第21話 キャサリン〜失敗や間違いは認めたくないもの〜
※怒り狂った視点なので、敢えて支離滅裂な感じにしております。怒ってたら、こんな感じで「あ、あれも。これも」ってなるかなーって。読みにくかったらすみません(保険です)
☆☆☆
ムカつく。
ムカつく。
ちょームカつくんですけど!
「あの脂ぎった爺。絶対断罪してやるんだから」
思わずもれた言葉に、私は慌てて口を閉じて周囲を見渡した。誰かに聞かれでもしたら大変だからだ。なんせ私は今、王都中央にある大聖堂の廊下を歩いているのだ。
ムカつく理由は沢山あるけど、一番はやっぱりあのエリザベス。あいつが戻ってきたせいで、色々と変になってる。
さっきだって、私が教皇の爺に「何でエリザベス様が戻ってきてるんですかぁ?」って聞いたら、あの爺、悪びれもせずに
――流石に王国内の法律にまで口は出せんよ。
だって。バカなの? 聖女を虐めたのよ? 教会としてもっと抗議しなさいよ。
いつも賄賂ばっか貰ってるから、こんな時に役に立たないのよ。
「あー。ムカつ――」
あっぶな。司祭か。取り敢えず微笑んで頭でも下げてりゃいいでしょ。同じ様に頭を下げて通り過ぎた司祭を見送って、私は安堵のため息をついた。
「教会は今は良いわ。どうせそのうち私が掌握するもの」
薄暗い廊下で気持ちを落ち着かせるために、大きく深呼吸をした。
教会が腐ってることなんて、ゲームで知ってたし、そもそも中盤以降のサブクエスト〝腐った教会を浄化せよ〟で私が豚どもを一掃して、新しく作り直すんですもの。今はまだ私のために、その私腹を肥やして貰わないと。
貧乏な組織とか奪っても意味ないし。
だってほら、新しく作り直すのに沢山お金がいるじゃない? 私の部屋は豪華にしないとだし、服も可愛くデザインし直したいし……だから今は私のためにお金集めに頑張って貰うわ。
と言うか、今潰しちゃったら、私も困るもの。悔しいけど、今の私の力じゃこの組織の後ろ盾は必要だもの。でも時が来たら、せめてもの慈悲でサクッと潰してあげるわ。
聖女として独立してしまえば、あんな脂ぎった爺の必要性なんてないしね。
思い出した! あと教会には門番として頑張ってもらわないといけないんだったわ。
教会地下にある、ダンジョンを隠す門番を。
そこはサブクエストと同時期に来られるようになるんだけど、私専用装備の【呪われた杖】が安置されてるのよね。最初は弱い装備なんだけど、終盤に覚える浄化の光を当てると【聖女の杖】になるの。
それこそ私の最強装備。私の光魔法を超絶強化してくれる、対エリザベス専用装備と言っても良いかもしれない。
普通なら中盤以降のイベントだし、門番もなにも、慌てることなんて一つも無いんだけど……
「……戻って来たってことはやっぱり――」
……思わず声がもれてしまった。だってあの時勘づいていたのに、見逃してしまったのだから。
「――あいつも転生者ってことよね」
エリザベスを追い出す時の違和感。黙ったままで、ゲームとは全然違ったあの時の違和感を疑っていれば、エリザベスをもっと上手く処理できていたかも知れないのに。
でも後悔してももう遅い。何てったってエリザベスは戻ってきたんだもの。
そこから導き出されるのは、あいつも転生者ってこと。ラスボスのくせに転生者ってことは、私の最強装備を絶対に狙ってくるはず。だって、あれがあるとヒロインは超絶強化されちゃうから。
だから今は教会には門番として、エリザベスを阻止して貰わないと。
だってあのダンジョン、中盤以降に行けるだけあって、今の私と皆じゃ絶対に太刀打ち出来ないもの。今は全員の能力を早く上げないと。
それにシナリオも。一番近いのは、ダリオのイベントかしら。
今週末に、婚約者候補(ほとんど婚約者だけど)セシリアがダリオに詰め寄るんだっけ。
――ダンジョンも良いですが、もっと目を向けるべき事があるのでは?
みたいな感じで。
ダリオは私のために、世界のために頑張ってるっていうのに。
でもいいの。理解を示さない馬鹿な婚約者に代わって、私がダリオを慰めて距離が少し縮まるから。
ダリオルートの発生イベントなのよね。もう既にダリオ達は私にメロメロだけど、キーイベントは抑えておきたいわ。
私への愛の力が、皆の力にもなるんだし、何より乙女ゲーなのよ? イケメン達とのドキドキを逃すなんて意味わかんない。
イベントもダンジョン帰りに起きる事だし、皆のレベルアップついでに出来るから丁度良いわ。唯一違うのは、シナリオではダリオと護衛騎士達だけの探索だけってこと。ゲームでは夕方に起きるイベントだけど、折角なら私も皆を誘って行って良いわよね。
少しエッセンスを加えて、エリザベスに牽制もしとかないといけないし。
……そう、それが一番よ。
最近セシリアと仲良く話してるし、絶対にこのイベントを潰そうとしてるに違いないわ。
皆の前で私に恥をかかせた仕返しよ。私の方が上だってこと、見せつけてやるわ。そう私のほうが全部上よ。見た目も、頭脳も……それに男だって!
エリザベスの男……今思い出してもムカつく男だったわ。多分あれがシナリオではエリザベスを拾った子爵家の人間なんだろうけど、あんな奴を連れてるとか可哀想すぎるんですけど。(笑)
聞けばただデカいだけで、全然大した事ない男らしいじゃない。
顔は……まあいいのかもしれないけど。貧乏子爵でうだつの上がらない男なんて、エリザベスにはお似合いだわ。
なんだ。考えてみたら、大した相手じゃないじゃない。そう思えば、少しはこのムカつきもマシかしら。
聖女としての立場。
周りにいる男のスペック。
そして、私自身の知識と能力。
どれ一つエリザベスじゃ勝てないものばかりだもの。
「絶対に吠え面かかせてやる」
思わず上がる口角と、軽くなった足取りで大聖堂の中を急ぐことにした。
取り敢えず、ダリオにダンジョンに行くなら連れて行って、て言わないと。確か王都近くのEランクダンジョンのはず。また皆の活躍を見守りながら、打倒エリザベスの計画でも練っておこう。
☆☆☆
「小僧、明日ダンジョンに行くのであろう?」
「だから、夜中に男の部屋に来るな、とだな……」
頭を抱えるランディの眼の前で、エリーが「気にするな」とカラカラと笑っている。気にするのはこちらなんだが、とランディは喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。
ランディは水掛け論よりも、会話を前に転がすことを選択したのだ。
「行く予定だが、どうせ近場のEランクダンジョンだぞ?」
眉を寄せるランディの言う通り、ランディの冒険者ランクではEランクまでしかダンジョンに潜れないのだ。
「馬鹿者。そんな所なぞ時間の無駄じゃろう」
嘲笑めいたエリーの笑顔に、「つってもな」とランディが口を尖らせた。近くに高ランクダンジョンはないし、エリーの転移で飛べたとしても、ダンジョン入口の検問で止められるのがオチだ。
「王都中央にある大聖堂……その地下に、太古の地下神殿が眠っておる、と言えばどうじゃ?」
「おいおいおい。魅力的すぎるワードじゃねーか」
前のめりになるランディに、エリーが「お主なら問題なかろう」と悪い笑顔を浮かべて、そこへたどり着く隠された裏道を話し出すのであった。
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