第2話 仲間探し

ミズイがバイロを倒し、クラガム村を出てから3日が経った。


ミズイは冒険の仲間を探しに、各地を散策し続けていた。


「……今頃ルーグはどうしてるかな。もうあいつには仲間ができたのかな……」


ミズイは立ち止まり、青空を見ながら考える。


「まあ、こんなクヨクヨしてても仕方ないか。どうせ仲間が見つかるか死ぬまでは諦められないしな」


そう言ってミズイは再び足を動かし、近くにいる能力者を探して歩き回る。しばらく南方面に行くと、黒いローブを被り、手袋を身につけた男性と、ワンピースを着たオレンジ髪の少女が目に止まった。


男性の方には「049」、少女の方には「999」という数字が刻まれている。


「あのー、そこの2人とも——」


「おや、なんだい?」


男性の方が振り向いて反応する。


「あのー、俺、今冒険中で……それでSCP能力者の仲間を探してるんです。仲間になってくれますか?」


ミズイがそういうと、その人は立ち止まって少し考えた後、こういった。


「うーん、じゃああっちの方角にある村までついて来れたら考えてあげようか。本当に入れるかどうかはその後に決めよう」


「わかりました」


そういうとその人は遠くにある村の方までゆっくりと歩いていった。さっきまで連れていた少女もそれを追うように歩き始めた。


ミズイは自分の能力を利用し、その村までコソコソと隠れながら高速で移動する。


***


ミズイが村にたどり着くと、その村もやはりSCP能力者の盗賊に襲われていた。能力者の首には「303」の数字が刻まれていた。


「おい、お前ら。オレはSCP能力者のビラトだ。能力者様に逆らったらならどうなるかわかっているか?」


そういってビラトは村人の1人を睨みつける。するとその村人は動けなくなり、ナイフを突きつけられる。ミズイはそれに咄嗟に反応し、石化してビラトを突き飛ばした。しかし、村人に見られていることが原因でその場から動けなくなってしまったので、すぐに石化を解いた。


「あっ、あなたは見ないでください。俺の能力発動の邪魔になるので」


「あ、はい。わかりました……」


そういうとその村人は自分の家に隠れる。これでこの村人も助かり、自分自身も能力を発動できるのでWin-Winと言える。とミズイは思った。


そう思いながらミズイは能力を発動し、体を石に変えた。石になった体はビラトのナイフによる攻撃を簡単に跳ね返してしまった。


「クソッ、ナイフが折れちまった!だが所詮は石になるだけの能力か。防御することしか能のないとんだザコだな」


ビラトはそう言いながら高らかに笑う。しかし、ミズイは心の中で許してはいけない気持ちを抑えられなくなっていた。


ミズイは能力を解除し、ビラトを拘束しようとする。しかし、なぜかその状態でも体が動かなくなっていた。ミズイは思わずその状態に置かれて戸惑うが、声を出せない。


「おっ、驚いてるかぁ〜?これが俺の能力、No.303だ。俺に睨まれたやつは動くことができなくなる。お前の能力はちょっとだけ上司から聞いてるぜ。だから俺の能力がわからなくて油断したなぁ?」


「どっちにしろ動けないのなら……」


ミズイはそう言って再び石の姿に戻る。しかし、ここからどうしようにも両者打つ手がない。


ミズイの方が動いてビラトを攻撃することもできなければ、ビラトは石を砕く体術を持っていないので、ミズイをうかつに攻撃することもできない。


そのまま両者共に緊迫した状況が続いていた。


「クソッ、このままお前を睨みつけ続けるしか方法はないのか……。まあいい、このまま俺のとこの援軍が来ればお前は終わりだ!」


そう言ってビラトは大きな声で笑う。その時に一瞬だけ瞼が完全に眼球へと覆い被さったので、その瞬間を狙ってミズイはビラトを突き飛ばす。


「ぐはぁっ!」と野太い声で叫びながら地面を転がるビラト。しかし次のミズイの攻撃が届く前に体制を立て直してミズイを睨みつけたので、なんとか攻撃を避けることができた。


ビラトはミズイに次のチャンスを与える前にのけぞる。そのまま互いに緊迫して、蛇に睨まれた蛙の如く動けなくなる。


互いに手が出せなくなるような非常に相性の悪い能力であったため、しばらくその場で睨み合いをしていると、突如としてビラトが一瞬硬直し、そのまま地面に倒れ込んだ。


その後ろには、数時間前に出会った「049」のローブ姿の男性の姿があった。


「おめでとう、君は合格だよ。君は君の持つ能力をできる限り駆使して、本当に限界が来るまで戦ってくれた」


「あ、あの……この人は?」


「ああ。その人は私たちが敵対している組織の構成員でね。このまま君たちを放置しても決着がつかないようだから私が能力を使って殺したんだ。大丈夫だよ、君のことは絶対に殺さないから」


ミズイはそれを聞いて少し怖くなった。敵意を感じないとはいえど、この男性は人を一瞬で殺せる能力を持っているのだから。


「それで、俺はこれからどうすればいいんですか?合格って言われはしましたけど特に何をしていいかわからないですし……」


「ちょっとついてくるだけでいい。でも手は繋がないでね。もし私と手を繋いだら君は死んでしまうよ」


ミズイはその能力者の言っていることがわからなかったので、少し首を傾げる。


「ああ、一応説明しておこうか。私の能力No.049は触れただけで人を殺す能力を持つ。でも触れなければ問題はない」


「わかりました」


「触れないように注意しながらついて行きなさい」


ミズイは頷くとそのままついていった。


その途中でミズイはいろいろなことを聞いた。


この人の名前がドクトであることや、この世界ではSCP能力者を受け入れる国と拒絶する国があるということ。また、自分たちが行こうとしている組織の名前は「ザ・カヴン」ということ。


そうして長い距離を歩くと、ドクトはミズイをたくさんの人が集まっている場所に案内した。そこにはあの「999」の少女もいた。


「ようこそザ・カヴンへ。私たちは君を歓迎するよ」


ドクトがそういうとパチパチという拍手が響き渡った。


――――――――――――――――――――――――――


作中能力の元ネタになったSCP

SCP-303 - ドア男

http://scp-jp.wikidot.com/scp-303


SCP-049 - ペスト医師

http://scp-jp.wikidot.com/scp-049


SCP-999 - くすぐりオバケ

http://scp-jp.wikidot.com/scp-999

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