紅染月③ in2024

初めて自分が嗤われた日 あれ、呼吸って、どうやってし、てた、っけ


マートルの迷路彷徨う白昼夢 僕はている君を視ている


ぺたんこのパンプス いくつ落としたら私を尋ね出してくれるの?


保体にも生指せいしにもまず揺るがない君が髪結い筆を執るとき


濡れそぼつハート吊り干し一昨日の乾いたそれに替え出勤し


君と僕 頭の中を覗いたら似通っていて だから嫌いだ


向日葵より茎辿る虫を見入る怪訝な顔も愛おしい君


神様は救いたい人だけ掬いあとは蒸発を待つのみの身


幸せは必ず終わる 君は私の元を発つ だから残すの


「避ける」「急く」「迷う」「意地張る」 主観と鼓動が行き交う横断歩道


悪友よ 覚えているかスペードのエース またゲームが始まるぞ


笹食みし隣るパンダの展示場 跟随こんずいながむ茶飯事の午下ごか


愛欲を嫌悪せずにはいられない 生命ならざる過去を打ち消し


七彩の泥を被った伊達姿 義勇ととるか 頑愚ととるか


朝までに痕跡は消す まだ生きているかのように処理する仕事


どんな時も遂行を祝い蹉跌さてつを許すと皆で誓ったから


ポンペイのように発掘されようか 埋もれた多々の苦厄と偽善


車窓から食み出す海を在郷とする横顔の淋しいこと


温めたトキメキの孵化待ちながら鳥籠から出られない長女


改悛のごとく俯き姿勢よく鼻血が止まるまで保健室


西瓜割食べられもせず叩かれる罅ぜた果肉を捨てる仕舞湯


軽やかな晴れ空と洗車する父 赴任が終わる母を迎えに


錆びついたはずの前非を繰り返す 綺麗な華が散ると知っても


質量と価額は比例しないもの これだけ貯めて千二百円


番替わり珊瑚に潜む隈魚は社宅に帰る労務者かな


生温く皮膚へと戦ぐ壊れもの 差し油を探すか耐えるか


無添加の健康色したジェラートのような青春じゃつまらない


アルプスの麓を護る杉林色は私のことよフェリシモ


拗らせた彽徊趣味と嘲けたい窓外に忍ぶブルーカラー


物売りの歌声響く旧市街 コーチのバッグ二千円也


鯱張しゃちほこばるドラムビートが導く駈歩かけあし気味のディープパープル


老眼の青少年は読み耽る 蔵匿中のフィフティ・シェイズ


理不尽を受け入れるほど強くない もちろん俺らは抵抗するで?


嫋やかな水着が似合う美人へと変貌遂げる夢醒ます蝉


白うさぎさえ女王様に歯向かう此処は不義理の国だよアリス

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2024年10月10日 19:00
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青い日記 青女 @Dachshundoku

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