かすみ草は、カンナが似合う君に感謝を言わされる
昼夜
第1話
キーンコーンカーンコーン
「せんぱーい!帰りましょー!」
終礼の鐘が鳴ると迷いもなく教室に飛び込んできたのは後輩のさくらだ。普通なら驚きそうだけれど、私たちが2年の頃から来ているので慣れてみんな放課後どうしようかなど普通に会話をしている。・・・・・おかしいよね?
「美咲ー!後輩ちゃん来てるよー」
「今から行く」
教室のドアの近くにいた友だちが来ていることを教えてくれた
「さくら、お待たせ。じゃあ行こうか」
「全然待ってないですよ。・・・こういう会話してみたかったんですよね〜。夢が叶いました!」
「随分楽な夢だね。それくらいの夢だったら叶えてあげるからいつでも言いな?」
「先輩カッコよすぎです!私をトキメキ死させる気ですか...!」
そんなにかっこいいことを言ったつもりはなかったんだけど、さくらには格好よく見えたみたいだ。気にしてるわけじゃないけどやっぱり年上だから少しくらいカッコつけたいよね。
「今日はどこにいく?」
「先輩のお家に行ってみたいです!!
・・・女の子らしいかわいい部屋なんだろうな〜」
「気になるような部屋じゃないし掃除してなくて汚いからまた今度ね」
私の部屋は好きな人の写真が大量に貼ってあるわけでもなければ、沢山のぬいぐるみが置いてあるようなファンシーな部屋でもない。
部屋にあるのはパソコンに机、ベッドとそれを囲むたくさんの本が置いてあって女の子らしい部屋とは到底いえない。この子は私らしいというだろうけど、少しは期待に添えるような部屋にしたい。
「え〜、仕方ないですね。じゃあ久しく行ってないですしゲーセンとか行きませんか?」
「ゲーセンかー・・・いいよ。行こうか」
「やった!前は先輩に上手くかわされたので今度こそプリクラ撮りましょうね!」
写真を撮られるのは別に嫌いじゃないけど、さくらがしてくる要求はいつも可愛いものでついイジワルしたくなってしまう。その時の怒ったような困ったようなぷくっと頬を膨らませた表情がとても可愛い。
「・・・クレーンゲームで私よりも先に取れたら一緒に撮られてあげる」
「本当ですか!?絶対ですからね!」
絶対先輩に勝つぞ〜。と実際に跳ねながら言っている。カワイイ。
ゲーセンの場所は学校の近くにある高校生御用達(当社比)のラウ◯ンの中。学校から近いこともあって放課後に遊びに行くことが多いから高頻度で学校の人がいたりする。
「さて、着きましたよ先輩。今日は勝って先輩とラブラブなプリを取って見せます!
じゃあ17時半にここ集合でプレイ回数数えておいてくださいね。」
「わかったよ。先に終わったら連絡してその辺ぷらぷらしてるから終わったら連絡して。じゃあまた後でね」
「わかりました。先輩また後で」
そう言ってさくらはゲーセンの中を進んで行った。
クレーンゲームのコーナーを進み、良さげなものがないか見ながら進んでいく。
勝負に勝つだけならお菓子とか簡単なものがあるけど面白くないし、さくらもそんなつまらないことはしないだろう。とか考えながら進んでいるとさくらが前に好きだと言っていたアニメのぬいぐるみがあった。
「このぬいぐるみでも狙おうかな。・・・まあ、あまりやったことなくて難しいかはよく分からないのだけど」
・・・・結果から言おう
6回でとれてしまった。まさか動画サイトでたまたま見た動画が役に立つとは思わなかった。思ったより早く取れてしまったから流石に暇だ。
ぼーっと隅に置いてあったイスに座っていると迷子らしき女の子が声をあげながら泣いていた。
「どうしたの?」
と暫定迷子の女の子にしゃがんで目線を合わせて話しかける
「ママがいなくなっちゃったの...」
ママがいなくなったと言う女の子にクスッとしてこのくらいの子はまだ自分視点で話すよねと思って笑顔になった。
「いなくなっちゃたのか。じゃあおねえちゃんと一緒にママを探してくれるところに行こっか」
「ほんとに?ママみつかる?」
「うん、見つかるよ。私は美咲って言うんだけどお名前教えてくれる?」
「ひまりだよ」
「ひまりちゃんか、かわいい名前だね。ママを探す旅に出発〜!」
お〜!って手を掲げてみるとひまりちゃんも控えめに手をあげてくれた。かわいい。
握っていた手が後ろで止まって、どうしたのか振り返ってみるとクレーンゲームの方を目をキラキラさせながら見ていた。
「あのうさぎさんが欲しいの?」
「うん。でもママがおかねつかうからダメって言ってたの」
「そっか、じゃあおねえちゃんがとって上げるから任せておいて!」
千円札を崩してプレイしてたから残り400円。つまり4回で取るしかない。
思ったよりアームが弱かったようで1回目はうまく引っかかったと思ったのだが落ちてしまった。2,3回目は引っかからず少し動いただけだった。
「これが最後の1回。これでどうだ!・・・・やった!ひまりちゃんとれたよ!
このうさぎさんはひまりちゃんにあげるね。」
「ほんとに!ありがとうおねえちゃん!」
最高の笑顔で言ってくれた。女の子は笑顔が一番だね
「・・・陽葵!やっと見つかった。大丈夫だった?」
「ママ!このおねえちゃんがねうさぎさんとってくれたの!」
「本当に!良かったわね。・・・見ていてくれてありがとうございました。かかった代金お支払いしますので教えていただいてもよろしいですか?」
「お金はそんなに使ってないので大丈夫ですよ。そんなことよりひまりちゃんが見つかって良かったです」
「そうですか。本当にありがとうございました。陽葵も帰るからお別れの挨拶して。」
「うん。おねえちゃんさようなら!」
「ひまりちゃんもさようなら」
そうやって親子は帰って行った。本当に見つかって良かった。そう思ってスマホを開いて時間を見ると集合時間の17時半を過ぎていた。思ったより時間を使っていたみたいで急いで集合場所に向かうとさくらが待っていた。
「・・・・・先輩遅いです」
「ごめんね、さくら。迷子の子がいて親が来るまで見ててあげてたの。
・・・これ、さくらが好きって言ってたのあげるためにとってきたの。だから機嫌直して?」
待っていてくれていたさくらがいじけてしまっていて、機嫌を取るために頑張っていると・・・
「ぷっ、あははっ!・・大丈夫ですよ、先輩。先輩の面倒見が良くて、ほっとけないところも含めて私は好きになったんですよ。それに、先輩が私のために採ってくれたの嬉しいです。一生大切にします。」
「さくら...本当にごめんね」
「そういうときはありがとうですよ、先輩。・・・・それはそれとして私が勝負に負けちゃいましたけどお詫びとしてプリ、私と撮ってもらいますからね!」
さくらは私が気負ってしまうのを解ってくれているから明るく振る舞ってくれる。
それに私の彼女はかなり強かだったらしい。
「わかったよ、さくら"ありがとう"」
その後に撮ったプリがハートマークが多くなったのはお約束だろう。
「さくら、今日は本当にありがとうね。また明日学校でね」
「はいっまた明日です。美咲先輩!」
かすみ草は、カンナが似合う君に感謝を言わされる 昼夜 @hiruyo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます