波、波、波に見える波よ。あぁ。波。

エリー.ファー

波、波、波に見える波よ。あぁ。波。

 ふざけてしまいたい。

 何もかも捨てて、おふざけをしたい。

 悪ふざけがいい。

 できれば、死人が出るような悪ふざけがいい。

 後に残って、後悔が人を苦しめるような悪意に満ちた悪ふざけがいい。

 誰かの命が簡単に消え去る悪ふざけを楽しみたい。

 もちろん、被害はこちらには来ない。

 一切、来ない。

 こちらは安全圏で、こちら以外はすべて危険な地域。

 最高のエンタメ。

 

 愛している、という言葉を簡単に使いたい。

 使わないよりも、使っている時の方が大事だと思わせたい。

 言葉自体が次から次へと軽薄になっていく感覚を、底なしに思い知らせてやりたい。

 思い知らせる、という言葉が出て来たけれど、別に大した意味などない。

 そう。

 これもまた悪ふざけの延長でしかない。

 きっと、誰かが必死に理解しようとして、見当違いの解釈を叫び散らしながら走りまわるのだろう。 

 最高。

 ずっと、バカにして遊びたい。

 最高。

 これまでも、そして、これからもずっと言い続けて欲しい。

 その度に見つけて、バカにして、何度も何度も刺し殺せる人形として扱いたい。

 血と肉と骨と皮膚と鼻糞と髪の毛と瞼と糞尿と爪を一つつず、音がしなくなるまで刻んで潰したい。

 楽しい解釈を、楽しい考察と、楽しい意見を。

 この耳に入れながら、死ぬまで娯楽として消費したい。

 ギャンブルの価値など、分からない。

 でも。

 これが面白いことは分かる。

 定期的に見つけて、定期的に惨殺して遊ぼう。

 差別して、引き千切ってみせよう。

 皆で、指をさして笑おう。

 最高の笑顔。

 笑顔だけが人を平和にできる。世界を平和にできる。

 皆で見下しあって、最高の笑顔を地球に溢れさせよう。

 スマイルアース。

 にっこり世界平和。


 波の中に言葉がある。

 一つ一つを指さし確認したが、何の価値もなかった。

 波が消える。

 耳を塞いだからだ。


 お願いします。

 助けて下さい。

 どうにかして、私を救って下さい。

 勘違いだったんです。

 本当に私のせいではないのです。

 お願いします。

 何か。

 何かの勘違いでミスが重なってしまった、というだけなのです。

 だって、こんなミス、自分でもどうしてやったのか見当もつかないのです。

 お願いします、どうか、お願いします。本当にお願いします。

 力を貸して下さい。

 だって、色々な人を救ってきたんでしょう。

 だったら、私を救うべきですよね。

 それが、あなたの使命なんだから、私も大事な存在の一人ですよね。

 この波に攫われかけても、あなたは命をかけて救ってくれるんですよね。

 この会話に意味があると思ってるんですか。

 もしかして、ないと思ってるんですか。

 もしかしてなんですけど、あってもなくてもいいものを大事だと思いたい、という全く論理的ではない自分なりの法則を、客観的な正しさを一切証明しないままに押し付けている、ということですか。

 やめた方がいいですよ。

 バカってばれますから。

 いや。

 バカなのは、ばれてるか。

 あ、なんでもないです。

 こっちの話です。

 でも、あれですね。

 本当に、その、黙っていればバカには見えない見た目をしていて羨ましいです。

 ほら、そうやって反論さえしなければ、口からバカが漏れなくて済むわけじゃないですか。

 

 駄目かもしれない。

 溺死する。

 死ぬ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

波、波、波に見える波よ。あぁ。波。 エリー.ファー @eri-far-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