第34話・大賢者の友達は初討伐に出る
「芽衣子ちゃん、どれぐらい強くなったの?」
「そろそろ仲間を連れて実践に出ろ、だって。」
声を低めて言ってるのは男の人の声真似をしたいからなのかな?可愛らしい。
「じゃあ、私と玲仁君と芽衣子ちゃんとお姉ちゃんで討伐依頼に行こうよ。」
「はいはい。私はどうすればいいの?」
お姉ちゃんの質問にリーダーになるであろう私が答える。
「魔法攻撃か待機かな。私は回復補助に回ろうかなって思ってるよ。」
「OK。」
「俺は?」
「普通に物理攻撃してて。」
というか玲仁君はいろんな攻撃方法はあるものの物理攻撃しかできないからね。
「はいはい。」
「芽衣子ちゃんはどうする?最初は見学してることをおすすめするわ。」
「もちろん攻撃するわよ!」
「じゃあ、できたら攻撃してね。私はちょうどよさそうな討伐依頼を探してくるから。」
「OK。依頼探し、がんばってね!」
お姉ちゃんに応援された。まあ、ここにいる人は討伐依頼を探す気はなさそうだし、がんばるか。
そのあと、ちょうどいい討伐依頼があったので討伐依頼を受けて四人で討伐することにした。
討伐依頼当日。
「ここら辺で出てくるの?」
「そのはずよ。」
「やっぱり強いの?」
「まあ、ちょっと強いけど今のパーティーなら全滅するほどではないと思うわ。」
「ふうん。どれぐらい強いの?」
あ、結構しっかりしているのかもしれない。
「ランクDぐらいよ。」
「・・・・それをRPGに例えるとどれぐらいなの?」
「うーん、序盤から中盤のボスぐらい?」
「え、それ大丈夫なの?」
「いや、玲香がいれば全滅しないと思うよ。だって玲香は最強だもん。」
お姉ちゃんがフォローしてくれた。
「最強?」
「まあ、アザーワールドを使わなくても強いぐらいにはなってきたよね。」
「アザーワールドって何?」
「まあ向こうの世界のRPGで例えれば”強くてニューゲーム”みたいなものね。厳密には違うけど。」
「なるほどね。」
「あ、モンスターがお出ましよ!」
出てきたのは赤や黄色の原色系の色をした大きいヘビだった。とはいえ3段階あるうちの中級種なので、そこまで大きくない。これまでであった一番大きい発見例で全長103cm、これもかなり大きいと話題になったぐらいで、平均的な大きさは80cmぐらいだし、このヘビは平均かそれより小さいぐらいだ。
まず玲仁君が剣でヘビを切りつけた。しかも結構効いてそうだね。
「きゃっ!」
芽衣子ちゃんが一発攻撃されていた。Lv1ならHPも低いだろうし、多少過保護でもいいか。
「ファルマ!」
ただし、節約はするけどね!ちなみにファルマは初級回復魔法で、消費するMPも体力も少ないのでHPが少ない相手にかけるときにも有効だ。
玲仁君も攻撃されていたが、カウンター的に反撃して返り討ちにしていた。
「終わったな。」
「じゃあ玲香、帰ろう?」
「いや、まだいるわね。」
「え、討伐依頼には一匹って書いてたわよ?」
「違うわ。討伐依頼者は黒幕を把握しきれていないだけ。」
「え」
依頼をした人が把握しきれてなく隠れていたパターンがないわけではない。でも、そういうパターンと今回は本質が違う気がした。
「黒幕?なんのこt」
「もう一匹来たわよ!」
回復補助をしながら考える。
今回の違和感を見逃してはいけない気がする。今回の違和感とは、ヘビの動きが少し鈍かったことと、訓練されていたかのように威力が高かったことだ。
そして、依頼になかったもう一匹。この条件がそろっていると高確率で誰かが召喚していることになる。群れになっていたなら依頼した人が絶対に把握しているはずだ。ヘビの群れってもうちょっと群がってるし。あんまり頭がよくないから、様子見とか見張りとかはできないんだよね。
となると召喚している人は誰なのか、なぜこんなことをしているのかがわからない。
召喚魔法の中に魔物を召喚する例もあるが、極めて少ない。少なくとも私が知っているのでは一人しかいない。
