作戦

 抜群にかわいいアネは…抜群におバカです。 

 でも、そんなドジっ子ねーちゃんがオレにはドキュンなのです。

 

 もうさ、オレの心を鷲掴みですよ。

 

 なのにオレは…オレという人間は、アネをいつもディスってばかり…。

 

 

 一番バカなのは、やっぱりオレなのかもしれない。

 

 …

 

 ここは、一度本気でアネにぶつかってみようか?

 

 

 …

 

 でも、恥ずかしいな。

 

 …

 

 うん…恥ずかしい…

 

 でもでも‼︎

 このままじゃいけない‼︎

 

 完全にそう思う。

 

 だって…この前偶然くるみの好みのタイプを聞いてしまったのだ。

 

 

 さかのぼること数時間前、くるみは自分の部屋でだれかと電話していたのだ。

 

 おそらくお友達。

 

 そして…

 

 やっぱり優しくて心のイケメンが一番だよね〜と言っていたからだ。

 

 

 オレは…いつもくるみをバカにする発言しかしていない。

 

 だから、いつかくるみがどこぞの人間に心を奪われてしまう前に、オレがくるみの心を鷲掴みしたいのだ。

 

 

 そして絶対に大切にするのだ。

 

 

 というわけで…

 

 

 …

 

 

 とりあえずどうすりゃいいん⁇

 

 

 …

 

 わからない。

 

 まったくと言っていいほどにわからないんですけど⁇

 

 

 リビングのソファで困っていると、部屋からくるみが出てきた。

 

 

 チャンスタイムだ‼︎

 

「おう、くるみ。アイス食べるか?」

 

 …

 

 くるみは、一瞬目を輝かせたけど…でもすぐにスンとした顔をして、

「いい。」

 と断ってきた。

 

「かわいくねー」

 

 オレはまたこんなことを言ってしまっていた。

 

 オレのかわいくねーという言葉を聞いてくるみは、すかさず

「だって僚…いっつもあげるーっていうものは基本辛いか、めっちゃにがいかじゃん」

 というのだ。

 

 …

 

 それはごもっともです。

 正解‼︎

 

 …

 

 でも、今日はほんとになんにもしてなかったんだけどな。

 

 

 

 日頃の行いって…とても大事なんだなと気づきました。

 いまさらですがね…。

 

 

 作戦失敗しましたので、次の作戦を考えましょう。

 

 

 …

 

 次は…

 

 えっとー…

 

 何⁇

 

 わからない…

 

 

 するとそこに兄貴がやってきて、

「あ、くるみかわいい髪型してるじゃん」

 と褒めだした。

 

 

 そしたら、くるみのやつ表情がパァッと明るくなって、

「わかる〜、ありがとう〜」

 と笑顔になった。

 

 

 …

 

 

 なんなんだよ‼︎兄貴…

 

 一瞬にしてくるみを笑顔にしやがって…

 

 

 くるみの髪型がかわいいだと?

 

 髪型どころの騒ぎじゃないだろうに⁇

 

 もうさ、くるみはいつでもどんな髪型でもどんな格好でもかわいいじゃないか‼︎

 

 

 特に寝癖がついてる朝とか、抜群にかわいい‼︎

 

 もう、ギュ〜したいくらいかわいいのだ‼︎

 

 でもやっぱりオレは…兄貴みたいにあっさりとかわいいなんて言えません…。

 

 

 クッ…

 

 このままじゃダメなのに…

 

 

 どうすればいいって言うんだ‼︎

 

 

 …

 

「かわいいー‼︎めっちゃかわいいー‼︎」

 とにかくオレもかわいいがどうしても言いたかったので、猫の動画を見ながらかわいいを連呼したのでありました。

 

 

 …

 

 これじゃ本人に伝わるわけないんだけどね…。

 

 

 食べ物作戦も、かわいい作戦も失敗に終わった。

 

 次は…どんな作戦でいこうか…な。

 

 

 

 

 続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る