第38話・大賢者の究極魔法(?)

「ねえ、次の討伐依頼はまだなの?」

 出生を知ったり、ローレンス様の持ち物を玲仁君に見せたりしてから、一ヵ月が経った。

 あれから討伐依頼を徐々にこなしていき、最初はモンスターにビビっていた芽衣子ちゃんも徐々に攻撃したりレベルが上がったりして、今ではLv30以上になって敵に不意打ち先制攻撃していたり、こうやって討伐依頼をねだっていたりする。

 玲仁君もレベルがカンストの133になった。前世では132の後半っていうすごく惜しい状態で死んじゃったから、念願だったんじゃないかな。

「行きたい場所があるわ。」

「え!?」

 ちなみに会話を見た限り芽衣子ちゃんと私しかいないように見えるけど、お姉ちゃんも玲仁君もいます。バッチリ全員集合してます。

「明日出発するから、各自準備してね。あと、玲仁君はブラッドソードを持っていくように。」

 ちなみにリーダーっぽい口調とか思ったかもしれないが、実際にリーダー認定されている。まあ、この世界ではしばらくお姉ちゃんと二人っきりだったし、最初に仲間にした前衛は10代前半のお坊ちゃまだったわけだし、お姉ちゃんは統率向いてないしで、私しかいなかったからね。

「それじゃあ、各自訓練してね!」

 私と玲仁君のレベルが133になったということで、あの究極魔法が使えるんだよね。明日はそれを解放しようと思う。うまくいきますように。


 次の日・・・・

「じゃあ、いってきます!」

 この作戦さえ成功すればあとは一方的に蹂躙するだけだ。そう、成功すれば。

「マクリス!」

 ちなみにマクリスは長距離移動魔法ね。

「・・・・ここ、どこなの?」

 来たのは不死の空間がある洞窟だ。あの女は死にそうになったらマクリスを使ってここに飛ぶ。そして、復活してまた私たちに付きまとう。

 ただ、今回はここに飛ぶ必要があったことと、復活したあと”私たちがどの世界に行ったのかがわからなかった”という条件が重なって、この世界にとどまっていたと思うけど。

 身長が伸びてもなお私の背丈より高い翡翠色のミスリルを見上げる。前に解析したときから何も変わっていないようだ。まあ、一年もたってないから誰かが変えない限り変わらないと思うけど。

 これらの魔法の解除(解呪?)にはブラッドソードを使うことにする。玲仁君には頑張ってもらわないとね。玲仁君は何も悪くないけど。

「前世の姿になって?」

「あ、はい。」

 ブラウンの髪にサファイアブルーの瞳を見てもっと間近で見たい衝動に駆られるが、どうにか抑える。ちなみに芽衣子ちゃんもお姉ちゃんも何回も見てる。

「ブラッドソードを使いたいの。」

「わかった。」

 玲仁君がブラッドソードを抜いた。

「ブラッドソードに語りかけてほしいの。呪いを、解除してほしいってね。」

「・・・・わかった。」

 そう言ってる間に私は魔法を発動する。

「スコダバ」

 スコダバとは、上級闇魔法だ。解除には反対の属性をぶつけるのが一番手っ取り早い。反対属性がぶつかると両方が相殺されるので、すごく弱くなった魔法ならあとは魔法解除で一撃だ。でも、今の状態だったら魔法解除では無理だからね。

 ブラッドソードに宿っている魂・・・・”ブラッドソウル”って言われることが多いんだけど、ブラッドソウルは闇属性5なので、非常に強い闇属性を宿している。なので、相殺にはうってつけだ。

 この作戦を使う最大の弱点は、”物理を使う人と魔法を使う人のレベルが同じである必要があること”なんだよね。だから、玲仁君をLv133まで鍛え上げた。利用してしまって申し訳ない。

 そうこう考えているうちに魔法がだいぶ弱まってきた。周りの魔法もうまく相殺されているようだ。ただ、もうちょっと進めないと。

 ・・・・あと、もうちょっとだ。どうだ?

「お?」

 あれほどばらまいていた光魔法が完全になくなった。あとは、その他属性のノシエゴだけ。これなら魔法解除で簡単にできる!

 魔法解除とは、その名の通り魔法を解除するアビリティだ。主にミスリルなど媒体に入っている魔法を解除するのに使う。

 アビリティを発動したり魔法を発動したりするときに手を組んで祈るポーズをするのは私の”詠唱のクセ”だ。

「でき、た、の?」

「うん、そうみたいね。」

「あとは蹂躙するだけってこと?」

「そうね。」

 お姉ちゃん、なんでそんなにうろたえるのかな。

「一旦帰りましょう。で、作戦会議よ!」

「「「はい!」」」

 みんなの声がそろって笑ったところで帰るところにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る