自分で魔法をかけていたシンデレラ

@satomi1112

第1話

私の名前はヴィーラント=スズ。伯爵家の長女。最近お父様が再婚して、義母が連れ子を3人も連れて来て、私が邪魔だからって私は伯爵家の敷地内にある塔で暮らしている。腹心の侍女のセスが世話をしてくれるので助かる。彼女がいなかったら…と思うと…考えたくない。


邪魔って何?部屋なら有り余ってるんだけど?嫡子だったけど、義母が連れてきた兄が嫡男になった。お父様は何を考えてるんだろう?

確かに義母は美人だと思う。お父様が見初めただけの事はある。

でも…兄姉達は??な容姿だと正直思う。

加えて義母を含め4人は社交に力を入れているようで…マナーとか教養が足りないらしい。


私は、食事の時にしか顔を合わせることはないけれど、容姿をワザと悪く見せる魔法を自分いかけて、食事をしている。


「ヴィーラントはいつみてもブサイクねー」

くちゃくちゃと音を立てて咀嚼をしながら私に言う。マナー教育しなおした方がいい。

見た目も悪いが、性格も、何もかも悪い。社交で恥をかいてないのだろうか?

この家に泥を塗ることになっていないのだろうか?


お父様は私の本当の姿を知っているが黙っている。

本当に何を考えているのだろう?


「ウント・エラ・エル早く食べてしまいなさい」


うーん、義母はこんな状態でもいいのかなぁ?


お父様は未亡人となっている子爵家の義母と再婚したらしい。けど、その子爵家でこのマナー教育だったんだろうか?本当に子爵家だった?



ある日、王家主催で舞踏会の招待状が我が家に届いた。

参加できるのは、4名。

お父様・義母・エラ・エル が参加するみたい。

何としてでも、我が家に泥を塗るようなことはしないでほしい。


当日、エルが熱を出した。

「仕方ないわね。ヴィーラント、参加しなさい」

私は久しぶりの社交、セスがブチブチと「あの義母たちは…」と、文句を言いながら私は舞踏会の準備をした。

王家主催の舞踏会に変身魔法は失礼だから、魔法を解いた。

セス曰く「年中無休でその姿を拝みたい!」そうです。



「ヴィーラントなんてどう着飾ったってどうせ大したことないわよ!」

「ヴィー…ラン・・・トなの?」

「どうせ変身魔法使ってるんでしょ?不敬ね。解除魔法で元に戻すわ」

無駄よ。元がコレだから。その証拠にお父様は動じない。

「え?私の解除魔法が通用しない?」

「大丈夫よ、入り口の解除魔法に引っかかって元に戻るから」

「そうよね」



私達はそのまま馬車で王宮まで行った。

当たり前だが、入り口もスルー。

「どんだけ強い変身魔法かけてるのよ!」

「エラが怒り出した」

「ヴィーラントは元々こんなだ」

ついにお父様が口を開いた。



舞踏会がスタート。

私は多くの貴公子に囲まれた。

「是非、私と一曲踊っていただけませんか?」

「いや、私と一曲」

と、争奪戦状態になった。


それを見ているエラの所に貴族は誰もいない。

「何でよ?着飾ってるのに!」

「おそらく滲み出る教養のなさとか所作の感じだろうね」

「お父様までひどい!」



一方私の元には、この国の王太子が「一曲踊っていただけませんか?」とのお誘いが。

「王太子様のお誘いは無下にはできませんわ」

と、私は誘いに乗った。

私達は煌めくようなダンスホールで目立った。

それというのも、王太子様の容姿は他の貴族とはケタ違いに美しかった。黒髪を後ろに撫でつけ、深海を思わせるような青い瞳。がっしりとした体形。身長も高いが脚も長い。

私は銀髪で緑の瞳。セスが全力で選んだドレスは完璧だった。デコルテが見えて、妖艶さはあるが、決して下品ではない。


「君に何か望みはないかい?」と、王太子に問われた。

「そうですね、義母の前歴が気になります。本当に子爵家令嬢だったんでしょうか?」

私達は踊りながらもそのような話をしている。

「義母たちは社交に力を入れていますが、マナーが悪いんです。私の伯爵家に泥を塗らないか心配で…」

「あなたにそんな顔は似合わない」

そう言うと、王太子は私をリフトした。

「重くないですか?」

「羽のように軽い」

「では、前歴のお返事をお待ちしています」

そう言うと、私は舞踏会から伯爵家に帰った。



「おかえりなさい、お嬢様♡」

「迎えてくれるのはセスだけよ。王太子様に義母様の前歴を調べてもらうように依頼したわ。おかしいのよ、食事のマナーなんて最悪よ?食べ物を口に入れながら話しかけてくるの。完全なるマナー教育不足よ。これで社交してます~っておかしくない?」

