第7話


「…お前に名前で呼ばれる筋合いない」


「どうしてそんなに冷たいの?…由莉には優しいのに」


「は、お前まだ由莉の事『蓮、送ってくれてありがとう。』」



璦はあの日からずっと、私を姉だと思ってないみたい。私だって、こんな子が妹だと認めたくないけど。


「えぇ、もう帰っちゃうの?」

そんな可愛い声出したって無駄なのに。


「今日の借りはまたどこかで返すからね」


「何言ってんの。そんなの気にしなくていいから。じゃあもう行くよ。まだ話してたかったけど、会いたくない奴が来たから」


「えぇ、もしかして会いたくない奴って私のこと?」


「お前以外誰がいるんだよ」


蓮が、ここまで璦のことを嫌いなのは私が原因。


「もしかして、あの時のことまだ『由莉、また明日。おやすみ』」


「おやすみ。気をつけて帰ってね」

「あぁ。由莉もお大事に」


蓮の姿が見えなくなるまでお見送りした。その間、璦は家に入らずに、ずっと蓮の姿を目で追っていた。


彼氏が出来ても、蓮にどれだけ冷たくあしらわれても、この子はずっと蓮の事を想ってる。


「蓮の気持ちに応えられないくせに、未だに付きまとってるんだね」


付きまとってるのはあなたの方でしょ。


「否定しても無駄だろうけど、あなたにとやかく言われる筋合いわない。それにあなたこそ彼氏がいるんだから蓮の事、目で追ったりしない方がいいよ。好きだってバレバレ。嫌われてるんだから大人しくしていればいいものを..わざわざ絡んで、余計嫌われようとするんだから」


私だってこれぐらい言い返せる。まぁ、お父様に告げ口されたら謝らされるんだけど。黙って耐えるよりはマシ。


「何ですって…」

「疲れてるの。話があるなら後にして貰える?」

「私だって!あんたとなんて話したくないわよ!」


相手になんてしてあげない

「はいはい」


「昔は私の言うことに黙って従っていたのに。今も黙って従っていればいいのよ!」


「貴方のおかげで、あの日から変わったのよ」



妹だからって優しくなんてしてあげない。


あんな事されて、大人しく言うこと聞くほど私も優しくない。




───────


「ちゃんと来れたじゃん」

ほんとに迎えに行こうかと思ったよって、


「私の事なんだと思ってるの」

「子供」

「子供って…私達同い年でしょ?」


それに、私からしたら蓮の方が子供っぽいよ


「まぁまぁ、細かいことは気にせずに」


「ふっ、何それ…というか私より早いなんてめずら…」


あ、昨日、私が倒れたせいだ。


「そんな顔しないで」

「ごめん。私のせいで、」


「由莉のせいじゃないよ。俺の仕事が遅いだけだから」


なんて笑ってくれるけど、何十年も一緒にいるから分かる。


「…」


この顔は嘘ついてる。


「でも、元気になってくれて良かった」


そんな顔…


「あ、りがとう、」


時々、蓮がまだ私のことを好きなんじゃないかなって思う時がある。


だけど蓮はあの日から私に、口に出して好きだと言わなくなったから、私は気づかないふりをする。




その方がきっと、私にとっても蓮にとっても幸せだから。

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