第19話

「今帰ってきたの?もしかして…朝帰り?」


はぁ。一番会いたくなかったのに


「璦…」


玄関でばったり会ってしまった。


どうしてこうも会いたくない時に会ってしまうのだろうか。


まぁ、会いたい時なんてないんだけど。


「すごい。早速男できたんだ。さすが由莉」


相変わらず嫌味ったらしい


「別にそういうんじゃない」


社長の家に泊まってたなんて言えない。


今も関わりを持っていると知ったら、どうせ…

一ヶ月も待ちたくないなんて言い出すから。


「誰かなぁ。私の知ってる人?」


私が社長以外の人を好きになったら、今度はその人を狙うんだろう。


「璦には関係ない」


一体、いつまで私に関心を持って生きていくの?


いつかの日に言われたことがあった。


あなたが不幸なら私は幸せだと。


その為には、どんな事をしてでも、どんな手を使ってでも、あなたを不幸にすると。


「教えてくれないんだ。ま、良いけど。あ、そうだ。社長は私が支えるから心配しないでね?」


支える…?あんたが?


笑わせないで


「甘やかされて育ってきたあんたに何が出来るっていうの?」


璦に社長を支えることなんて出来ない。


「ふふ、確かに。由莉はお父様に嫌われてたもんね。私は、ただ社長を手に入れたいだけ。イケメンの隣にいるだけで私の価値も上がるから」


価値…?

社長を利用するつもり?


「あんたなんかに…!っ、」


あんたなんかに社長は渡さない

そう言おうとした時、電話がなった。


蓮だ。


「出れば?」


「もしもし蓮?」


わざと蓮の名前を呼ぶと、その言葉に璦が反応した。


「迷惑かけてごめんね。今ちょっと立て込んでるから、詳しい話はまた後で」


璦の前で社長の話はしたくない。


それに璦には勘違いしていて欲しい。


相手は蓮だと。


今まで、蓮の家にいたのだと。


私ばっかりムカつくのはごめんだ。


「…もしかして、蓮の家にいたの」


ごめん蓮。

そういう事にしといて。


「だったら何?」


やられっぱなしは嫌だから。


「あんた、社長のことが好きなくせにっ…!」


やっぱり…私が社長のことを好きと知って、わざと引き離そうとしたんだ。


璦こそ、まだ蓮のことを好きなくせに、社長の婚約者になろうとしてる。


「あなたこそ、婚約者ができるって言うのに、いつまでも蓮に縋るのはやめなさいよ。みっともない」


「何ですって…!」


はは。

悔しそうな顔。


「朝からキイキイ煩いなぁ。これだから人に甘えるしか取り柄のない奴は…」


まだ何か言っているけど相手をしてやる気力も体力もない。



無視をして自分の部屋に向かった。

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