第3話 ザ・カヴン
ザ・カヴンに到着すると、ミズイはそこに集まっていた4人の人たちを確認し始めた。
ほとんどが知らない人たちだったが、その中には見覚えのある者も一人だけいた。そう、ルーグだった。
「……ルーグ?いるのか?」
ミズイはそう言いながらルーグに見える構成員の方に歩み寄る。彼の首には「096」の数字が刻まれていたので、間違いなくルーグだと分かった。
「お前、本当にルーグなのか?」
「……その声はミズイか」
そういう声も完全にルーグのものだったので、ミズイは安心した。
「まさかこんなところで再開できるとはな。記念に一緒に話でもするか?」
「おい待てミズイ。まだお前がどこの隊に所属するか決まってないくせに。あまり馴れ馴れしくするんじゃない」
ルーグがそういったので、ミズイはルーグから離れると少しだけ首を傾げた。
「隊?それって何のことだ?」
「それについては、私から説明しよう」
奥から鹿の角がついた帽子を被った、緑髪で長髪の人物が出てきた。背が高くてほっそりとした姿で、顔も体格も声も、男か女かよくわからない見た目だった。
彼か彼女か、その人物も立場からして能力者ではあるのだろうが、首の部分が隠れていて能力の番号がよくわからない。
「「「スタッグ団長!」」」
周囲の人たちが同調してその人物の方を向き、名前らしきものを叫び出す。ミズイはそれが彼の名前なのか聞いてみる。
「ああ、そうだよ。私はスタッグ。このザ・カヴンの団長だ。これからよろしくね、みんな」
「「「はいっ!」」」
周りの新人たちがスタッグ団長に向かって勢いよくそう叫び、敬礼する。
「それで、これから何をするんですか?」
ルーグがそう言って首を傾げる。
「ああ、そうだね、ルーグくん。まずはそれを説明しておこう。まず、右を向いてご覧」
ミズイたちはそう言われたので、一斉に右を向く。するとそこには少し豪華な椅子に座った、華奢な少女から屈強な男性まで多様な人たちが座っていた。
「君たちはそこにいる5人の隊長たちから順番に指名を受けて、指名されたところに入ってもらう。ちなみに成績上位の隊から決めてもらうよ」
「成績上位の隊?」
「ああ。うちの5つの隊はそれぞれ功績を奪い合うライバル関係にあると言ったら伝わるかな。全部で一番隊から五番隊まであってね。より高い成績を残そうと努力させるためにこのようなシステムになってるのさ」
「なるほど……。ちなみに、今はどの隊が一位でどの隊が最下位なんですか?」
「一番成績がいいのは五番隊だね。そこから一番隊、三番隊、四番隊ときて、一番成績が悪いのは二番隊だよ」
この時、ミズイは二番隊だけには入りたくないと思った。そして、心臓の鼓動が一層早くなる。
「それじゃあ、呼ばれた人から席を立って、呼ばれた人のところに行ってね」
「わかりました!」
「……はぁ」
ミズイが大きく声を上げる一方で、ルーグはため息をつきながらも首を縦に振った。
「まず最初は、五番隊の俺からでいいよね?じゃあ俺は、そこの仮面を被った君……確か、ルーグ・シークライトくんだっけ?君をうちに迎え入れよう」
「ありがとうございます……」
ルーグはそういうと椅子から立ち上がり、五番隊の隊長のところへのそのそと向かう。
(一番隊に受かったっていうのに反応が淡白なやつだな……)とミズイは思った。
「まあ、俺はどこの隊に入っても良かったんで」
その言葉の通り、ルーグは特に嬉しそうには見えなかった。しかし、ミズイが同じ状況に置かれていたら確実に喜んでいたことも考えると、ミズイからすればかなりそっけない対応だな、とも思った。
その後、一番隊隊長、三番隊隊長、四番隊隊長も順番に新しく入れる隊員を決めていった。結果、ミズイは二番隊に配属されることが決まってしまった。
一番成績の悪い隊に入り、どん底スタートということを思い浮かべてしまったので、ミズイは冷や汗をかいていた。
二番隊隊長の縫い目が入った顔の黒づくめの男は、笑った顔でミズイを指名した。
「お前、能力がちょっと面白そうじゃないか。俺もお前が良かったんだ、どうぞ入ってくれ!」
「ほ、本当ですか?」
ミズイは少しだけその言葉に安堵した。どん底スタートなのは変わりないが、自分の能力を望んでくれたことに少しだけ感謝をした。そして、ミズイは二番隊隊長のところに向かった。
「みんな、どこの隊に入るか決まったようだね。それじゃあ、みんな隊長についていって隊の施設に行こうね〜」
「わかりました」「はい」「了解」などそれぞれの言葉が聞こえる。隊長はそれぞれのところに新人を連れていった。
ミズイも二番隊隊長についていき、二番隊のアジトに向かう。
ミズイが瞬きをすると、二番隊の隊長とミズイは別の建物の中に移動していた。ミズイは当然のことながら困惑する。
「これが隊長の能力ですか?」
「ああ、そうだ。俺の能力No.2521は、俺の名前を呼んだやつや俺について書かれた紙の近くに移動できる」
「そんな能力まであるんですね……」
ミズイはそのことについて驚いていた。
「これからよろしくな、ミズイ」
「はい、わかりました!他の人たちは?」
「今は任務に行ってていないな」
「なるほど、じゃあ待っておきます」
こうして、ミズイのザ・カヴンでの生活が始まった。
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作中能力の元ネタになったSCP
SCP-2521 - ●●|●●●●●|●●|●
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2521
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