第三章・玲香の恋愛

玲香の年齢が20~のとき

第42話・玲香の成人式

「綺麗よ、玲香!」

「ありがとうね。」

 今日は成人式。綺麗なドレスに身を包んで祝典に行くのは、17年前にいた世界なら絶対にありえなかった。普段はシンプルで動きやすいワンピースで、謁見があったときもどこかで買ったローブだったから。いつモンスターが攻めてきても大丈夫なように準備していたし、私は貴族令嬢ではないのだからといつも諦めていたというか言い聞かせていた。だから必要はないだろうと。

 正直にいうと、貴族令嬢がいつも着ている華やかなドレスにはいつも憧れていた。それと同時に”動きづらいだろうな”とも思ったけど。

 今着ているドレスは記憶の中にある一番綺麗なドレスよりも明らかに綺麗だ。

 このロングドレスは私のイメージカラーとも呼べる薄い青紫色で、生地がキラキラ輝いている。私が思い浮かべた一番綺麗なドレスはもうちょっとスカートの記事が多かったが、このシンプルながらも輝いているドレスはもっと綺麗だと感じた。

「やっぱり着る人が綺麗だとドレスも綺麗に見えるわね。」

「いやいや、全然全然。」

「・・・・日本人になったわね。」

「はい?」

「話していると、どこか外国人のような違和感があったのよ。でも、今の言葉にはそんな違和感なんて全然なかったから。」

 優しい声で話される内容は、もしかしたら異世界で活躍していたことを見抜いていたのだろうか、と感じさせる。

「魔法云々も気づいてたの?」

「いや、全然気づいてなかったの。まさか、身近な人が転生してたなんて夢にも思わないでしょ?」

「・・・・まあ、Z-7よりはX-4のほうが転生者は多いけど、それでも私とお姉ちゃん以外に転生したって話、聞いたことないもの。」

 ちなみにZ-7はこの世界の元になった世界って言えばいいのかな?専門用語を使うとこの世界は”クローン”された世界っていうんだけど、伝わらないと思うから説明するね。

 専門用語のクローンっていうのは、同じ運命をたどる世界を作るっていうのかな?とにかく、この世界のX-4とZ-7は似たような世界ってことらしい。なぜ”らしい”になっているかというと、調査しようにも行けないのだ。世界に入ろうとすると分厚くて破れない結界にはじかれ、中にいる人は出られず外にいる人は入れない。さらにはZ-7には神様がおらず、中の人たちの生命がどうやって循環しているかも不明・・・・どうしてここまで正体不明な世界を作れるかがわからないぐらいだ。

「あ、もうすぐ祝典よ。がんばってね!」

「はい!」

 幸せな日々をすごして7年。私ももう20歳になった。かなりいい短大も卒業できそうだし、親のコネではあるが就職も決まったし、これで少しは玲仁が私の方を向いてくれるといいなと思った。

 玲仁が”子供だから”という理由なら、これで大丈夫なはずだ。身長も148.4cmから伸びてないから見る人が見たら”合法ロリ”かもしれないが、胸とお尻の発育もかなりいいし、これで玲仁が少しでも振り向いてくれたらな、とは思うよ。

 片思いの期間も玲仁の今世だけでも17年、玲仁の前世を含めれば38年にもなる。そんな長さの片思いが成就するのはロマン・・・・さすがに傍から見たら気持ち悪いか。

 まあ、とにかく今は成人式に集中するか。


 成人式のあとは本来は同窓会に行くことが多いらしいが、うちの学校では毎年恒例で次の土日にすることになっている。理由は”成人式は他にも用事が立て込むから”らしい。この地域では当たり前のように成人式は20歳だし、それも一つの形かもしれない。まあ、成人年齢が18歳なのに成人式を20歳にやるのは、未だに納得いってないけど。

 ということで、同窓会の日の夜ご飯の時間はあくので、今日は私の教育関係者で成人祝いの食事会だ。短大に通ってるときは一人暮らししてたから実家(?)のごはんを食べるのは久しぶりなのだが、これがすごくおいしい。涙腺刺激したいのかってぐらいおいしい。約35年ぶりに泣きたくなったし実際に泣いた。ちなみにこれを除くと最後に泣いたのはローレンス様が死んだときだ。別の意味で泣きたくなってきた。

「ということで、わたくし久保山玲香の成人を祝って、いただきます!」

 ちなみにその人の予定に支障がないなら、好きな人を招待していいと言われたので、お姉ちゃんと玲仁を招待させてもらった。この後適当な理由つけて一人暮らしの部屋に連れ込んで告白しようかなって。

 ちなみにお酒は満場一致で”飲まないほうがいい”だそうだ。お父様が下戸だから飲まないほうがいいって言ってた。お父様が母方の叔父だから、実母も下戸だったのだろうか。今さらあの女に未練なんてないし決別したけど。なんならこの手でとどめをさしたぐらいだし。

 そういえば、お父様が母似らしくて、あの女も母似で、私もあの女似だから必然的にお父様と私が似てるのか。家永家の遺伝子、侮れない。なんか家永家の顔の遺伝子って美女なんだよね。美形じゃなくて”美女”なんだよ。それは男性でも例外ではないんだよ。つまり、お父様は結構女顔なんだよ。お父様は実は結構苦労人だと私は思ってる。

 今はワイワイ言いながらごはんを食べたりしている。

「玲仁君。」

「玲香ちゃん、おめでとう。どうかした?」

「今日このあと予定開いてる?」

「うん、開いてるよ。」

「このあとちょっと話をしない?」

「わかった。」

 これで玉砕したらしたでまた関係を深めていこうと思っている。地獄のような苦痛になるだろうけど。

 私は夕ご飯を黙々と食べ進めていった。


 *続く*


 あとがき

 遅くなってしまい申し訳ございません。

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