第4話


今日は社長と2回目のデート


「今日はどこに?」

「見たい映画があるんだよね」


「まさか、私を映画館に連れていこうとしてるんじゃないでしょうね」


「映画は嫌い?」


この前言ったじゃない…なのにどうして…


この性格で素直に私、暗所恐怖症だから。なんて言えるわけもないし…


「…人が多い所はどこでも嫌いよ」


「ふふ、」

「…何がおかしいの」


「そう言うと思った」

「なら、」

「大丈夫。璦でも楽しめると思うよ?」


そんなの、楽しめるわけないじゃないですか、、


映画館には行けないってこの前言ったのに…理由だって知っているのに、どうして映画館に連れて行こうとするんですか、、



――――



「璦が何を好きなのか聞きたくて」

「へ、」

そのためにわざわざ…


「知りたくても教えてくれないから、姉であるお前なら知ってるだろうと思って、」


璦の好きな物…


キラキラして可愛いもの、洋服、ぬいぐるみ、


だけど、今は私が璦だ。叶わなくても、私の好きなものを知ってて欲しい。


「知ってます」

「教えて」


「小説に、ドラマ、映画。ホラー以外なら何でも見ると思います。あと、絵画を鑑賞すること。自分で何かを作ることも好きです」


「分かった。ありがとう」


映画にでも誘ってみるか…なんて、私の…いや、璦の為に一生懸命計画を立ててくれてる。

「映画館で映画を見るのが璦の夢でした」


この夢が叶う日は来ないだろうけど。


「…一度も行ったことがないのか?」

「はい」


「何で、」

不思議に思って当然だよね。


「暗所恐怖症なんです」


「暗所恐怖症…」

「暗いところにいると発作が起きて、過呼吸になってしまうので、映画館で映画を見たことがありません」


「…」


今の私なら、素直な気持ちを社長に伝えても許されるよね。


「璦は素直じゃないので、冷たい事を言ったりするかもしれませんが、口を開けば社長の話ばかりしています。きっと、社長のことが大好きなんだと思います。なので、社長と一緒ならどこで何をしても、すごく嬉しいと思いますよ」


高級レストランで食事をしなくたって、浜辺で2人並んで座っているだけでも、会話をしなくたって横にいられるだけで幸せなんだから。


「…参考にする」



そう言ったのにどうして…



「恋愛映画は好き?」

「別に、ホラー以外なら何でも」


「そっか。なら良かった。入ろっか」


映画館の中ってこんな感じなんだ…

へー、ドラマで見たことあるけど、スクリーンってこんなに大きいんだ。家で見るより映画館で見る方が迫力ありそう。


「…ふふ」

「何」

「いや、表情がコロコロ変わって可愛いなぁって」


危ない。素の私になってた。


「ど、どうでもいいけど。全然人がいないじゃない。人気ないんじゃないの」


「あぁ、貸切にしたからね」


い、今なんて、


「貸切…?」


「うん。璦の事だからきっと人多いの嫌がるだろうなぁって思って」

「どうしてそこまで、」


「どうしてって…璦とデートできるならこれぐらい喜んでするよ」


「…」


ほんと、璦は愛されてるなぁ。


「これなら映画、嫌な理由ないでしょ?」


「…」


「そろそろ始まるよ」


ここまでしてくれたのに、今更…見れないなんて言えない。


真っ暗になるわけじゃないし、多少明るいだろうから大丈夫…だよね。無理だったら、抜け出せばいいだけだし…うん。大丈夫大丈夫…。


っ、暗くなり始め…あれ、

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