第4話 ミア・グーゼンバウアー
「もうその人の電話取らない方がいいよ。」
「あの。友人ですので、大丈夫です。次は出ないようにします。」
なぜ俺は言い訳をする?
「その人ね。僕の悪口しか言わないから。不愉快なんだよね。」
ん?なぜ悪口と分かる。ちょっと待ってくれ!
例の生き物?が憑いているのか?俺は警戒する。
「だからね。僕はそのイギリス人を殺そうと思う。」
俺は固まった。
ミアが危ない。
「ちょっと、殺しに行ってくる。あのクソ生意気なブスを。」
俺は慌ててスマホを取り出し、ミアに電話をする。
慌てすぎてミアからの履歴を押せない。
「くそ〜!」俺は手の震えを止めるために座り込んだ。
やっとミアに電話をかけた。
呼び出し音がデスメタルで、まともに耳にあててられない。
ミアが電話に出た。
「コマンダー。どうした?」ミアは自分のことは霊視できないのか?
「そっちに悪魔が行ったぞ!」俺は見たままを説明した。
「そうか。分かった。どうにかする。警備のおじさん、気を失ってるんだよね。
コマンダー、そのまま置いて逃げて。多分、最後のチャンス。」
ミアが説得してくる。
「分かった。だけどな。俺はあの部屋に行かなきゃならいんだ。どうしても。
そのためには
あの部屋の場所を知ってるのは
俺は義務感でいっぱいになっていた。
「コマンダー、相当やられているね。電話じゃ、どうしようも出来ないよ。
ところでコマンダー。なぜその部屋に行かなきゃならないの?」ミアが聞いてきた。
「え?何言ってるんだ、決まってるだろう。それはな…、プーッ、プーッ、」
コマンダーの電話が切れた。
「あの野郎。電話切りやがった。」
あたしはもう一度、コマンダーに電話をかけるが繋がらない。
「ヤツが戻ってきたのかもしれないな。」あたしの霊感が感じ取っていた。
「コマンダーも手遅れになってそうだ。だんだん。会話が成り立たなくなっている。」
あたしは子供の頃から霊が見えていた。
最初は亡霊とは気付かず人って勝手に他人の家の中、彷徨(うろつ)いてるんだなって思っていた。
それが当たり前だった。
あと、昼夜関係なしに、あと鍵が掛かってようとお構い無しに家に上がってくる。
ただ5歳くらいだったろうか。不思議に思うようになったのは、部屋に鍵をかけても人が入ってきていた。
というか入ってこれる人間と、入ってこれない人間がいる。
そして私以外の人は、見える人間と見えない人間が存在する。
7歳くらいでやっと霊ってやつが人間以外にいるんだなと。
人間に見えるが確かに血の気が無い。表情も無い。
親には気味が悪がられた。それもあり、霊が見えるとは人に言わなくなっていた。
そんなある日、郊外の公園でベンチに座っていると、その霊の中から私をじっと見ている紳士がいた。
あたしの目の前のベンチに座っている。
最初は人間だと思っていたが周りの人を見ると紳士が見えてないようだ。
そしてその紳士があたしを見ながら、ゆっくり立ち上がった。
「ヤバい。あの紳士はダメだ。逃げないと。」あたしは直感した。
あたしの目の前に立ちはだかり目線を合わせ、しゃがんだ。動けなかった。
「こんにちは。お嬢さん。私が見えるね?」
あたしは反応できなかった。
「そんなに、怯えなくて良いんだよ。今すぐ食べたりしないから。」
あたしは目を見開き固まった。
「おや、おや。怖がらせちゃったね。今はまだ大丈夫。今は心配しなくていいよ。」
この紳士は完全に後から食う気だ。
「僕の声に耳を傾けてくれるなんて。800年ぶりだよ。僕はね。今、感動してるんだよ。」
あたしはどうすることも出来なかった。
と紳士があたしの表情に気付き、話し始める。
「すまない。自分の話ばっかりしていたね。僕はルクス。君が僕を見つけてくれて、嬉しいんだよ。誰にも気付いてもらえず、こんな亡霊たちと一緒に公園で散歩している。君と僕と、目と目が合った。運命かな。」
あたしは目が合ったことを心底、後悔した。
「くそ。体が動かない。金縛りか。」
あたしは、徐々に耳鳴りが酷くなっていくのを耐えるしかなかった。
「君。抵抗したらダメだよ。頭が吹き飛んじゃうよ。気をつけて。」
こいつは何者だ?あたしは思った。
「いいかい。ミア。」
私の個人情報もバレてる。
「僕がいいって言うまで死んじゃダメだよ。」
なぜあたしが今日、自殺することが分かる?
「せっかく、話し相手ができたのに、今日いなくなったら、悲しいじゃないか。」
何故か、この化け物は号泣している。
「自分が抑えられないんだよ。まだ意識がはっきりしているうちに。」
あたしが言うと、
「まだ、幼いのに、ミア。でも大丈夫だよ。今からゆっくり狂っていって最高潮に達した時に、善良な人々を道連れにすればいい。」
こいつはド変態だな。あたしは思った。
「そして、私が全てをひと飲みにしてやるから。いや〜。考えるだけでヨダレが出てくるよ。」
あたしは死ぬのを諦めた。
「そうだよ。人間諦めが大事さ。いや〜今から楽しみだな〜。」
すると紳士ルクスはあたしの目の前を通り過ぎようとした年配のおじさんの頭を鷲掴みにした。
年配のおじさんは何が起きているのが分からず、固まっていた。
「グググッ。」骨が軋む音がして、徐々に首が後ろに回っていく。
「やめて!」あたしは思わず叫んでしまった。
「ガキッ!」首が一回転され、引きちぎられた。紳士ルクスは引きちぎった首を私の目の前に持ってくる。首は目を閉じ口が開いていた。
すると「けけけけけけ!」引きちぎられた首の目がカッと見開き大声で笑い始めた。
紳士ルクスも首の横で大声で笑っていた。
「ねぇっ!ビックリした?ビックリした?けけけけ!」
こいつはアホだ。
「すごいでしょ。僕ね。亡霊を殺せるんだよ。」
あたしは大変な奴に取り憑かれてしまった。
「僕と仲良くなるとねぇ。悪霊から守ってあげるよ。」
お前が悪霊の親玉だろ。あたしは言いそうになった。
「と言うわけで、僕がいいって言うまでまだ、死んじゃダメだからね。後、言っとくけど。」
あたしは嫌な感じがした。
「僕が死ねって言ったら死ぬんだよ。君がどんなに嫌でも。」
あたしの人生が始まった。
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