第3話

(次の日の夜。女の子は疲れた様子で遅い時間に家に帰る)


「あー、ヒロ君。ただいま……え? 遅かったじゃないか、何をしていたんだって? アルバイトだよ」


(ヒロと女の子は会話を続けながら、家の廊下を歩き出す)


「金に困ってるのかって? 困ってる! って程ではないけど、学校行くときは化粧をしていきたいし、もしかしたら誰かと遠出するって話があるかもしれないじゃない?」


「誰かって誰? って。べ、別に良いじゃない。友達とか誰かよ」


「なんのバイトをしてるかって? へぇー……そこが気になるんだ。実はメ・イ・ド・さん! 驚いた?」


「ふふ、その目を見開いた表情、驚いたみたいね。え? いかがわしいバイトじゃないか確かめるために、どんな感じで接客をしているか俺にやってみろって?」


「あはははは、それってやって貰いたいだけでしょ? しょーがないなぁ、じゃあちょっとだけだよ? 先に部屋に戻るから後から来てよ」


(女の子は先に自分の部屋に戻り、ヒロは言われた通り少し待ってから、女の子の部屋へと向かった)


「お帰りなさいませ~、ご主人様~」


(女の子は部屋の入り口に立ち、ヒロが部屋に入ると、笑顔で両手を振り迎える。そして案内するかのように先に部屋の奥へと進むと、両手を座布団へと向けた)


「こちらにお座りくださいませ、ご主人様~」


(ヒロは部屋の奥へと進み、言われた通り座布団へと座る)


「ご主人様は初めてのお帰りになりますね? ご主人様の好きな様にお呼びしますが、何と呼べばいいですか? ……ふんふん、ヒロたんですね~ 可愛いです! じゃあ、お帰りの際は、ヒロたんとお呼びしますね~」


(ヒロは何だか嬉しそうに口を緩め、息を荒くする)


「ふふふ、ヒロたん。興奮するにはまだ早いですよ。では、お食事をお持ちしますので少々お待ちくださいませ」


(女の子はそう言って席を立ち、下の階に下りていってキッチンへと向かう──ヒロの夕食の準備を済ませると、また自分の部屋へと戻って来た)


「お待たせしました、ヒロたん」


(女の子がヒロの夕食をテールに置くと、ヒロは直ぐに食べようとする)


「ちょっと待ってください、ヒロたん。美味しくなる魔法を掛けてから召し上がり下さいませ」


(女の子は指でハートを作ると、胸の前で左右に動かし始める)


「美味しくな~れ、萌え萌えキューン!」


(女の子はそう言いながら、ハートをヒロの夕飯へと突き出す)


「はい! これで美味しくなりましたよ、ヒロたんご主人様! どうぞ召し上がり下さいませ~」


(ヒロはガッツガッツ、夕飯を食べ始め女の子は満足そうにそれを見守る)


「──残さず食べて頂いて嬉しいです、ご主人様。ご満足いただけましたか? ふふ、その表情、ご満足いただけたみたいですね! 嬉しいです」


「……はい? これで終わりですかって? オプションでチェキがありますが、いかがでしょうか?」


「もちろんですか。ヒロたんの表情からそう言っていただけると思いました。本日は、初のお帰りなのでサービスでタダにしておきますね! え、何て良心的な店なんだって? ふふふ、ありがとうございます!」


(女の子は制服のポケットから携帯を取り出すとカメラを起動する)


「は~い。ではご主人様、写真撮影をしますので、私に寄ってください」


(ヒロは女の子の側に行き、自分の顔をピタッと女の子にくっ付ける)


「ふふふ、ご主人様。随分と積極的ですね。照れちゃいます。は~い、そのまま動かないでくださいね。では撮りますよ~」


(女の子は撮れた画像をヒロに見せる)


「はい、撮れましたよご主人様。いかがでしょうか? ……うむ、良く撮れているですか、お褒め頂きありがとうございます」


「ではご主人様、そろそろお出かけの時間となりますが、いかがいたしましょうか? ──お出かけになる。ありがとうございました。またのお帰りお待ちしております」


(女の子はヒロに向かって笑顔で両手を振る。ヒロは立ち上がり帰る素振りをみせたが……直ぐに戻ってきて、座布団に座った)


「こんな感じだよ、ヒロ君。どうだった? ……え、いかがわしくはないけど、本当にこれをやっているのかって? ふふーん、気になる? 気になっちゃう?」


「……ちょっとウザいって? ごめーん。本当の所は違うバイトだよ、人見知りの私がメイドカフェでバイトなんて出来る訳ないじゃん! え? 安心した? へ、へぇ……安心してくれるんだぁ……ありがとう」


「私のメイドカフェはいかがでしたか? ご主人様。ふんふん、楽しめましたか──ん? 私の接待が良かったから、本当のメイドカフェに行きたくなってしまったって? ダメ!」


(女の子が少し強めに否定するから、ヒロはビックリしたような表情を浮かべる)


「え……何でダメかって? そりゃ……ねぇ……とにかく、またやってあげるから、女の子とイチャイチャするような、そういうのに興味持って欲しくないなぁ……ダメ?」


「良いぞって、ありがとう! じゃあ今度は、衣装も用意してあげるね!」


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