お着替え回
「というわけで、服を買いに行きます」
「ほへ?」
朝食のあんパンをもきゅもきゅ食べていた私は、そうだねと返事をする。
今着ている服は華の昔着ていたお下がりだ。
死神のお仕事やら魔法の確認やらで後回しにしていたのだ。
「ジャコスにいきます」
「そうなの?」
「ここなら田舎でもいろいろ見てまわれるからね。」
準備が出来た私は早速家を出て電車に乗る。ちなみに、髪は黒髪だ。
普通の魔法少女は魔法少女に変身する際に魔力によって髪色が変化する。
私の場合は、元になったしいちゃんの髪が白色でそれはものすごく目立つ。なので平常時に微力の魔力を流し黒髪にしているのだ。
というわけで、着きました。ジャコスモール高崎店。
「私が選んであげるからせいちゃんはじっとしていてね?」
「って、急に身体の制御奪わないでよ、びっくりするでしょ」
「ごめんごめん。あ、この服可愛いからキープしよ」
急に身体の制御が奪われてびっくりしたが、しいちゃんが楽しそうだったので良しとした。
「はい、身体の制御を返すよ。カゴに気になる服を入れたからそこの試着室で見せて?」
「にしし、はやくはやく!」
「しいちゃん楽しんでるね...」
早速試着室に入り、着てみることにした。
「これは...シンプルなブラウスにロングフレアスカート?」
「良いね!良いね!せいちゃん可愛いよ!」
しいちゃんに急かされて鏡の前でくるっと回ってみる。回転によってスカートが広がる。
鏡に映った姿はしいちゃんだが、着ている感覚は自分自身で、ちょっとドキドキした。
「これが、私...?」
「ほらせいちゃんまだ次があるから。これも着てみて?」
「わ、わかった」
次の服を手に取る。えっとこれは...
「しいちゃんこれ、着る方法が分からないんだけれど...」
「えっとこれはね、こうしてこうしてと...」
手取り足取り教えてもらう。
「可愛いよ!せいちゃん!」
一昔前に話題になったワンピーススタイル、俗に言う童貞を殺す服だ。紺のスカートが腰当たりでキュッと締められている。
「せいちゃん、鏡に向かって 私、可愛いって言ってみて!」
「しいちゃん、それ、洗脳のやり方じゃないの...」
「ちっ」
「しいちゃん...」
最後に渡されたのは白ブラウスにホットパンツ、サイハイソックスの組み合わせ。白い肌と相まって絶対領域が眩しい。
「しいちゃん、これちょっとえっちじゃない...?」
「えっちじゃないよ!可愛いよ!グヘヘ」
「しいちゃん、本音が漏れてるよ...」
「でも可愛いよ、しいちゃん」
「せいちゃんも分かってるじゃない」
「じゃ、それ着て帰ろうねー」
「え、恥ずかしいよ...」
「私のせいちゃんの可愛さを見せびらかしちゃおうね...」
しいちゃんに選んで貰った服の会計を済ませお店を出てきた。
周りの人にとても見られている気がする。
「しいちゃん、変じゃない?何だか落ち着かないよ...」
「それだけせいちゃんが魅力的って事だよ。堂々としてなよ」
しいちゃんの可愛さは分かっているので言われたとおりにする。
分かっていてもちょっとぐるぐる目になってきた。
「君、可愛いね?俺たちと遊ばない?」
急に前から声を掛けられる。顔を上げると遊んでいる大学生だろうか。チャラい感じの二人組が立っていた。
「可愛いって私のことですか?」
つい、返事をしてしまう。
「そーそ。その自覚の無い所もそそるねぇ」
油断していると手首を捕まれる。
「許さん。ナンパ男に慈悲は無し」
「ちょっと、しいちゃん!?」
急に身体の制御を奪いにかかるしいちゃん。目のハイライトが落ち、今にも両手鎌を召喚しそうだった。
「ちょっと、やめなさいよ。この娘、嫌がってるじゃない」
その時、後ろから声がかかり、捕まれた手首を振りほどいてくれた。見上げると170cm位だろうか、高身長な黒髪ロング美人さんだった。スーツだったところを見ると社会人だろうか。
そのまま有無を言わさず走り去る。あっけにとらたナンパ男達はそれ以上追って来なかった。
「あなた、大丈夫?」
私に視線を合わせて話しかけてくれる。
「だ、大丈夫です。ありがとうございました。」
ぺこりと頭を下げる。
「....クッ、可愛い...」
何か聞こえた気がした。もしかして、この人もヤバい人なのでは...
「じゃあ、さよなら」
しいちゃんが身体の主導権を奪いに来ないよう、そそくさと逃げる事にした。
「ヤバイ人に絡まれたと思ったら更にヤバい人ってね...怖い怖い。」
もう遊ぶ気分でもないのでそのまま自宅へ帰ることにした。
「グギギ、私のせいちゃんを惑わそうとするな....」
しいちゃんが残念な事になっていた。
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