてのもあるそうだが、そんな多くの部活動が頑張るのがこの時間だ。みんな、自分の夢や好きな物のために頑張っている。とても良いことだ。
そして時間が過ぎ、みんなの下校時間になる。みんな、今日もお疲れ様。明日も元気に登校してきてくれ。
「なあなあ、買い食いして帰ろうぜ?」
「お、良いねえ。どこいく?」
「お前の好きなとこで良いぜ?」
「んー……だったら、買い食いじゃなくお前の家に行ってもいい? 少しだけでもいいから話したい」
「ウチ? まあいいけどさ。けど、なんで?」
「お前と一緒の方が安心するからだよ」
「え?」
「ほら、行くぞ」
おや、男子二人組が帰っていくな。先頭の子が少し顔を赤くして、後ろの子が何やら胸の辺りに手を当てている、か。ふふ、今も昔もそういうものがあるのだな。私は応援しているぞ、若人達。
生徒達も帰り、教師達も少しずつ帰った後、暗い中を宿直の教師が見回りをしている。まあ安心してくれ。私がこの学校の付喪神である間は様々なところに気をつけ、君達の安全を守るから。私の分身である七不思議達に手伝ってもらってな。
見回りも終わって夜が明け、また教師達が学校へと出てくる。そしてそれから少し経って朝の練習がある生徒達が来て、他の生徒達が登校してくる。おはよう、みんな。学びの見守り手として今日も君達を見守るから、安心して勉学に励んでくれ。
学びの見守り手 九戸政景 @2012712
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