デート2
「しいちゃん、状況はどう?」
「3階の映画館コーナーで地元の魔法少女と駐在さんが避難してきた人を匿って抵抗しているね」
「犯人の数は18人。うち魔法少女が2人かな。」
「3階に魔法少女1人と4人。1階エントランスに人質多数。それを囲うように13人だね。入口正面に魔法少女がいるね」
どうしようかと思案する。普通の感覚であれば3階の籠城している人達を助けた上で、1階の制圧にとりかかり、外に居る警察と連携するのが良いだろう。しかし...
「私たちは正義の味方じゃないからね~?」
しいちゃんは口角をつり上げながら笑う。
「やっぱり初手1階かな?」
私もしいちゃんと顔を見合わせて笑う。まるで少年時代の悪戯を考えているときのように。
1階まで移動してきた。影から様子を伺う。
入口付近にいる赤髪の魔法少女がイライラしている様子が見て取れる。
「いつまで籠城連中に手を焼いているわけ!?」
犯人グループのリーダーに問いかける。
「これ以上の戦力は動かせねえ。時間は要するがやむを得ないだろうが」
「ちっ」
再び黙って入口を睨みつける。
「うーん。犯人グループも馬鹿じゃないみたいだねぇ」
と言いつつも、ニヤニヤしなが様子を見ているしいちゃん。
「今回は私に任せてくれない?せいちゃん。うまくやるからさ」
「確かに今回はスピードがシビアだからね」
「たまには私も暴れたいし」
「それが本音じゃん...」
「にしし...」
「じゃ、そろそろいこうか」
身体の力を抜いてしいちゃんに身体を明け渡す。自分の意思外で身体が動く。
目のハイライトが落ち、目つきが少々鋭くなる。しいちゃんが身体の主導権を握るとき、こうなるのを最近知った。
これはこれで可愛いんだけれど、ちょっと怖い。
魔法少女の影に入り、タイミングを計る。入口側ではなく、施設側を振り向いた時がそのタイミングだ。
10分後、そのタイミングが訪れた。
ふと魔法少女が後ろを振り向いた。その瞬間、足下の影から一気に飛び出す。
「スッ...」
「えっ...?」
音も無く魔法少女の頭の位置まで到達すると一瞬のうちに鎌を振るった。首から上がスライドし、足下に落ちていく。
それを目で追う間もなく、犯人グループのリーダーの位置まで跳躍する。距離にして25メートルほどだろうか。エントランスから中程のソファが置いてある位置までだ。
「貴様だっ...」
リーダーが声を上げられたのはそこまでだった。しいちゃんの振るった鎌が再び首を落とす。
ボトンという首が落ちる音と共に首から血しぶきが噴き出す。しいちゃんを返り血が染める。相貌も合わせて本当の死神のようで、美しさすら感じてしまう。
ここまでほんの数秒だ。
その場で他の犯人グループの構成員を睥睨する。皆ビビって動けないようだ。
「まだ続ける?相手になるわよ」
鎌を振って付着した血を払う。
2人が小銃をこちらに向け発砲してきたが都度、首を落としていったら残った者は投降した。
犯人グループを鎮圧し、人質達の元へ行く。何人かは怪我をした者がいるようだが、死にそうな者はいない。
皆、私を恐ろしい者を見るかのように怯えている。
「じゃあそこのお兄さんとおじさん。外に出て警察に現状を説明してきて」
チャラそうなお兄さんと真面目そうなおじさんを指名する。
あわてて立ち上がり、そのまま外に走り出して行った。
人質の中から声がした。そちらを向くと主婦だろうか。金切り声をあげてこう言った。
「人質の中には女性や子供もいるんですよ?なぜ彼らから解放したんですか!」
うるさい女だなぁ...こうなるからしっかりと説明出来そうな人選にしたんだけれど...一度シメるか?
「しいちゃん、無抵抗の人に暴力はダメだよ...」
「ちっ...」
仕方ないので、その女を見つめ眼力で黙らせる。なにせこちらは何人もの首を落とした上、目のハイライトが無く血まみれだ。
女の周囲に居た人達が取り押さえ必死に私に謝ってきた。他の人たちはきちんと自分の立場を弁えているじゃないか。
私はニッコリと笑って踵を返す。目は笑っていなかったけれどね。
歩くのに邪魔なので、犯人グループに指示して遺体と首を1カ所に集めさせる。
その作業をニコニコしながら見ていたら皆ビクビクしていた。私が少しでも身体を動かせば更にビクッとなる。
何だかネコみたいで面白いなぁ...
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