第31話
「えっと、しゃ、社長、」
私は戸惑いながらも、社長の温かさに包まれて嬉しかった。
というか、どうしてこんなことに。
「帰ってきて良かった…」
社長の声が優しく響いた。
「え?」
私は驚きと共に、社長の顔を見上げた。
「どこ行ってたの。急にいなくなったから心配したんだから」
社長の声は優しく、心配そうだった。
「す、すみません…スーパーに買い出しに行ってただけで…」
私は小さな声で答えた。
社長の胸に顔を埋めながら、心の中で感謝と申し訳なさが入り混じっていた。
こんな焦ってる社長初めて見た。
「無事で良かった」
社長は少し安心したように言った。
その言葉に、私は少しだけ安心感を覚えた。
「夕食を作ろうと思って…」
私は恥ずかしそうに言った。
社長のために何かしたかった。
「ありがとう。でも無理しないで、体調が大事だから」
そう言って、社長は優しく微笑んだ。
「はい、ありがとうございます」
私は感謝の気持ちを込めて答えた。
社長の優しさに触れて、心が温かくなった。
って、ちょっと待って。
社長が優しくしてくれるから、自分が璦だって錯覚してた。
私は由莉で璦じゃないのに。
なんでこんなに優しいの。
前までは璦の姉だから優しくしてくれてるのだと思ってたけど、何かがおかしい。
「由莉?」
社長の声が私の思考を遮った。
「は、はい」
私は慌てて返事をした。
社長はいつから私のことを名前で呼ぶようになったんだっけ、心の中で疑問が湧き上がる。
「大丈夫か?やっぱりまだ体調悪いんじゃ、」
社長は心配そうに尋ねた。
「い、いえ。考え事をしていただけなので、」
私は微笑んで答えたが、心の中は混乱していた。
「そうか」
社長は納得したように頷いた。
前はもっと冷たかったはずなのに、
社長はいつから私のことをこんなに愛おしそうに見るようになったんだっけ…
あぁ、そっか。
きっと、社長は私の事を璦だと思って接してるんた。
璦の姉として優しくするんじゃなくて、璦として優しくしてる。
顔がそっくりだから傍に置いておきたくなったんだろう。
私は、璦じゃないのに。
心の中でその思いが渦巻き、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。
社長の優しさが嬉しい反面、自分が璦の代わりにされているのではないかという不安が募った。
「夕食食べたら映画でも…って、、映画が好きなのは璦だったか、悪い。忘れて」
社長は少し困ったように言った。
「はい、」
私は小さく答えた。
これで確信に変わった。
社長は私のことを璦だと思って接してる。
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