空く欄物

エリー.ファー

空く欄物

「もしも、ピアノが弾けたなら」

「ピアノを弾かずに歌にして」

「君に捧げぬことだろう」

「もしも、ピアノで弾けたなら」

「思いのすべてを蔵に入れ」

「鍵をかけて」

「しまうことだろう」

「もしも、ピアノが弾けたなら」


「なんでもかんでも、全部が正しいの」

「絶対、絶対絶対こっちが正しいの」

「正しくないことなんか言ってないの」

「だって、間違ってないんだから正しいの」

「間違いなんて言葉にしないから、正しいの」

「正しいに決まってるの。だって、こっちが正しいんだから、こっちの言うことは正しいの」

「正しいに決まってるの、絶対に正しいに決まってるんだから、正しいの」

「正しそうとかじゃなくて、絶対に正しいんだから、正しいはずなの」

「間違ってるなら間違ってるって言うに決まってるんだから、こっちが間違っていないって言ってるんだから絶対に正しいことを言ってるってことが正しいわけで、絶対に間違ってないから正しいの」

「正しいに決まってるじゃん。だって、正しいんだから」

「正しいことしか言ってないから、正しいです」

「本当に正しいことしか言ってないんだから、まず、正しいってことが前提になって、正しいの二乗だから正しいに決まってるの」

「正しいなら正しいってことだし、正しくないなら正しくないってことだから、これは間違ってないから正しいはずなので、絶対に正しいです。残念でした。だって、正しいようにしてるから正しいのであって、間違ってないから正しいです」

「正しいんだから、いいじゃん。正しいんだから、大正解でしょ」

「正しくないなら、正しくないって言ってよ。こっちだって間違えたくないから聞いてるのに、なんでちゃんと答えないの。冷静に考えて、これは正しいんだから正しいでしょ。正しくないものを、正しいなんて言わないんだから、正しいとして出してるんだから絶対正しいでしょ」

「正しいことを何でそんなに恐れてるの。こっちの意見は最初から全部正しいんだから、正しいに決まってるじゃん。で、それを正しくないいって言ってるんだから、そっちは間違ってるでしょ。正しいか正しくないかも分からなくなっちゃったのは、そっちの問題でしょ。絶対に正しいんだから、間違えてましたごめんなさい、なんて言う気はないよ。だって、正しいんだから。何も間違えてないんだから、こっちは正しいでしょ。ていうことは、こっちは絶対に確実に正しいんだから、そっちは間違ってるってことになるよね。それは、正しいでしょ、間違った意見じゃないでしょ。だから、そっちが間違ってて、こっちが正しいよねって、言ってるのは理解できるよね。ねぇ、正しいことと間違ってることの差も分からなくなっちゃったの。それって、判断がつかないくらい、大きな間違いを心の中に抱えてるってことだよね。それは正しい判断を下せない間違った人間になってるってことだよ。ねぇ、どうするの、間違いを認められる正しい人間になるの。それとも、間違いを正しいと言い切ってしまう間違った人間として生きてくの。ねぇ、どうするの。こっちは確実に間違ってないし、圧倒的に正しいから、そっちが正しくなるのを待つしかないんだけど。ねぇ、ちゃんと間違えずに正しい判断をしてよね。全く」

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