その人は自称母親と言われた家永美玲。いや、この名前も偽名かもしれない。最有力候補だが、この女がやったことにするとなぜこんなことをしているのかがわからなくなってくる。
なぜならあの女は私たちのパーティーがこの程度で崩れるとは思っていないだろうからだ。あの女は無謀なことはしないのは長年の付き合いでわかってるし、こんな無意味なこと、むしろレベル上げという観点で私たちのプラスになりそうなことをする理由がわからない。
それにあの女がやりたいことは殺害ではなく誘拐であることはわかりきっている。誘拐とかは相手が弱いほうがやりやすいから、目的と矛盾してくる。
とりあえず知らない顔でもいいからと思って索敵魔法を起動する。
あの女が私たちと遭遇したいなら、素直に鉢合わせすればいいだけだ。こんな回りくどいことをする理由はない。
索敵の結果が出た。相手はちょっと離れたところにある一枚岩に隠れているようだ。濡れ羽色の髪に濡れ羽色の瞳をした30代後半ぐらいの女性。
「・・・・やっぱりそうなのか?」
その姿は完全にあの女だった。なぜこんなことをやったのか、理由はわからなかったけど。
そうなると、レベル上げとか言わずにこのヘビを倒して問い詰めたほうがいいかもしれない。そう思って詠唱を始めた。
「ザブロンティナ」
今発動させたのは中級全体雷魔法だ。雷を二発同時発動させた。一か所は目の前のヘビに、もう一か所はあの女の居場所に。
しばらくして転移魔法が発動した。
「あはは、バレちゃった?」
「なんでこんなことをしたの?」
「冷たい声で言わないでよ。」
「今まで冷たい声で切り捨ててきた人が何言ってるの?」
「過去のことは気にしないで、ね?」
「気にしないで、じゃないのよ!」
「そんなこと言わずに、私についてきて?」
後方にいる私にだけ話しかけてきて、近づいてくるあの女。あの女は腕をつかんで申した。
「私たち、親子でしょ?あいつに何を吹き込まれたかは知らないけど、ついてきてよ。」
全身に鳥肌が立った。あの女は何かにつけて親子と言って、自分の言い分を通そうとする。少なくとも私の記憶の中では親子らしいことなど一度もされたことはないのに。
「親子、なのよね?」
「玲香!?」
「うん、そうよ。だからついてk」
「じゃあ、これも大丈夫よね?」
そういって光属性のMPを直接あの女の体内に放り込む。
MPにも正確には属性というものがある。それは生物や魔物によって決まる魔法におけるDNAみたいなものだ。実際にこの世界のDNA鑑定はMPの属性でするし。
基本的に人間のMPには(人にもよるが)”弱い光属性”を宿している。ただ、私のMPは”強い光属性”を宿している。属性が違ったり強さが違うMPを直接体内に入れると、血液型が違う人に輸血をするぐらい危険だし普通に死ぬことになる。ある程度なら耐えられるけど。強い光属性の私のMPならなおさらだ。
本当に親子なら似ている私と同様に母親も”強い光属性”を持っているはずだ。なので、耐えれるはずなのだ。
・・・・実際は母親は”強くも弱くもない光属性”であることを確信してやってるからほとんど人殺しなんだけど。
しばらくは激痛を伴うらしくもがいていたが、抑え込んでいたら気絶していた。
「あら、口ほどにもない。」
ちなみにこれも私が母親だと信じてない理由の一つでもある。私とお姉ちゃんはものすごい似てるし姉妹なのは間違いないし、お姉ちゃんも”強い光属性”なのに、あの女は”強くも弱くもない光属性”というのはおかしい。現代日本だったら人外レベルの”強い光属性”を持ってる男性も早々いないし、父方の叔母は”弱い光属性”だからね。
それより、私の体がMP切れを示している。立っていられない。そう思って、その場に倒れた。
続く
あとがき
待たせてしまって申し訳ございません。次をなるべく早く書くようにします。
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