かわいすぎ side 心傑

春。桜がひらひらと舞いながら落ちてくる。

 「束葵、ついてる」

 「へ?」

 パッと俺を見上げる束葵。

 ……かわいすぎ。

 「ほら」

 「あっ、桜の花びら!」

 さっき落ちてきた花びらが、束葵の頭の上にちょうどのっかったのだ。

 「なにかいいことあるかも!」

 そう言って、ふわっと笑うから。

 はぁ……。我慢してんの、ちょっとは考えてくれないかなー。

 こっちは今すぐにでも、そのフニフニの唇を奪ってやりたいって思ってんのにさ。

 絶対気付いてないよな、その様子だと。

 俺は、隣で桜を見て目をキラキラさせている

束葵に目を向ける。

 ………ま、そんな鈍感なとこも含めて好きになったからいいけど。

 「それにしてもさ、よく頑張ったよね、私たち」

 束葵が、再び俺を見てそう言う。

 俺たちは、晴れてそれぞれの第一志望校に合格した。

 この春から、束葵は真冬大学看護学科の、俺は綺聖学園医学部の、一年生となる。

 束葵が、なんで看護学科なのかって? 

 それは、俺も驚いた。しかも、理由が……俺と同じ病院で働きたいから、らしい。

 はぁ……、かわいすぎ。

 「心傑くん、聞いてる?」

 まずい、かんっぜんに自分の世界に行っていた。

 「ごめん、もう一回言ってもらっていい?」

 俺がそう言うと、なぜか顔を赤くする束葵。

 どうしたんだろ。

 「どうかした?、束葵」

 「えっっと……」

 うつむいて、顔が見えないけど、耳まで真っ赤だ。

 風邪でも引いたのだろうか。

 「束葵……?」

 「………たい、なって」

 うん……?

 束葵が、パッと赤い顔を上げる。

 「……そ、その、2人で、どこか行きたいな、って」

 「……っ。なにそれ」

 こっちまで赤くなるんだけど。

 っていうか、もう我慢の限界。

 「束葵、帰ろ」

 「……え?」

 「ちょっと風が出てきたから、帰ろ」

 うそ。こんな街の真ん中で、キスされたくなかったら、おとなしくついてきて。

 俺は、結構傷ついた顔をした束葵の手をにぎった。

 ごめん、束葵。返事は帰ったらするから。

 心の中でそう言って、俺は束葵を連れて家に帰った。


 俺と束葵は、いろいろあって一緒に住んでいる。

 305号室のドアを開けて、中に入る。

 そのいろいろを説明すると長くなるんだけど、平たく言うと俺の母さんの強い、というか半強制的な圧力でこうなった。

 「ご、ごめん、心傑くん。いやだったよね。急にあんなこと言って」

 今まで何も言わなかった束葵が、うつむいて俺の手を振り解いた。

 「ごめん、束葵。ちがう」

 「えっ…?」

 涙のつたった後のあるほおに、手をそえる。

 「嬉しかった。嬉しかったから、我慢、できなくなったんだ」

 「……うん……?」

 首を傾げている束葵。

 うん、絶対わかってないな。

 いいよ、これから教えてあげるから。

 「ちょっとごめん」

 「……へ!?」

 俺は、そっと束葵をお姫様抱っこする。

 「お、おおおおろして……」

 「ふっ、顔真っ赤」

 「っ〜〜」

 束葵は、俺に顔を埋めてしまう。

 あー、結構やばい。

 俺は、リビングのソファーに、束葵をおろして、そっと押し倒した。

 「……み、心傑くん…?」

 「そろそろ我慢の限界。……束葵を充電させて」

 「え、ど、どういう……んっ」

 俺は、束葵に最後まで言わせず、唇を奪う。

 「……んっ…、はぁ、」

 「上手。束葵、次、口開けて」

 ふあっと口を開ける束葵に、俺のなけなしの理性が、ぐらっと揺れる。

 「……っん。……んんっ」

 「……かわい。好き、束葵」

 俺はそう言ってから、また俺のを押し当てる。今度は額に、ほおに、耳に。

 「……っ、ひゃっ…、く、くすぐったい…」

 「ん。ちょっと我慢して」

 そして、首にちゅっと吸い付く。

 「…っ」

 「俺のもの、っていうシルシ」

 ちゃんと、ずっとつけてて。

 一人前になったら、ちゃんと本物をあげるから。

 それまでにどこかへ行っちゃわないように。

 まぁ、離す気は毛頭ないけど。

 こんな綺麗でかわいい桜、離すわけないじゃん。

 ずっと俺とお花見してて。

                  End.

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早咲きの、桜咲く chibi @tommhp

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