玲香の年齢が13~14のとき
第31話・大賢者の再会
「ねえ、うちに来ない?」
芽衣子ちゃんがその誘いをしてきた。正直、玲仁君と離れたことをまだ引きずっていたのを紛らわしたかったので、願ったりかなったりだった。
「いいね!」
「今日の午後3時半に○○駅でいい?」
「うん、いいよ!」
「じゃあ、今日の午後3時半にね!」
芽衣子ちゃんは休み時間の人込みに入っていった。
玲仁君と離れて10年弱。玲仁君はもう19~20歳になったはずだ。前世の顔と今世幼少期の顔を考えればイケメンになってるだろうし、文武両道で気配りができる理想のような男性に育っていても全くおかしくない。そんな玲仁君に再会したとして、私の相手をしてくれるはずがないのは頭ではわかっている。わかっているが諦められない。
私は好きになったらこんなに人に”依存”するのかと思うこともあるけど、こうなるともう私にも止められないんだよ・・・・。
休み時間だけど、図書館の面白い本は読みつくしてしまったし、やりたいことはできないので、自分の椅子に座って机の上で暗記した魔法理論を使って、帰ってからやる魔法の研究のことを考えることにする。
とはいえ、一番使いたかった酔い止め魔法と酔い止め耐性は、6年前に完成したんだけどね。今は無敵のバリアを張れないか考えている。”反射”か”吸収”あたりを使えればいいと思っている。
ちなみに、祐奈お母様と佑太お父様の間に実子ができた。久保山静香っていう女の子で、私と10歳差の今3歳だ。正直可愛らしくてしょうがない。溺愛と言われてもおかしくないぐらいにかわいがっている。
あと、あれからお姉ちゃんとは一回も会えていない。せめて住所だけでも聞いておけばよかったと後悔している。
異世界に行って気分転換してもよかったが、玲仁君のいる世界を離れたくないって考えるとなかなか踏み出せなかった。
今、私の机の周りには男女問わず人が集まってきて彼ら彼女らが話しかけてきている。でも、どんな言葉をかけられても心なんか動かない。私の心は(早く芽衣子ちゃんと遊べないかな)という感情で埋め尽くされている。
ところで、この学校には”学力面の特待生”と”態度面の特待生”のシステムがある。
学力面の特待生は学年成績一位の人が選ばれる称号で、一学年に一人、12学年あるので全学年で12人いることになる。特待生に選ばれると学費が半分免除される。まあ、学費免除には興味ないけど。
態度面の特待生は学生の態度がいい人が選ばれる称号で、全学年で12人選ばれる。一学年に一人ではなく全学年で12人なので、選ばれていない学年もある。先生も学年で忖度はしない。こちらも選ばれると学費が半分免除される。学力面の特待生とも重複する。
で、私の場合は学力面と態度面の特待生を小学校一年生のころからずっとキープしているので、スクールカーストは相当高いと思うけど、正直そんなのには興味がない。そんなのより魔法の研究の方が大事だ。お金を稼ぐのに関係がある称号なわけでもないし。
あと、自称母親のことも気になる。いつもなら”私が有名になったこと”と、”転移してから5年以上過ぎていること”の二つの条件がそろったときに迎えに来て、「もう十分だよね?」と言って異世界に転移する魔法をかけて異世界に転移する、というのがいつもの流れだった。
でも、この世界では(社長令嬢という力を借りて)有名ではあるし、もう転移してから10年以上は経っているというのに、一向に迎えに来る気配がない。あんな宝石を持っているなら自力でも転移できるだろうし、取り残されてるってことはないはず。なのに、どうして迎えが来ないのか。来てほしいわけではないが、奇妙ではある。
どうしてなのかと考えていたら、チャイムが鳴って休み時間の終わりを告げる。よーし、内容が簡単すぎてつまらない算数をがんばるぞ!
「お邪魔します。」
「お母さん、この子が話してたお友達だよ!」
「初めまして、久保山玲香と申します。いつもお世話になっております。」
学校で授業する時間も終わって、今は芽衣子ちゃんの家に遊びに来ている。
「どうぞ、中に入って。」
お母さんも優しそうだな。そういう人に限って怒ると怖いっていうけどね。
私は芽衣子ちゃんの家のリビングに通された。
「芽衣子、夜ごはんまでには帰らせてよ?」
「はいはい。玲香ちゃん、スパブラやろう!今日こそは玲香ちゃんに勝つんだからね!」
ちなみにスパブラは”大格闘スーパーブラザーズ”の略だ。最近ようやくこの世界の娯楽と嗜好品まみれの世界観にも慣れてきた。よし、返り討ちにするぞ!
