第6話 葉月のお盆

私は、まだ帰れない。自分の今いるべき場所に。

私は、まだ舞えない。踊れない。自分のやるべきことをするまでは。


あれは、私がまだ小さかったころ。


「母さん!母さん!!!」

兄は、歳上の癖に私より泣いていて、私も悲しかったけど、言葉にするのは切なかった。


そして母さんが亡くなって一度目のお盆だ。親戚全員で集まっていると、死んだ母さんに似た人物が訪問してきた。

「元気、かい」

「……はい。元気ですけど」と私は言った。

「良かった。ちょっと上がってもいいかな」

こくん、と降ると、安心した顔で母さんは上がり、その様子を見て涙を一滴流し、「ああ、皆。元気そうだね」と言って満足げに消えていった。


あれから数十年……。私は、家の前でチャイムを押すと幼い私が出迎えにきた。

「はーい!どちら様ですか?」

「私は、えっと、名前が思い出せないな。……まぁ言っちゃうとね。私は未来の私なんだ」


………そう、それが出会い。一夏で年に一度許された、思いと想いが繋がれる季節、葉月のお盆。

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