第27話・大賢者のレベル上げ part1

「ねえ、提案があるんだけど。」

「玲香ちゃん、何?」

「あの世界でレベルを上げない?」

「それはやろう!ちょうど鬱憤もたまってたところだったからね!」

「でしょ?だからさ、今から異世界に行かない?」

「よし、行こうか!」

 なぜこんな誘いをしたかというと、それはあのミスリルの媒体に関わる。

 と、いうのもミスリル(というか魔法がかかった媒体)を破壊するときの条件を思い出したんだよね。それが”同じレベルのものが二人そろうこと”だそうだ。さらに”片方は物理、片方は魔法”ではないといけないらしい。

 で、私のレベルっていくつだと思う?カンストの133なんだよ。なんで私はカンストにこだわっちゃったんだろうか。

 だから、多少時間をかけてでもカンストにもっていかないと、ミスリルの媒体を破壊できないと思うんだよね。だからこういう誘い方をしたわけだけど。

 幸い二人とも肉体面は成長しないんだし、そうなるといくらでも時間をかけていいわけだからさ。

 魔法がかかった媒体って他人が破壊することはできなくはないんだけど、光天使さんが控えてる以上穏便に解決するしかないんだよね。

 そう思いながら次元の狭間に入ったのだった。


 まず最初に入ったのは宿屋だ。ここで姿を変えることにする。目に光がしみ込んだかと思えば今頃私の瞳の色は翡翠色になっているだろう。

「昔と変わらないね、ライラ。」

「ありがとうね、ローレンス様。」

「あ、様はいらないよ。」

「玲仁君の見た目はどんなのがいい?年齢は変えられないけど、どうする?」

「金髪に紫色の瞳がいいな。」

「わかったわ。」

 姿替えの魔法で色を変える。これだけで結構ばれないものだ。それにしてもその配色はあこがれだったのか?わからないけど、何か理由がある気がする。

「はい、できたよ。」

 そう宣言して現代日本にあった上質な鏡を玲仁君の方に見せる。

「よし、行こうよ!」

「うん!」


 ついたのは明らかに物々しい石造りのお屋敷、ケンドリック家の修行所だ。

 この世界にいたときの伝手で修行させてもらえないかと聞いたら二つ返事でOKが出たので修行させてもらうことにした。

「久しぶりだな、ライラ。」

「お久しぶりです、当主様。」

 厳格そうなこの声はこの名家の当主でありローレンス様の父親だ。白い肌には古傷が見え、若いころに苦労なさっていることがうかがえる。それでも艶のあるブラウンの髪と綺麗なサファイアブルーの瞳はローレンス様が受け継いだとわかる色彩をしていた。

「その子が修行させたい子か?」

「はい、ルイスと申します。」

「だいぶ素質がありそうだな。その素質の量と素質の種類はまるで死んでしまった俺の息子のローレンスみたいだ。」

 正直この発言は正体がバレたかと思って冷や汗を流したよ。

「まあ、気にすんな。適性検査受けてしっかりレベルをあげろ。」

「・・・・はい。」

「全く、もうローレンスが死んで18年も過ぎてるのにあきらめきれないよ。あいつのことだからどこかで元気に生きてる気がしてな・・・・。でも、ライラが目の前で死んだっていうから信じてるけどよぉ・・・・」

 当主様がおいおい泣き出したけど・・・・当主様ってこんなによく泣く人だったっけ?そんなに息子の死が悲しかったの?

「そのローレンス様に関して、当主様はどう思っていたんですか?」

 玲仁君が質問してほしい雰囲気を感じ取って質問した。

「俺が16歳のときにできた初めての息子だったわけだからさ、もう本当にかわいかったし、一生懸命教育したよ。なのにさ、13歳になったときに家出なんかされちゃって。そのまま二度と会ってないからさ、まだどこかで生きてないかって思うよ。」

 残念ながらローレンス様は本当に死んでます。で、ローレンス様の生まれ変わりが玲仁君です。

「後継ぎはいるけどさ、俺はなんか寂しいよ。」

「・・・・語りはいいので早く適性検査させてあげてください。」

 このままだと平行線なのは確定していたので話を終わらせて適性検査をすることにした。

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