第2話 吸精鬼誕生
だが、である。このオソロシヤ帝国に、世界で最も反撃に出ていた、アメリカン合衆国にある諜報機関、CIA(中央国家情報局)が、この話を、既にオソロシア帝国に潜り潜り込ませていた女性スパイから、逐一、報告を受理していたのだ。
「CIA長官殿。オソロシア帝国は、究極の人間兵器の吸血鬼を、遺伝子ゲノム編集で作り出しています。私らは、それについて、果たして一体、どのような手段があるのでしょうか?」
「ハハハ、全く、心配いらないよ。既に、我が国一のハンバーガー大学医学部に、研究の依頼済みだよ」
「それは、一体、どのような研究で?」
「なーに、極、簡単だよ。
相手が、男の吸血鬼なら、こちらは、女性の吸精鬼だ。
相手の男性の吸血鬼のアソコに、食らい付いて、舐めて舐めて舐めまわして、相手の体液を飲み尽くして、殺してしまう。こちらも究極の人間兵器なのだよ」
「では、パーデン大統領の了解が必要なのでは?」
「いや、パーデン大統領に聞いても意味が理解出来ないだろう。何しろ、もう相当の高齢だ。ここは、長官であるこの私が、全責任をもって、この計画を遂行する。
モタモタしてなんかしていられない。このアメリカン合衆国に、その吸血鬼が送り込まれる前に、必ず、完成させねばならない。
例え、一匹でも、その吸血鬼が、我が国に侵入すれば、映画『バイオ・ハザード』のようになってしまうであろう……。一刻の猶予も無いのだ」
「アイ、アイ、サー」
こうして、こちらも異常な程のスピードで研究が進んで行ったのである。
「吸精鬼」の誕生実験を、だ。
そして、前から研究されていた生物兵器開発が、このゲノム編集方式により、遂に、完成した。
被験者は、これも、自分が通っていた大学でのピストル乱射事件で、懲役200年の刑を受けた女性が選ばれていた。懲役200年だと、死ぬまで刑務所を出られない。
特筆すべきは、この女性は、若くてもの凄い美人だったと言う事だった。
この女性が、化粧をして、色気を使えば、普通の男なら、まずイチコロだろう。
そこで、その女性囚人のミラ・オースチンと、司法取引を行う事になったのだ。
取引の条件は、現在、ハンバーガー大学医学部で研究中の医学実験に参加する事、さすれば、懲役200年の刑の執行は免除される事。
もう一つの条件は、近い内に、必ず、オソロシア帝国から送り込まれるであろう、吸血鬼男に、敢然と、対峙する事だ。
これにより、全ての、罪は消え、公民権も完全に復活するのである。
しかも、この女性囚人は、知能指数が、何と160以上もある。
彼女が、自分の通う大学で、銃の乱射事件を起こした理由の一つに、回りの学生達が、皆、馬鹿になって見えたと言う、裁判所での弁明記録も残っている。
「要するに、相手のアソコにむしゃぶりついて、吸い殺せばいいって事でしょう?」
「さすがは、IQ160以上の天才さんだ。その通りだよ。この条件を飲んでくれれば、後は、貴方は、もう全てが自由になるのだ。
ただし、我が国の一般国民には、手を出しては駄目だがね。
相手は、あのオソロシア帝国から送り込まれる筈の、吸血鬼男にだけだよ」と、CIA長官が、念を押す。
「フフン、どんな男でも、この私の美貌にかかれば、ひとたまりも無いわ。
OK、その条件を丸呑みよ」
こうして、まず、ハンバーガー大学医学部の特殊研究室の一角で、彼女の遺伝子操作実験が、即、実施された。
①カマキリの遺伝子情報と、②色情狂と診断されたの女性の遺伝子情報と、③タコの遺伝子情報、④自己再生能力の高いオオサンショウウオの遺伝子等を、AIにより人工的に合成し、彼女の遺伝子情報を一部、書き換えるのだ。
だが、ここで、最大の問題は、男性の射出するあの体液のみで、生きられるかである。
これは、輸血の問題とも関連してくるのだが、例えば、輸血により人間は重症時や手術時に生き伸びる事ができる。
しかし、ただ、血液を口から飲むだけだ(経口投与)と、胃液で分解されてしまうため、輸血のような効果が生じ無い事だ。
この問題は、オソロシア帝国での「吸血鬼」作成に当たっても、最大の問題であって、この彼女を「吸精鬼」に遺伝子操作によって作り出しても、男性の体液のみを吸って、どうやって生き伸びるかの問題が、最大の課題として残ったのだ。
この問題は、やはり吸血鬼を生み出したオソロシア帝国でも、全く同じ疑問が、一時、湧き起こり、この、血液のみ、あるいは、体液のみを吸って、どうやって、人間の主たる栄養素にするのか?
例えば、脂質、糖質、タンパク質等や、必須アミノ酸8種類、ビタミン、ミネラル分は、血液のみ、体液のみからでは、全てを抽出し、摂取する事は、医学的には出来ないのである。
しかし、オソロシア帝国で、吸血鬼が完成したとすれば、この問題を既にクリアしている筈だ。
一体、どう言う手段や方法があるのであろう?
しかし、CIAが送り込んだ女性スパイでも、この問題の解決策は、手に入らなかったのである。
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