「また負けた~!玲香ちゃん強いって!なんで私よりゲーム歴短いのにそんなに強いの!?」
「まあ、才能ではなくて?」
実際には回避方法を覚えただけなんだけどね。別世界で私は”回避の鬼”と言われるぐらい物理も魔法もかわすし。
「あ、そういえば芽衣子ちゃんのお兄ちゃんは?」
「剣術の訓練中だよ。お兄ちゃんなんであの厳しさに耐えられるのかな?」
芽衣子ちゃんの家には名剣があるらしく、名剣の扱いを覚えるために剣術を学ぶらしい。剣術を学ぶ対象には男女生まれは関係ないらしいが、芽衣子ちゃんのお父さんの指導が相当厳しいらしく、剣術始めたの報告から3日ぐらいで剣術やめたという報告を聞いた記憶がある。その報告を聞いたときはさすがに三日坊主だと思ったが。
芽衣子ちゃんと戦いの感想を話していたら、リビングの扉が開いた。
「芽衣子さん、終わりましたよ。友達が来てましたか?聞いてませ・・・・え?」
リビングの扉を開いた人物を見て、私と相手は凍り付く。
その人は漆黒の髪に、黒とび色の瞳をしたイケメンの人・・・・
「玲仁、君?」
「ええと、これって夢じゃないよね?」
「夢じゃない、と思う、けど・・・・。」
嬉しくてあとから涙があふれてくる。玲仁君がなんでここにいるのかわからないけど、とにかく嬉しかった。
「会いたかった・・・・」
「俺も会いたかったよ。」
ずっと会いたかった人が目の前にいるだけで、幸せを感じる。
「玲仁君、また一緒に遊ぼう?」
「うん!」
このまま仲良くなっていつかは恋人になれるといいな。私はそう思った。
しばらく二人で泣いたあと落ち着いて、芽衣子ちゃんに話しかけられた。
「ええと、玲香ちゃんと玲仁君って恋仲だったの?」
その言葉に二人とも顔を真っ赤にした。
「ち、違うって!」
「そうですよ、幼馴染に近いと思います!」
「ふーん。いつからの付き合いなの?」
「玲香が3歳のときに日本語の勉強の名目で一緒に住んでたんだよ、な?」
「そうね。当時は夢中で遊んだわよ。」
「じゃあなんで玲香ちゃんも玲仁君も後生ずっと覚えてて、そんなに親しかったの?」
「お、お互い仲よかったから、だよね?」
「そ、そうだよな。」
「そうなの?私はてっきり前世で恋人だったのかと思ったわ。」
その表現は四分の一ぐらいなら間違っていない。確かに玲仁君の前世で知り合いだったし、私も初対面では大人の女性を装ってた。
でも、私の中では全部今世の話だし、そもそもローレンス様と付き合ってない。それに付き合ってたらそれこそ鶴の恩返しだし。
「ま、いいや。二人が仲いいならさ。玲仁君、玲香ちゃんはお前にはやらないよ?」
「なんでそうなるし。」
「いや、だって私の家は玲仁君を引き取ってるわけだし、義妹として言っておこうかな、って。」
「俺にとっての親は祐奈社長と佑太副社長かな。あと、義妹として言うんだったら逆だと思うぞ。」
「え、そんなひどいこと言わないでよ。」
「俺にとってだからな。」
「・・・・」
「玲香、またLv上げしような!」
ちょっと、日本語で言わないで?芽衣子ちゃんにばれるでしょ!
「レベル?玲仁、レベルって何!?」
「異世界で敵を倒して強くなるやつのことだけど、何か?」
「異世界!?異世界があるの!?」
「玲仁、ヲタクにそういうことを教えるとよくないかと。」
玲仁君をたしなめたけど、今回は逆効果だったようだ。
「玲香ちゃん、それ何!?もしかして異世界の言語!?」
あ、ダメだ。暴走状態になってしまった。仕方ないので説明することにした。ただし秘密にできるならという条件を付けることになったけど。
「私もLv上げに連れてってよ!」
心底興奮したような声で言われてもな・・・・。
「・・・・わかった。」
「しょうがないわね。」
こうなった芽衣子ちゃんは止まらないからな・・・・。
まあいいや。友人と想い人とレベリングもいいかもね!
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