男物の制服ないから女装する羽目になった

@satomi1112

第1話

「きゃー!」

「ちょっと押さないでよ!見えないじゃない!」

「ああん、今日も素敵!」

黄色い声援の中を俺は学園に進む。…この格好でなければ。


ここケネス帝国国立騎士養成学校は元々は完全なる男子校。

しかし、近年少子化により共学化。果ては男子が極端に少なくなり(ほぼ絶滅危惧種)、俺は女装してこの学校に通うこととなった。今は最上級生。今年で卒業。卒業後は準騎士かなぁ?はやく一人前の騎士になりたい…。

俺の名は。ジェニファー=ルイス侯爵令息だけど、女装してるから今は令嬢?

女子高ってこんななのか?

男っぽい女がやたらとモテる。女だぞ?


制服だって最近は肩幅が出てきたから、肩回りがピチピチだ。

胸がピチピチの女子もいる。

俺の家の侍女曰く、「ジェニファー様は胸が足りない分胸筋+パッドで誤魔化します。貧乳設定にすればいいのです。」だそうだ。

出てきた肩幅はどうするんだろう?


「ジェニファー様は体形も男らしくって髪型もショートでしょう?サッパリしていて素敵よね」

と、この学校での評価。

制服効果ってスゴイと思う。



そんな俺が校外で私服で歩いていると、「うわっやば。同じ学校の女じゃん」と思うが、「何あの男?私見て身構えてんの?別にとって食わないっての。自意識過剰も恥ずかしくない?」等というのだ。


そうそう、ケネス帝国では男が絶滅危惧種なので、強制的に体液を採取され、体外受精され、国民が国に管理されている。近親相姦にならないように。

皇帝とて例外ではない。この中に皇帝の娘がいても不思議じゃないのだ。



ケネス帝国国立騎士養成学校なので、俺は騎士(正騎士)を目指している。

俺の学術…成績はまぁ中間かなぁ?

ただ、体育のかわりとなる騎士の剣術の授業となると、俺に敵うものはいない。当たり前なんだけど。体力で女子は男子に敵わないから。

「ジェニファー様、素敵―」「剣術の授業、私も選択すればよかった」

などの声が聞こえる。



男性を国が管理しているので俺が女装して国立騎士養成学校に通っていることは国も知っている。公然の秘密というのか?


どうやら、魔物が大挙してきているらしい。俺は剣術の授業でも負けなしなので、討伐に借りだされた。


「ジェニファー、なんだよ。その格好!超笑えるんだけど?」

「俺の腹筋を破壊する気なのか?」

など、討伐に参加する騎士達に俺はものすごくいじられる。重要な事なので、もう一度、ものすごくいじられる。

彼らは俺の性別を知っている。

俺がスカート履いてるし(制服だ)、パッドで貧乳だしで、面白いんだろう…。俺には苦行だ。

好きでこんな格好なわけじゃない。

国立の騎士養成学校がほぼ女子高だからやむを得ずだ。

私立でも高等学校はほぼ女子高だろうなぁ。

自分たちだって昔は俺と同じ格好をしていただろうに、俺はものすごくいじられる。笑われる。

「俺は好きでこの格好しているわけじゃないです。今回の討伐の作戦は?」

「まてよ~お前、その格好で真顔でも説得力というか…面白いだけだぞ」

この人、引き笑いが煩い。

作戦はなんだろう?

「とにかく討てばいいんですね?ここに来て俺はストレスたまりましたし、すごいやる気です」



俺をいじりたおしてた人達も真面目に仕事してれば優秀な人達なんだよなぁ。

昨年、じゃないか俺が学園に入学する前に世話になった時は、憧れ対象になりそうなくらい強かったんだよなぁ。

そんなことを考えながら俺は次々と魔物を討伐していた。

騎士の先輩たち…なんで?あんなに俺の事いじりたおしてたのに、俺の3倍くらい討伐してる。やっぱスゴイよなぁ。これが正騎士ってやつなのかなぁ?同一人物とは思えない大活躍。


4半時で討伐終了。

「なぁ、スカートって討伐の時動きにくいんじゃない?」

今更??

「返り血が着いた制服で明日登校するの?」

それも今更なんですけど。

「そういう疑問は俺の格好笑ってないで、討伐開始前に言ってくださいよ~。あ~、明日は私服で学校行かなきゃダメかなぁ?」

「ジェニファー様お任せください!」

はぁ、びっくりした。俺付きの侍女か。いきなりやぶの中から生えてくるんだもん。

「侯爵家としましては、制服は10セット購入済ですので、存分に汚していただいて結構です。汚れたとしても、侯爵家のメイドにかけて汚れを落とす所存でございます」

あ、そうなの?

「だ、そうだ。全く心配なく、明日も制服で登校だ」

笑える~と思い出し笑いが伝染し始めた。腹筋をつる不届きものまで現れた。

討伐の時は頼りになるのに…。

「俺はこのネタでゴハン3杯はいける!」

と東方の国でよく聞く話まで飛び出した。俺…別にネタじゃないんだけど……。



翌日、俺は学校に行った。

「はぁ、素敵よねぇ。騎士達に混ざっての活躍!犯罪なのはわかってるんだけど、でもでも盗撮したかった~」

討伐するところに民間人は邪魔です。犯罪を犯そうとする民間人などもってのほか!

俺は昨日の今日でちょっと疲れてるなぁ。体力つけなきゃいけないなぁ。これでも毎朝10キロは走ってるけど、15キロに増やそうか?うーん、男性的な筋肉をつけないようにって指導もあるからなぁ(侍女から)。毎日の腹筋の回数を増やすとかか?制服から出る部分に筋肉がつくような行為は控えるように指導されてるんだよなぁ。毎朝のランニングも妥協案だし。


俺はついにやってしまった。

今まではなんとか我慢したたのに…。

授業中に居眠り…。担当教官に呼び出しをくらった。

「昨日の疲れがたまってるのはわかるんだけど、学生の本分は学業だから授業中に睡眠はちょっと…」


一応、学校中昨日の討伐で俺が疲れていると認知しているようで良かった。

本当はいつかこの授業で寝るだろうと思ってたんだけど、黙っておこう。



俺はついに卒業式にありついた。

3年間よく我慢して制服着てたと思う。

トイレ?完全個室。男子と違って、個室に入った人間を覗くやつもいない。そもそも、個室の壁は天井に密着している。

卒業式は私服なので、俺はそこでカミングアウト。というか男なんだけど。


男用の騎士服を纏い俺は卒業式に臨む。

「キャー!ジェニファー様が騎士様のコスプレよ!」

違う。俺はマジもんで男なんだ。わかってくれよ。

あ、卒業証書授与の名前呼ばれるときにわかるか…。多分。


「ジェニファー=ルイス侯爵令息!」

「はい!」

これでわかっただろう?俺は正真正銘の男なんだよ。しかも侯爵家の嫡男。

俺は卒業証書を受け取り、席に戻った。


「え?ジェニファー先輩って1年の時からスカート履いてたの?女装趣味?超キモイ」

そこまで?俺の評価が180度変わったんだけど?

「なんか騙された感じ」

「一人でハーレム状態だったんじゃない?」

「マジキモイんだけど?」


騎士の先輩達も同じような感じで生きてきたんだろうか?

微妙だな。今度聞いてみよう。まぁ、卒業したらこの学校の生徒とは関わらずに生活するだろうし、まぁいいや。



これから俺のごく普通の生活が始まる。よかったよかった。




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