「そうですね。すぐにマナーが悪いって評判になるでしょうね」

「その社交のためにドレスやら宝飾品やらを買ってるのよ?加えて嫡男になった義兄。領地経営の勉強してるのを見たことないわ。このままじゃ領民が…」

「お嬢様の判断は正しいと思います。旦那様は奥様の言葉だけで婚姻したのでは?本当に子爵家だったのかわかりませんね」

「そうなのよ!だから王太子殿下に望みはないか?って聞かれたから、前歴を知りたいって頼んだの。わかったら、知らせてくれるはずよ、証拠と共に」

(憐れ、王太子様。本当はお嬢様に‘王太子妃になりたいです’って言って欲しかったんだろうなぁ)



翌日から私は変身魔法を使って食事に行くのを止めた。

「おはようございます。お父様、お義母様、お義兄様、お義姉さま達」

素の私を見るのが初めての義兄とエルは言葉を失った。

「ああ、ヴィーラントも座りなさい。そうだ、ヴィーラント。王太子殿下から手紙だ」

王太子殿下、仕事が速いです。


【伯爵家の後妻となった女は、元は平民だ。所作がそれなりなのは娼館にいたからだ。】


「お父様、王太子殿下からの手紙をどうぞ」


お父様には衝撃的だったようです。私には「やっぱりね」という感想なんだけど。手紙には義母が働いていた娼館の名前など、詳しく載っていた。


「お父様、どうしますか?」


「私の判断ミスの責任もあるからなぁ。裁判…がいいかなぁ?」



裁判の日


義母を始め4人はどうして自分たちは裁判所に被告として呼び出されているのか分からなかった。

裁判所では原告側に私とお父様、被告側に義母と残り3人がいた。


「被告は自分が平民であるにも関わらず、子爵令嬢であると偽り、そこのスズ伯爵と婚姻。さらに社交していると偽り、伯爵よりドレス・宝飾品などを購入するためのお金を要求しました。

さらには自分の子供を伯爵家の嫡男にするように要求。娘たちも‘伯爵家’ということをブランド化し、低位でも貴族に嫁がせようと画策。

異論はあるか?」


‘伯爵家’にブランドがあるわけじゃなくて、‘伯爵家’としての教育を受けたことに対してのブランドね。そこを間違えてるから、あんなに不作法だったのよ。


「平民だった証拠はあるの?」


「働いていた娼館の名前を知っているが、逆に子爵家というのはどこの子爵家だ?」


「……」


「はぁ、社交をしていると偽り、金品を購入するためのお金を要求したことについては?」

裁判長も呆れてしまう。


「ちゃんと社交していたわよ!」


「証拠は?同時に茶会などに出席していた令嬢など知り合いがいるはずだが?」


「……」

まじで?社交はしてると思ってた。ああでもマナーが悪いからなぁ。


「伯爵家の嫡男にするように要求したことについては?」


「それは、長男が継ぐものでしょう?当然じゃない?」


「貴族の世界では長男がどうとかよりも血筋・血統が時としてものをいうのです。この場合、

仮にあなたが子爵令嬢だったとしても、血筋の点から嫡子は交代しないものですね」


「以上のことより、被告4人には原告に要求して得た金額と同等の金額、いえ迷惑料も含め、その金額の1.2倍を原告に支払う事。及び数々の嘘を平民であるあなた達が伯爵という貴族に吐いたという事を考え、あなた達4人は終生鉱山夫として働くことを命じます」


「私の判断ミスもあるからなぁ。そこは反省点だよなぁ。大規模プロジェクトでやらかさなくてよかった」


貴族に憧れた平民かぁ。憧れているわりにツメが甘かったわね。色々貴族としての振る舞いとかおざなりだったし。殿下にお礼の手紙でも書こう。


殿下からまた手紙が来た。

【そんなものはいいから、私と結婚してほしい。直接言いたかったんだが、今度はいつ会えるのか分からなかったので、手紙という手段になってしまった】


「お父様、殿下から求婚のお手紙を頂きました」


「急ぎ、OKという返事を送るんだ。伯爵家に破格の手紙が…」

お父様が倒れてしまった。


殿下に求婚を受けますという内容の手紙を送った。

内容は、うちは伯爵家だけどいいのかなぁ?ワガママだけど、妻はひとりじゃないと嫌よ。


なので、私は男2女2を産んだ。今も妊娠中のラブラブカップルです!



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