第3話 魔物
「
俺は痛みに耐えながら確認した。
「話しかけてない。よく考えてみて。
生首を目の前に置いたって言うけど、生首ってどこに隠し持つの?
あんなのポケットに入らないよね。」
「バイクを運転している君の目の前に生首置いたら、こうなるよね。
危うく君も私も命を落とすところだった。」
確かに。
先を急いでるのに邪魔してるようなものだ。邪魔している?
「これはね、見に行くのを邪魔さてるんだよ。」
「だからね。早く見に行かなきゃならないんだ。」
全てを知っているのは間違いない。
「わかりました。
どうにか動けるようになり、体の痛みもひいてきた。ただスマホが無い。
もしもの時に連絡できるようにしていたい。
バイクの周辺を探した。するとバイクから50メートルほど先にあった。
俺のスマホだ。「頼む。ついてくれ。」ボタンを押す。
ついた。電源が入った。電波も入っている。
俺はホッとした。「ブブブッ!ブブブッ!」電話だ。
ミアからだ。電話に出る。
「早く、そのおじさんから逃げたがいいよ。」ミアが開口一番指示を出す。
「なんで、さっき電話が切れた?」俺はミアに確認する。
「おじさんに邪魔されたんだよ。この電話も長くは持たない。
早く逃げて。また電話する。」ミアが電話を切った。
「くそ〜。」どっちの言い分が正しいのか。
まるで見当もつかない。
また、バイクを走らせている途中で生首が出たら、次はあの世行きだ。
しかし、早く出発しないと戻る時間が延びるだけだ。
「くそ〜。絶対に負けんぞ。さぁ!行こう。」
「
バイク貸しますから一人で大事な用事を済ませてください。」
俺が一緒にいけないことを告げる。
「くっそう〜。絶対負けないぞ〜。」
「
膝が曲がらないんですよ。バイクに乗れません。
すぐ救急車呼んでください。」
「どうか。どうか。無能で、どうしようも無い私を送り届けてください。」
「どうか。どうか。私は返納しちゃって免許持っていないんです。自転車も乗れないし!」
そして
「わかりましたから。俺の傷口に障りますから。
どうか、座ってください。」
俺は天を仰ぎながら
すると背後から「ヒタッ。ヒタッ。」と足音が聞こえてきた。
歩いて来たのは2メートルはある頭に羊の角を持ち、下顎から牙を生やした人間?
背中にはコウモリの羽が生えており、足は動物の後ろ足のようであった。
この生き物?が俺と
俺は声が出なかった。するとその生き物?は足で
その生き物?は手に生首を持っていた。その生首の表情は両目を見開き叫び声を上げるような表情だった。ただ眼球は入っていなかった。俺は声だけではなく、息も止まりそうだった。
「おじさん。」
呼ばれたので俺は振り返った。
そこにはビルの中で見た子供の幽霊が立っていた。
「あっちに、残ってたんじゃないの?」俺は何を聞いているのか。
「おじさん。大丈夫だよ。あいつは追い払った。」
俺は生き物?の方へ振り返ると消えていた。
「おじさん。早く、この警備員の人と来てよ。待ってるから。」
俺はどこに?と聞こうとしたら子どもの幽霊も消えていた。
「君、誰と喋ってたんだい?」
「多分、幽霊です。」
と俺が答えると、「そうなんだね。私にも霊感があると良いんだけど。何にも見えなかった。」
俺はこの短時間に色々あり過ぎて、情報を整理できないが、子どもの幽霊が可哀想すぎると直感で思った。
「
「子どもの頃に遊んでいた空き地の向こうに築10年くらいの公営団地があったんだよ。」
「その団地には1部屋だけ住んでた人がいたんだ。
それ以外の部屋には誰も住もうとしない。
入居しても翌日には逃げるように引越していった。
みんなが住もうとしない原因はその唯一住んでる人だったんだ。」
「子供ながら私も気になってね。近所のおばさん達の井戸端会議を盗み聞きしていたよ。」
「あの部屋にはね。子どもを攫(さら)ってきては屍体をバラバラにしていたそうなんだよ。それがなんと10年も続けていたんだ。」
俺は気分が悪くなってきた。その部屋に行くつもりなんだと思い俺まで暗くなってきた。
「今も公営団地あるんですか?」
俺は
「実はね。それを確認したいんだよ。」
「僕はね。夕方、外からあの部屋を見てたんだよ。遊びに夢中になって、みんなが帰ってるなんて、一人になって気付いたよ。そしたらね。目が合ったんだよ!」
「あの部屋から私を見てたんだよ。そして、見えたんだよ。」
「何が見えたんですか?」俺が恐る恐る聞いてみた。
「あれは…。」
俺は
俺に何が出来るのか。分からない。
ただ、1秒でも早くあの部屋を見に行かなければ、
途中トイレ休憩でまたコンビニのイートインスペースで水と珈琲を飲んでいる。
早く行かなければ。
「いや〜年取るとね、トイレが近くなっていかん。すまんね。」
「ブブブッ!ブブブッ!」ミアからの電話だった。
「よく、休憩していると分かるな?」俺は今日、霊感を信じている。
「コマンダー、早く逃げたがいいけど。しょうがないわ。」
よく、しょうがないとか日本語が自然に出てくるな。イギリス人なのに。
「いい。私はロンドンだから電話しかできないけど、必ず言う通りにしてね。
状況を説明するわ。一番危ないのはツノが生えてる奴、魔物よ。」
だろうな。俺は思った。ミアが続ける。
「子どもの亡霊、あれは味方よ。助けてくれるわ。」
そうなのか。理由はわからんが。助かる。
「あと、警備のおじさん。あれは、敵よ。絶対背後を取られないで。」
俺は背筋が再び凍った。ゲームじゃ無いんだから、背後とか無理だろ。
ふと振り返ると
俺は悲鳴をあげた。電話を抑えながら「ちょっと待ってください。すぐ電話終わりますから。」
俺は
「とにかく俺はあの部屋に行く。
俺は部屋に行く気満々だった。
「だから〜。その場所に行ったらアウトだって。あの警備員のおじさんの罠…。
プーッ、プーッ、」
突然電話が切れた。振り返ると
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