青い日記

夜長月① in 2024

9/1　お題「風船」

隅っこで置き去りにした凋落（ちょうらく）の風船　然らば犬だったもの

9/2　お題「キャンプ」

灰被ぎ　澄んだ野風に翻す煙塵眺める社会人かな

9/3　お題「虹」

ムーンボウ　必ず此処で落ち合うと決めた彼等へ雨の花水

9/4　お題「夕焼け」

夕景が刻一刻と躙り寄るメランコリーとノスタルジーと

9/5　お題「花束」

クランクアップ　熱演の花束がねぎらう矛盾だらけの自分

9/6　お題「傘」

土砂降りの彩度が欠けた街も好くどうせ濡れるのなら遅足で

9/7　お題「海辺」

暁日の吃水線もなく延びる片道　海辺まで射付ける

9/8　お題「森」

森閑とした夢に始まる小径抜けられず木漏れ日を彷徨う

8/9　お題「果実」

枝撓うほど熟む果実値付けされ　幸せとは是如何なるものぞ

9/10　お題　「飛行機」

飛行機にざわめいた積み藁の群れ　錆びたブランコ　旅立ちの朝

9/11　お題「月」

「月が綺麗ですね」と「我君を愛す」等しく見做す再現性

9/12　お題「肉」

肉と骨其れから血さえ在れば良い　魂なんぞ診ては呉れない

9/13　お題「砂」

砂時計ひっくり返す焦っても変わらないからひっくり返す

9/14　お題「日差し」

うすらびにやっと寝伸びし何時かのサスペンス劇場と暇文（いとまぶみ）

9/15　お題「畳」

新宅の藺草が香る一角に煎餅布団　亡母の写真

9/16　お題「木陰」

白日の縁に残照（ざんしょう）世離れた木暗（こぐれ）に一人静かな男

9/17　お題「鳥」

鳥雲の右端に連れる逸れ者なり　ご破算で願いましては

9/18　お題「流れ星」

ベッド上散ち乱れるラメの遺灰　流れ星ってデブリの逢い引き

9/19　お題「カフェイン」

カフェインは背徳感が薄いからおくすり過剰投与しちゃえよ

9/20　お題「松明」

送葬の炎たなびく行列は彼女にとって最後の祭

9/21　お題「風鈴」

風鈴の外見（そとみ）をも盗られかねない質量の予感が広戸風

9/22　お題「マンション」

マンションは無音の響く小説　斎（いわ）ったり嘆いたり殺したり

9/23　お題「霧」

秋霧や　苦い思い出と少しずつ向き合いたいの　パフと遊ぼう

9/24　お題「酒」

飲めや騒げや天国に飛べぬ下戸　重力強めのソフトドリンク

9/25　お題「草むら」

叢を跳び廻る蝗虫（バッタ）の群れよ　迷わず真っ直ぐ家に帰れよ

9/26　お題「みかん」

ばらばらのみかんの皮へティッシュ乗せ　ゴミ箱までが遠い歳寒（さいかん）

9/27　お題「日の出」

たぶん君の彼女になれるのに　彼誰時（かわたれどき）が絶えず美しくて

9/28　お題「水車」

水車からちょろちょろ畦へ溢れては打たせ湯を覚える赤蛙

9/29　お題「道」

帰り道あざといとはと反省し歩きスマホより軸がゆらゆら

9/30　お題「街角」

雑鬧（ざっとう）の街角よけて幽径（ゆうけい）に大縄跳びのタイミングかな