報告

 私は執務室のドアをノックする。

「雲越です。報告に来ました」

「入りなさい」

「失礼します」

「緊張しなくて大丈夫よ。底に座って」


 デスク前の応接ソファに腰掛ける


「すぐ来てもらって悪かったわね」

「いえ」

「敬語で話さなくても良いわよ?慣れないでしょ?」

「あ、はいわかりま...わかった」

「徐々に慣れていけば良いから」


 松下さん、松下次長は元魔法少女だ。現場での指揮経験をかわれて魔法省に入った。

 元魔法少女でここまで出世したのはこの人だけだ。


「どうだった?実際に彼女と話してみて」

「えっと...容姿から小学校高学年から中学生くらいだと思うけど、大人の人と話してるような感じだった。

「なるほど...違和感があるわけね」

「名前や魔法少女名も訊いてみたんだけれど、特に答えて貰えなくて死神の魔法少女の話をしたらそれが良いって」

「女の子なら嫌がりそうな名前なのに」

「他には?」

「魔力パターンの話をしようと思ったら答えたくないと言われて、武器を構えられて...」

「こちらが魔力パターンを把握していて、疑問を持っていること分かっているってわけね」

「それ以外は特にないです」

「分かったわ。ありがとう。引き続き彼女との接触任務を続けて頂戴」

「分かりました。失礼します」


 そう言って雲越は退室していった。


「ふぅ...」


 松下は自席に座り一息吐く。


「やはり、一筋縄ではいかないわね...」


 雲越には見せなかった資料を見ながらそう呟く。

 そこには調査報告書 仮称 死神魔法少女についてと記してあった。

 氏名:不明(仮称 死神の魔法少女)

 魔法属性:氷

 杖:両手鎌


 所感

 認識外からの鎌による一撃必殺を得意とする。威力は強大ではないものの、中~遠距離でも氷の魔法を行使可能。移動速度も速く補足が困難。

 魔法省所属の魔法少女には融和的ではあるが、野良の魔法少女に対しては苛烈である。

 一部信憑性の無い情報としつつも、野良の魔法少女のうち融和的な対応をしたのは1割ほどでそれ以外は敵対し、死亡6割、負傷3割、その他となっている。

 負傷も軽傷ではなく回復魔法を行使しても再起不能な者が多かったととの事。

 また、魔力パターンが魔法省所属であった魔法少女、白銀華と95%一致。本人とみて間違いないが、彼女は戦死しており不可解である。


 以下、敵対した場合の想定と続く...


「やはり対話しか無いわね...」


 魔法省に所属するよう誘っても受けてもらえないであろう事は想像に難くない。とはいえ敵対すればこちらが不利だ。1対1で対応できる魔法少女といえば中央即応連隊付きの魔法少女たちだろうか。

 彼女たちは非常に強力な魔法を行使するが、基本的に地方部隊で手に負えないと判断されたときのみ出撃する。私には指揮権は無い。

 このまま上に報告すると排除命令となるだろうから何とか私の権限の範囲内でどうにかしないと...

 松下は頭を悩ませるのであった。

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