接触
日課の深夜散歩をしていたとある日。
「せいちゃん、魔法少女が接近してきてる。準備して」
「わかった」
接近してくる方向へ振り向き、魔法の発動を準備する。私の両脇に氷塊が発生した。
「あ、あの!話をしに来ただけです!攻撃しないでっ!」
緑髪のセーラー服を身につけた少女そう言ってきた。
私は魔法を維持したままだ。
「・・・」
無言のまま対峙する。
「私の事、覚えていますか?」
「・・・誰?」
「誰だっけ...?」
私もしいちゃんも覚えていない。
「谷川岳で助けて貰った魔法少女ですっ!」
「・・・あっ。」
二人して間抜けな声を上げてしまった。
「私、雲越未来と言います」
「あの時は助けていただきありがとうございました」
「別に...貴女のために助けた訳じゃ無い。」
私はそう返す。
「せいちゃん、索敵した方が良いよ。罠かもしれない」
「そうだった」
「サーチ」
薄い魔力の波が私を起点に広がっていく。私はそれを二度繰り返した。
緑髪の魔法少女は一瞬、ビクッってしていたが、何の魔法を行使したか分かったのか黙っている。
「他に魔力反応は無し」
「用心深い...」
「野良の魔法少女たるもの当たり前のことです」
政府所属の魔法少女なら役割分担をするだろうが野良は全部自分で担保しなければならない。だから野良の魔法少女同士でも仲間同士で連携するのが普通だ。
「お礼については分かりました。それ以上用が無いなら帰ります」
TSがバレないようについ丁寧な言い回しなってしまうが、違和感が半端無い。そしてしいちゃんはニヤニヤしている。
「まだ、あります!貴女のことが知りたいんですっ!」
「ちょっとだけなら良いんじゃない?女の子として話す訓練だと思ってさ~」
しいちゃん...他人事だと思って...
「にしし」
「少しだけでしたら...」
「ありがとう!」
花が咲くような笑顔で一瞬ドキっとしてまう。
「せいちゃん、浮気はダメだからね...」
「そう言うのじゃないってば...」
しいちゃんの圧力にたじろいでしまう。決してやましい気持ちは無い。
「貴女の名前を教えて?」
私は首を横に振る。声に出さず、否定するスタイルだ。
「貴女、野良の魔法少女の間では死神の魔法少女なんて呼ばれてるいるんだよ?それで良いの?」
言い得て妙だなと思ってしまう。何せ半分は正解だからだ。
「その名前で呼んでいただけますか?」
「え?わかった。」
不思議そうな顔を雲越さん。そりゃそうだろう。女の子ならもっと可愛らしい名前を好むだろう。
ちなみに魔法少女名を名乗るのは野良の一部魔法少女だけだ。配信等の不特定多数に晒される子が使う。それ以外のローカルで活動する野良の魔法少女は本名だ。
魔法省所属の魔法少女も同様に本名だ。自衛官が広報番組で本名を紹介されている事を考えれば当然だろう。
「えと、貴女の魔法なんですk」
「答えたくありません。」
当然訊かれると思ったので被せるように返答する。魔力には魔力パターンがあり個人毎に違う、指紋のようなものだ。
海外の事例ではあるが、一卵性双生児で姉妹とも魔法少女になった子がいるが、それでも魔力パターン一致率は75%だそうだ。
私の場合、華の魔力なので一致率はそれ以上だろう。魔法省所属だった為、確実に魔力パターンの登録はしている。そうなると当然疑問に思うだろう。
亡くなった魔法少女の同一魔力パターンを有する魔法少女が居るという事に。
私は両手鎌を彼女に向ける。それ以上問えば攻撃するといったように。
「・・・」
頃合いだと思い、私はそのまま離脱する事にした。
「あっ...」
雲越さんの声が聞こえるが私はそのまま影に潜り離脱した。
「当然そうなるよね...」
「次に接触したときは話を聞いて貰えるかな...」
念の為、何カ所か経由してから自宅に戻ってきた。
「せいちゃん、女の子が板についてきたねぇ」
「あのねぇ...」
「にしし、良い事じゃん」
「そうだけどさ...」
「見た目幼い感じなのに敬語で話すのギャップがあって何だかクるものがあるよねぇ~」
しいちゃんにいじられつつ、夜が更けていった。
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