フライドポテト

「せいちゃん~フライドポテトが食べたいよ~」


 しいちゃんのそんな一言でお昼ごはんにNOSバーガーに行く事になった。

 私が食べればしいちゃんにも味覚が共有されるらしい。


「ついでにスーパーに寄って帰ろうか」

「H信?」

「群馬県にH信は無いんだよ。Fレッセイかなー」


 お店に入り、早速注文する。セットで頼むとちょっと量が多い。男の頃は少々物足りないくらいだったので未だに違和感がある。


「ありがとうございましたー」

「おいしかったねー。私。オニポテも好き~」

「あれ癖になるよね」


 しいちゃんとそんな会話をしながらスーパーを目指す。

 すると騒がしい声が聞こえてくる。どうやらそこのコンビニのようだ。

 慌てて店を出るフェイスマスクの男と緑髪の少女が出てくる。少女の方は魔力の反応から魔法少女のようだ。


「世も末だねぇ」


 しいちゃんと同じ感想を抱く。こういった犯罪に野良の魔法少女が荷担するのも珍しくなくなっていた。


「逃げるぞ」

「わかってるわよ!」


 犯人達からそんな声が聞こえるが逃走方向に警察官と魔法省所属の魔法少女がパトカーから降りてくるのが見えた。

 これで一件落着かなと思っていたが、フェイスマスクの男と緑髪の少女は反転し、こっちに走ってきた。


「待ちなさい!」

「無駄な抵抗は止めろ!」


 警察官と魔法省所属の魔法少女からそんな声が聞こえる。


 まずいなと思いながらも、そのまま道端に佇んでいると、案の定人質にされてしまった。


「この娘がどうなってもいいのか?」


 私は拳銃を頭に突きつけられ、首を腕で拘束されてしまった。

 ハーネスベルトにチェック柄のワンピースを着ている緑髪の魔法少女は周囲を警戒しながら結界のようなものを展開していた。



「まぁこうなるよね...魔法少女に変身すれば拳銃くらいじゃ死なないから良いけど...」

「でもせいちゃん、この結界魔法厄介だよ。ある程度の魔法は弾くみたいだよ」


 しいちゃんは私に説明する。とはいえ私には両手鎌があるから関係ないけれど。

 魔法省の魔法少女は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。


「その娘は関係ないわ、解放しなさい!」


 そう魔法省の魔法少女は呼びかけるが、犯人達は呼びかけに応じることは無い。


「どうする?殺っちゃう?やっちゃう?」

「しいちゃん、落ち着いて...私がどうにかするから、大人しくしててね」


 このまましいちゃんに身体の主導権が奪われれば間違いなく犯人達は殺されてしまうだろう。

 うまくやらないと...


「チェンジ」


 頭の中で変身のキーワードを紡ぐ。魔法少女の姿になった私は直ちに行動を起こす。

 あっけにとられているうちに犯人達を無力化しよう。


「フリージング」


 私に突きつけられていた拳銃は直ぐに氷塊の中に埋もれた。

 そのまま両手鎌の柄で男を気絶させる。煌めく銀髪を靡かせ、緑の魔法少女も鎌の柄で無力化させた。

 緑の魔法少女が気絶すると結界も直ぐに解除された。


「速い...」


 魔法省の魔法少女のつぶやきが聞こえる。

 面倒ごとには関わりたくないので、そのまま魔法省の魔法少女に近づく。


「私、殺されそうになったので。これは正当防衛です。では」


 そう言って私は跳躍した。追跡されても面倒なので、死神の権能も使い影に隠れつつ離脱した。

 根掘り葉掘り事情聴取などされれば痛い腹を探られること間違いなしだからだ。


「待ちなさい!」


 後ろから魔法省所属の魔法少女の声が聞こえるが、無視した。


「せいちゃんお疲れ様。うまくやったね」

「しいちゃんにやらせるといろいろ大変だからね...」

「スーパーは日を改めよう」


 今日は大人しく家に帰る事にした。

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